出口直日(三代教主)の作った陶器がいかなるものなのか。まだ評価を与える公式な場はなかった。

 作陶を初めて十数年が経過した昭和39年、直日を知る陶芸家の進言により東京・日本橋のギャラリー壺中居(こちゅうきょ)を会場として「出口直日作品展」が開催されることになった。同会場は大正年間の創業で国内でも名門。壺中居主催、日本陶磁協会後援。素人の作品展としては破格の扱いだった。

 作品展を前に識者の目で今一度作品の客観的評価を、ということで田山方南(ほうなん)(国宝監査官・文化庁主任文化財調査官など歴任)、黒田領治(日本陶磁協会常任理事・同協会発行機関誌「陶説」編集長)の2人が亀岡を訪ねた。

 作品の印象を田山は機関誌「陶説」に次のように記している。

 「箱から出されるものは、みな私の目に美しく映った。茶盌(ちゃわん)、鉢、水指、茶入、小壼(こつぼ)、皿と、いずれも共通することは、作品におおらかさがあることだ。何か楽しんで造っている心がひそんでいる。(中略)先ほど(三代教主に)お目にかかった時の印象とこれら陶器の持つ味とが、そっくり一味和合するものが感じ取られて、なるほど、これこそ『人陶一如』ともいうべき境地かなとつくづく敬服してしまった」

 水墨画について。

 「いま眼底に去来するのは、すすきの墨画と芦の絵である。そしてそこに多年習練のたしかさがただよっている。前者には光悦蒔絵(まきえ)を思わせる線の強さがみなぎっている。後者は芦を折矢のように並べ、余白を中において、寒江独釣(かんこうどくちょう)のような舟一つを上に描き、その空白は漂渺(ひょうびょう)とした江岸の静けさを湛(たた)えている。今日これだけの簡素化した寂莫境(せきばくきょう)を描き出す人があろうか。禅画に通ずる迫力を覚えた。陶芸といい、画技といい、まことに天禀(てんりん)の冴(さ)えが静かにしっとりと表現されている」

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出口直日「芦と舟」
若いころ、日本画家から弟子に欲しいと声を掛けられた直日。
好きな草花の写実から始め、簡素化された画を作り上げていった


 2人の手応えは十分であった。王仁三郎の血は、確かに直日へと流れていた。


(大本百二十年記念事業事務局主幹・田辺謙二)



当コンテンツは京都新聞で連載された
「大本」と芸術 開教120年に寄せて2012年1月19日朝刊分)からの転載です。


“東京・壺中居で個展 著名な作家・評論家が驚嘆
次週4月25日〔水〕に公開します







































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講 師  田辺謙二(大本120年史編纂室長)

たなべ けんじ:昭和29年岡山県生まれtanabekenji.jpg
昭和52年(1977)、大本梅松塾卒塾
大本編集部長、大本梅松塾長、
大本特派宣伝使を経て
現在は大本120年記念事業事務局主幹