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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第13回・先祖のまつり



「どうしてだろう…」

 大地は松太郎の後ろに座り、「おほもとのりと」を手に、神言を奏上しながら思った。子供のころ、母・京子といっしょに里帰りして、以前にもこうして祝詞を奏(あ)げたことはあった。

「でも、何となくありがたく、あったかい、こんな気分になったのは初めてだなあ」

 大地はそう感じていた。

 昨日までは、就職活動がうまくいかず、毎日悶々(もんもん)としていた。それが母のすすめで、長野から綾部に訪れ、昨夜の節分大祭に祖父・松太郎と参拝してから、何かが変わってきた。

 そして今日一日、松太郎から神さまについて多くの話を聴いた。神さまの歴史、大本はなぜ生まれたのか、2人の教祖のこと、「神約(しんやく)」のこと。大地にとってどの話も新鮮なものであった。

 神さまの悠久の歴史に思いを馳(は)せるとき、自分の悩みもさしたることはないのかもしれない、とも思った。しかし、そこは現代っ子、やっぱり現実は大切である。

 気がつくと大地は、「どうか良いところに就職できますように」と祈っていた。

 夕拝が終わり、2人はそれぞれ風呂に入り、松太郎と大地は向かい合わせで食卓についた。鍋から湯気が上がっていて、横の大皿には、カニが盛られていた。祖母・ともが作ったいくつかの手料理も並べられていた。

「うわぁー、カニだあ、おいしそう!」

「大地のために、今日は奮発したよ。さあ、ビールでも飲むかい?」

 ともが尋ねた。

「うん、一杯いただこうかな」

「私はいつもの焼酎のお湯割りを頼むよ」

 松太郎と大地は杯を交わした。

「あ〜、おいしいぃ!」

 大地は、ビールをグッと飲み、満足した表情で言った。

「さあ、たくさん食べなさい。長野ではカニはあまり食べる機会がないだろうからね」

「そうだね。長野には海がないし、うちではまず出てこないからね」

 大地は笑いながら答えた。

「いただき…」と言いかけて、大地は思い出した。

「食事の前には、三首のお歌だよね」

「そうそう、覚えていたな」

「では。天の恩……」

 3人は、手をあわせて二代さまの〝三首のお歌〟を拝誦(はいしょう)した。(三首のお歌については、本連載の第5回「三体の神」参照)

「いただきます」

 大地にとっては、久しぶりのカニであった。ハサミにも足にも身がしっかりつまった立派な松葉蟹(まつばがに)だ。

「うわぁ、おいしそう」

 カニ鍋となると身をとる作業に忙しく、会話が止まることが常である。大地も食べることに夢中になっていた。

「ところで大地…」と、松太郎が話しかけてきた。

「さっき話した神約のことだがなあ…」と、言いかけた松太郎の言葉を、ともがさえぎった。

「もう、おじいさん。神さまの話はそのくらいにして、ちあきや司(つかさ)のことを聞かせてもらいましょうよ」

 大地も、カニをほおばりながら、無言で頷(うなず)いた。

 ちあきと司というのは、大地の妹弟(きょうだい)のことで、ちあきが19歳の専門学校生、司が高校2年生である。松太郎とともにとっては、かわいい孫たちである。

「そうだなあ」

 松太郎は少し残念そうに答えた。

「2人とも元気だよ。ちあきは、美容師を目指してがんばっているし、司は、勉強よりも毎日バスケットの部活で忙しくしてるよ」

「そうかい。元気が何よりだね。2人とも大きくなったろうねえ」

「あ、そうだ」と、大地は携帯電話をとり出し、妹弟と京子がいっしょに映った写真を画面に出して、ともに手渡した。

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 携帯を手にしたともは、画面を遠ざけて見づらそうにしている。

「おばあちゃん、めがねだね。どこにあるの」

「悪いね、テレビの横なんだよ」

 大地はテレビ台の横に置いてあった老眼鏡をとり、ともに渡した。

「ああ、いい写真だね。2人とも大きくなって。道でバッタリ会ったらすぐにはわからないかもしれないねえ」

「とくに司は育ち盛りで、バスケをやってるからかなあ、身長もだいぶ伸びたよ」

 ともは、うれしそうな顔をしながら、携帯を松太郎に渡した。松太郎も写真を見ながら笑みを浮かべた。神さまの話をしていた真剣な表情と違い、好好爺(こうこうや)の顔になっていた。

