霊魂の離脱
人が死にいたる過程はけっして一様ではないが、いかなる死にも共通していることは肉体からの霊魂の完全分離である。
一般に、瀕死の状態にある人の霊魂は、すでにほとんどが肉体から離脱し霊界でさまよっている。そのような状態であっても、霊魂の一部が肉体に留まっているかぎり、肉体の条件が改善するにつれ全霊魂はふたたび元の肉体に立ち帰ることができる。この様子を霊界から見ると、霊魂は細い長い糸状の霊線(大本では“霊の緒”という)で肉体とつながり、肉体の条件が整うとこの霊魂は霊線を伝って素早くまた元の肉体にもどるのである。
なぜこのようなことが可能かというに、人間の体内にある霊魂の量は平素からつねに一定していないことによる。一般でも「気が散る」「気乗りがしない」「気が落ち着かない」などというように、「気」は霊魂の働きで、人の霊魂は平素からつねに体内にすべてが集中しているのでなく、むしろ四方に分散している場合が多い。つまり、霊魂の一部はつねに肉体を自由に出入りしているのである。また霊魂の実体は想念であるため、物質と異なり想念はその延長によって伸縮が自在で、霊魂が肉体から離脱していかに遠くにいても、一瞬の間に肉体に戻ることができるからである。
いま一つの理由は、人体には、わが国では“魄”(一般ではエーテル体・エクトプラズムなどという)と呼ばれる半霊半物質状のものが遍満していることによる。もともと霊魂と肉体は、次元を異にする対極的存在で、両者はそのままでは相互に緊密な機能をおこしにくい。そこで魄とよばれる中間的存在(半霊半物質)のものが両者の強い接着剤的役割を果たし、これが脳や心臓などの各臓器はもとより全身の細胞一つ一つにいたるまで遍満し、霊魂と肉体とを完全に融合させ機能させている。
仮に脳死の状態にある人で、その霊魂のほとんどが離脱している人の場合でも肉体には魄が残っているため、その“半霊的”部分に霊魂の一部がつながり、肉体を維持するにたるきわめて希薄な状態で全身に残留している。植物状態(脳死と違い脳幹は生きている)にある人などはこうした状態で何年も現界で生存するが、その間も霊魂は霊界をさまよい、何かの契機に肉体に立ち帰り、通常の言動を取り戻す場合もあるのである。
しかし、このように半ば離脱状態にある霊魂でも、移植のため心臓など一つしかない臓器を摘出してしまえば、肉体を維持することができず、肉体に残留していた霊魂はその絆を絶ち、細い霊線は切れ、そのすべてが離脱してしまう。このとき人は完全に死を迎える。
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