鉢伏山は標高1221m。但馬、因幡、美作、播磨の国々に裾野をひく、大本の霊場の一つ。地質は但馬で唯一の古第三紀地帯。5百万年〜1千万年前の地殻変動で隆起したものといわれる。王仁三郎聖師は、「この近辺は、太古、海底であった」と述べているが、その言葉を証明するように、近くの昆陽川上流では海底流痕が発見されている。また、古くから人類が住みついたことも近年発掘された縄文土器から推定されている。
「但馬にはどえらい尊い神さまが鎮まっているので、早く開いて下されよ」と、出口なお開祖から聞かされていた湯浅仁斎氏は大正初期から調査と宣教を続けていた。1920(大正9)年9月、大笹村の田淵家を訪問。龍神の姿に見える大きな岩を「龍宮の乙姫さまが鎮まっている」と直感し、祭典を執行。その折、その家の老婦人が「天文15年(1546)8月12〜18日、大洪水で集落が流されようとしている時、龍宮の乙姫さまに祈願して助かった」ということが記された古文書を持参。
「かつてはこの岩をご神体としてお祭りをかかさない時代もありましたが、いつの間にか迷信扱いされ、汚されていた。このお祭りでわが家も救われましたし龍宮さまも大喜びでしょう」と語った。
第二次大本弾圧事件で一時途絶えていた祭典も、昭和19年10月に乙姫さまを鎮祭し、再び執行されることとなった。
ちなみに「龍宮の乙姫さま」とは「神典に見えたる豊玉姫の御事なり」また「玉依姫命とも申し上げる」と聖師。この神は「経済をつかさどり、国家を富裕ならしめ、財宝をさずけ、また海陸交通の安全、商業の発達をまもり、個人にては、住む家、食物、衣類をゆたかにあたえたまう大神にして、大富開運の守護神なり」と。さらに「大本神諭」には「龍宮の乙姫殿を見て皆改心をいたされよ。昔から誠に欲な醜しきお心でありたなれど、今度の世の立替えには欲を捨ててしまわねば、神界のご用が勤まらんということが、一番に早くご合点がまいりたから、龍門のお宝を残らず艮の金神にお渡しあそばして、活発なお働きを神界で一生懸命になって、力量も十分あるなり、この方の片腕になって、今度の世の立替えのご用をあそばすから、ほかの守護神も龍宮さまのご改心をみて、一日も早く自己の心のなかを考えて改心をなされよ」と示されている。(左写真は大本事件解決後、龍宮神社に参拝した聖師)
龍宮神社の鎮祭以来地元信徒間では、鉢伏山にも神秘的な意義を感じ始めていた。鉢伏山は「八伏」とも書けるし、この山を源に「八木川・矢田川」が流れ、村の産土は「八千鉾の神」、JR「八鹿駅」(養父郡)、鉢伏山の東側には鳥取県の「八頭郡」等、「八」の字に関係のある地名が多く、また但馬の竹田城址は「虎臥山」、綾部の本宮山は一名「桶伏山」といい、大本にも神縁の深いところから、「鉢伏山」も何か神秘的な因縁があると考えられた。
地元古老たちからは毎年旧正月元旦に、鉢伏山頂に火が灯り、頂上には不思議な形の岩があるなどと聞かされていたので、昭和20年3月20日実地調査をする事となる。
古老の言う「こっとい(牡牛)岩」をはじめ「みろく岩」「大亀岩」「牛伏岩」「虎伏岩」等々を発見。報告をうけた聖師は、昭和21年5月22日、二代教主方とともに大笹を訪ね、龍宮神社に参拝。23日、但馬・竹田で住まいしていた三代教主や役員信徒ら数十人がお供して登山(下写真↓)。



「鉢伏山は、太古、日本海底の最深地点、龍宮の大黒柱の立っていたところで、地殻の大変動によって爆発隆起し、現在のお山を形造ったものである。主の大神さまが鎮まり、八力の大神ととなえ、お山全体が御神体である。陸(あげ)の龍宮奥の宮としての霊地であるから、記念祭のほかは遥拝して、みだりに登山しないように・・・」と聖師は述べた。
二代教主も「ふたむかしの夢が、いま実現いたしました。ある日の夜あけの夢に、十丈(30m)ほどもある岩がうなりをたてて私を迎えにまいりました。どこからともなく神さまのお声がきこえ、これに乗れとのお言葉。その岩に乗りますと、海の上を走るその音は龍の声で、ものすごい尊いお声でした。そして天空をかけめぐって、私がつれて行かれたのが、このたびまいりました鉢伏山でした。それが、これと寸分ちがわぬ形の岩でありました。夢のなかでは、その岩を『龍宮の乙姫』ととなえております。そして岩を龍がとりまいていました。私は龍の岩に乗って陸の龍宮の山々をかけめぐって、これで用事がすんだと思うと、もとのところに、うなりをたててつれて帰られたところで目がさめました。教祖(出口なお開祖)の言葉に、『けっこうな神さまの落ちておいでますところが、かくしてある』と言われたことが、ここのところであるとようやくわかりました。『龍宮のお宝、出口の神におわたし申す』とのお筆先の実地がこれでわかり、夢の謎がとけました」と話した。
また聖師は「龍宮岩は、地軸より生え立っており、その一部が現れておるのである。龍宮の乙姫さまのご神体である」とも示した。
昭和21年6月4日、綾部の本宮山上に最高至聖所の月山不二が完成。その日聖師によって富士の神霊とともに鉢伏山の神霊が鎮祭された。
二代教主の歌
ながき世の鉢伏山のはちびらき 神かいりませ綾の高天(たかま)に
八力の神は鉢伏山山に しのびて時を待ちたまふなり
世の終り世の始めなり元津神 世にいでまして守り給はれ
龍宮の仕組漸く揃ひければ 世にいでませよみろく大神
聖師の歌
鉢伏の山の神霊もろともに 月山富士にまつりたりけり