 その夜は、大地の家族の話題に花が咲き、楽しい夕食の団らんが続いた。




 食事も終わりかけたころ、松太郎が話をかえた。

「そういえば、お母さんから連絡があったんだけど、大地に祖霊さまへの玉串を持たせたと言ってたがなあ」

「あっ、そうそう。預かってきたんだ。かばんに入れてあるから、持って来ようか?」

「いや、あるならいいんだ。明日、持って行ったらいいからな」

「うん、わかった。で、どこへ行ったらいいの?」

「みろく殿の中にある霊祭部というところだよ」

「みろく殿って、夕べの節分大祭で、焚(た)き火のうしろにあったあの大きな建物だよね」

「そうだ。今は、亡くなった人たちの神霊(みたま)をお祀(まつ)りしてあるところなんだ。いっしょに行くから心配しなくていいよ」

「うん、ありがとう」

「大地、もう食べなくてもいいのかい」

 ともが聞いた。

「おばあちゃん、もうおなかいっぱいだよ。ごちそうさまでした」

「そうかい。じゃあ、お茶を持ってくるね」

 孫と祖父母の和やかなひとときが続いた。気がつくと窓の外には、小雪が舞い始めていた。




 翌朝、大地はふだんより少し早く目がさめた。カーテンを開けると、外はうっすらと雪化粧にかわっていた。長野生まれの大地は、寒さには強いと思っていたが、綾部の寒さは長野のそれとは少し違う気がした。

 大地はリビングの松太郎と、台所に立っていたともに朝のあいさつをし、洗面をすませた。その後、松太郎について朝拝に参拝し、終わって朝食をとった。ともが作ったみそ汁が、格別にうまかった。

 朝食後しばらくしてから、松太郎は大地といっしょに、軽トラで梅松苑へ向かった。畑や家々の屋根にはまだ雪が残っていたが、道路の雪はすっかり溶けていた。

 午前9時すぎ、梅松苑の駐車場に車を止め、2人はみろく殿へ向かった。

 苑内では、節分大祭で使われたテントやテーブル、イスなどの撤去作業のためか、大勢の人がかしましく働いていた。

 みろく殿前のつくばいを使い、殿内に入った。

「広いなあ」

 大地は久しぶりに入ったみろく殿の広さに、どこかなつかしさを感じていた。

 右手のドアから係の人が出て来て、大麻(おおぬさ)でお祓(はら)いをしてくれた。

「梅木さん、ようこそ」

「おはようございます、今日は孫を連れて来たよ」

「そうですか。さあ、寒いでしょうから、こちらへどうぞ」

 2人は案内のままに、右手にある霊祭部へ入った。係の女性が笑顔で迎えてくれた。

「今日は、年祭(ねんさい)の申し込みをしたいんです。これがいただいた霊祭通知ハガキだが…」

 女性は、ハガキを受け取り、

「はい、わかりました。雨宮香(あまみやかおる)さんの20年祭ですね」と確認した。

「えっ、雨宮?」

 大地は、自分と同じ苗字を呼ばれて少し驚いた。松太郎は、

「そうです。この子の次の孫になるはずだったんですが、流産した子なんですよ」

「そういえばお母さんから僕とちあきの間にもう一人弟妹(きょうだい)がいるって聞いたことがあったよ」

「そう、今年の3月10日で20年になるんだよ。もし生まれてきてたら成人式だなあ」

 松太郎は、祭祀料(さいしりょう)を差し出した。

「では、祭祀料3,000円お預かりします。お玉串はどうなさいますか?」

「大地、預かったお玉串を出しなさい。お母さんは毎年この日に、みろく殿の大神さまと祖霊さまにお玉串をお供えしているんだよ」

「そうだったのか。それで2つあったんだね。はい、これです」

「お預かりします。この日は参拝なさいますか?」

 女性の問いに、大地は松太郎の顔を見た。

「私が家内といっしょに参拝するつもりです」

「わかりました。では、ご参拝ということでお受けしました。これはお下がりです」

 大地は女性から手渡されたお下がりを受け取りかばんに入れ、松太郎の後について受付を出た。2人はご神前に進み、大神さま、祖霊社、万霊社とお参りした。

「ぼくの兄弟(きょうだい)がここにお祀(まつ)りされているのか」

「そうだよ。この右側の祖霊社に梅木家の子孫・親族家族(うからやから)としてちゃんとお祀りされているんだ」

「梅木家の親族家族?」

 大地はまた、疑問がわいてきた。


(つづく)

※「おほもと」誌・平成23年1月号から転載

第14回「祖霊とは」は
次週2月3日〔金〕に公開します

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長

イラスト担当:にしじまさとしのプロフィールはこちら

西島 里司(大本メディア愛善宣教課主幹)

にしじま さとし:昭和36年兵庫県生まれnishijima.jpg
平成2年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、編集部長などを経て
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課主幹