臓器移植に代わる治療として期待の高い、「臓器再生」に関して勉強します。
再生医科学
最初にもう一度、教主さまの「みろく大祭ごあいさつ」(一九九九年五月五日)の一部分を掲載します。
『移植推進派の医師はすぐ、貴方は、貴方の子供は臓器移植しか治療法はないと申すようです。しかし、最近では脳低体温療法、また移植しか治療法がないとされた拡張型心筋症という心臓病で、心室を縫いちぢめて治すバチスタ療法等、臓器移植に関係ない療法が実施されるようになっていますし、現在、実験段階ですが患者さんの患部の細胞の一部をとって、健康な臓器を再生させる療法なども出来ているそうです』
この中で、臓器移植以外の治療法として、「脳低体温療法」「バチスタ療法」「臓器再生療法」のことをお示しになっていますが、本誌では、六・七月号で、「バチスタ療法」と「脳低体温療法」について勉強しました。
そこで今月は、「臓器再生療法」を取り上げてみます。
この療法はまだ実用化されてはいませんが、「再生医科学」という分野で研究がすすんでいます。
人の体には、自然にもとどおりに戻る力があります。
たとえば、切り傷が元のように治ったり、骨折がつながったりするのがその例です。でも、トカゲの切れたしっぽが自然に生えてくるように、すべての組織や臓器が自然に再生されるわけではありません。
そこで、新しく開発されたノウハウをつかって、人の組織や臓器が再生しやすい条件を作ることによって、それらの再生を助けようとするのが、「再生医科学」の考え方です。
「再生医科学」では、これまで臓器移植や人工臓器だけではできなかった新しい治療法の開発が行われています。
臓器が再生する
この分野の研究で代表的な機関の一つに、京都大学の再生医科学研究所があります。
病気になった臓器を取り除くと、生きる上でいろいろ不都合が起こるのは当然です。そこで、代わりにプラスチック製の組織を入れることがありますが、人間にとって、プラスチックは異物なので、免疫機能(拒絶反応)が働いて、患部がイボのようになったり、位置がずれたりしてしまいます。
そこで、同研究所では水に溶けるプラスチックや天然コラーゲン(にかわ状のたんぱく質)などさまざまな材料でためし、一九九三年に、犬の食道再生に成功しました。
シリコン製のチューブをスポンジ状のコラーゲンで覆った人工食道を作り、切り取った食道の代わりに埋め込み、三週間目でシリコンのチューブだけを取り除くと、四週目で食道が出来上がったのです。
成功のカギは、いろいろな細胞に成長する能力を持つ「幹細胞」を利用したことでした(あまり詳しくなると、専門用語がたくさん飛び出し、ちょっと難しそうなので、このくらいにします)。
また、大阪大学医学部バイオメディカル教育センターでは、一九九七年に、人の神経幹細胞を試験管の中で培養し、神経細胞に成長させることに成功しています。
さらに、東京大学の大学院総合文化研究科では、カエルを使った実験で、未分化(まだ分化していない)の細胞から腎臓をつくることに成功しています。正常な機能を持つ臓器の再生に成功したのは世界でも初めてとのこと。
将来は、人間などの高等動物にも応用できる可能性もあり、体外で再生させた臓器や組織を移植して病気を治す新しい医療に道を開く大きな成果だと言われています。
いずれにしても、こうした研究がすすみ、臓器移植以外での正しい治療がはやく実用化されることが望まれます。
※幹細胞
生体を構成する細胞の生理的な増殖・分化などの過程において、自己増殖能と、特定の機能を持つ細胞に分化する能力とをあわせ有する未分化細胞。多種の細胞に分化しうる多能性幹細胞と分化の方向の一定した単能性幹細胞があり、血球・粘膜上皮・表皮などで細胞が枯渇しないのは幹細胞の存在による。
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