臓器移植に代わる医療
近年、脳死への進行を防ぐ医療として脳低温療法(脳に流れこむ血液の温度を下げ脳内の膨張を防ぎ脳神経細胞を保護する)、また臓器移植に代わる医療としてバチスタ療法(これは心臓のみを対象とする療法。左心室縮小形成手術―左心室の心筋を三分の一ほど切り取り縫いちぢめ働きを活性化する)、臓器再生療法(本人の未分化体細胞から臓器を再生する)、人工臓器開発などが話題になっている。
なかでも関心のマトである「人工心臓の開発」は、このところ国内外で急速に進んでいる。これまでに、米国では体内埋め込み型永久人工心臓の手術が大きな期待のもとに幾度も実施されたが、さまざまな欠陥が指摘され最長生存期間は六百二十二日にとどまり、永久使用に耐えられる人工心臓は未完成であった。ところが、近年にいたって各国で急速に開発がすすみ、欧州では臨床試験に着手するまでになったものもある。
わが国でも東京大学、国立循環器病センター(大阪府吹田市)、テルモ社(東京都渋谷区)では「完全埋め込み型全人工心臓」の開発がすすめられている。
なかでもテルモ社では耐久期間五年を目標とする埋め込み型補助人工心臓が開発され、二〇〇四年には発売の可能性が強いといわれる。これは患者の心臓機能を補助する金属チタン製のもので、遠心力で血液を押し出し、血流をつくる羽根車を容器のなかで磁気浮上させるため周囲と接触せず、血栓もできにくく耐久性もよい。
このテルモ社のそれは、これまで用いられてきた補助人工心臓と違い、患者の心臓を摘出せず体内に残したまま埋め込むので、心臓機能が休んでいるうちに自然に回復する可能性もあるといわれる。
政府は、平成十二年度予算にはじめて人工心臓開発に十億円を計上した。「臓器移植法」制定(平成九年)後、三年を経てようやく予算化をみたが、政府のこの対応の遅さに今日の脳死・臓器移植のすべてが語られているようにさえ思える。
脳死・臓器移植という“共食い医療”が地上から消失し、人間らしい誇りのもてる医療が一日も早く実施されることを心から祈りたい。
(完)
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