免疫機構をおさえる薬である「免疫抑制剤」について勉強します。
不思議なシステム
人の体が、生命体として生存していくために、自己のものとそうでないもの(非自己)を識別し、非自己から自己を守る大切なシステムを、「免疫機構」といいます。
そして、自分の体に他人の体の組織や臓器を移植した時や、人間のものでない細胞組織やウイルスなどが侵入して来たときに、免疫機構によってその定着を妨げたり排除しようとする現象が、「拒絶反応」です。
臓器移植では、自分の体の中(自己)に他人の臓器(非自己)を定着させるのですから、当然この「免疫機構」が働き、「拒絶反応」が起こるわけです。
このシステムは、おおげさにいえば、人間が人間であるための根元に関わる仕組みとも言えるもので、自分で自分の体を守るという人体の不思議な機能です。
ところが、臓器移植ではこの働きが、大きな障害となります。
この障害を防ぐ ―― つまり、他人の心臓(臓器)を移植した時に、レシピエントの体に対し、「この心臓は本当はあなたの体のものなんですよ」と、ウソをつかなくてはなりません。そのウソをつくために必要なのが、「免疫抑制剤」という薬です。
免疫抑制剤
さて、その「免疫抑制剤」ですが、一九六〇年代から使用されるようになり、初期のころは腎臓移植で多く用いられていました。現在最も多く使われているのが、シクロスポリンという薬です。この薬は、一九七二年にスイスの製薬会社で開発が始められ、実際に使われはじめたのは、一九七八年からです。さらにシクロスポリンが薬剤として世界各地で使われるようになったのは、一九八三年ころからですから、今からわずか十六年前ということになります。
実際には、臓器移植を受けた人は、シクロスポリンをはじめ数種類の「免疫抑制剤」を服用します。すると免疫機構がおさえられますから、当然ウイルス等の病気には抵抗力が弱くなり、肺炎や高血圧、腎臓障害などいろいろな感染症にかかりやすくなります。
感染症というのは、微生物の感染によっておきる病気です。簡単にいうと伝染病です。今はやっているインフルエンザや昨今話題になった病原性大腸菌O-157も感染症です。
つまり、免疫抑制剤を服用すれば、こうした伝染する病気にとてもかかりやすくなり、この感染症が原因で死にいたる確率が高くなるのです。
腎臓移植を受けた人は、一般の人の三倍近い確率でガンになっているという調査結果があり、さらにシクロスポリンを使った患者さんは、そうでない人に比べて半分以下の期間で発ガンしていたこともわかっています(平成十年四月二十一日・朝日新聞)。
また薬の費用も高額です。肝移植研究会の試算によると、肝臓移植後一年間の「免疫抑制剤」の費用は、約二五〇万円にもなります。
ちなみに、肝臓移植の場合、手術と術後一年間の総費用は、八〇〇万円以上で、心臓移植だと、約一、二〇〇万円にもなります。一般の人にとっては、かなりの高額医療費といえるでしょう。
「免疫抑制剤」の開発・製造が臓器移植の推進につながっていることは明らかで、臓器移植が進めば進むほど、製薬会社の利益があがるのは当然のことです。ですから、臓器移植推進派を後押ししている団体に、製薬会社が多いこともうなずけます。
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