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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第17回・不老不死の妙薬



「ところで大地、今、いくつだったかなあ?」

 松太郎は、唐突に大地の年齢を聞いた。

「22歳だけど」

 大地は、ポカンとした表情で答えた。

「22歳かあ、若いなあ〜。じゃあ、大地は何歳くらいまで生きたいかな?」

「えっ。ん〜、そんなの考えたことなかったけど」

 と首をひねったあと、笑いながら胸を張って言った。

「死ぬまで生きたいです」

 その答えに、松太郎は笑みを浮かべながら言葉を返した。

「おいおい、冗談ぬきで答えてくれないか」

「ごめん、ごめん。そうだねえ〜」

 大地はしばらく考えてから答えた。

「具体的な年齢というよりも、〝生きてて良かった〟と思えるまでかな」

「ほおっ、それはいい答えだなあ」

 松太郎は感心した面持ちで言った。

「ともあれ、人は皆、いずれは死ぬわけだ。おじいちゃんは今72歳だから、あと10年や20年したら、霊界へ行かなくてはならないだろうなあ。今では、70歳を過ぎることは、めずらしいことじゃないけど、昔は、60歳まで生きられたら御の字だったわけだよ」

「還暦までということだね」

「そう、60年で生まれた年の干支(えと)、暦(こよみ)に還(かえ)るということで、数え年61歳を還暦と言うんだ。昔は、赤いチャンチャンコを着て、『還暦』のお祝いをしたくらいなんだ。今は60歳というと、まだまだ働ける年齢だな。それでも、官公庁や多くの企業では、定年のところも多いがね」

「そうなんだ」

「昔の戦乱の世の中では、長生きする人はめずらしかったんだよ。だから長生きしたいために、〝不老不死の妙薬〟を探し求めた、という話がいくつもあるんだ。山中に住む仙人がその不老長寿の薬を持っているなどと想像されたものなんだ」

「ふう〜ん」




「あの有名な秦(しん)の始皇帝(しこうてい)は徐福(じょふく)という家来に、〝不老不死の妙薬〟を探すよう命じたんだ。徐福は何千という供を連れて船を出し、日本に渡ってきたそうだ。そして各地をまわり、長寿の村にたどり着き、妙薬を手に入れたんだ」

「へえ〜〝不老不死の妙薬〟が日本にあったの?」

「まあ、それは海藻であったとか、ヒジキであったとかいうことらしいがなあ」

「なあ〜んだ」

「そうした徐福伝説は、綾部の北の丹後半島の伊根町や、日本の各地にあるんだよ。まあ、皮肉なことに、徐福が秦を出発した翌年、始皇帝は亡くなっていたし、徐福も中国へ帰国することはなかったそうだ」

「あらら、残念でした、ということだね」

「もちろん、今の世の中に、肉体の〝不老不死の妙薬〟があるはずはないんだよ」

「だよね」

「それに、あったらたいへんだ。もし、それを大勢の人が飲んで、私は今、300歳です、私はもう500歳です、なんていうのもどうかと思うなあ」

「そうだよね」

「肉体の〝不老不死〟はあるはずもないことは誰でもわかることだ。実はなあ、本当の〝不老不死〟は、精霊のことなんだよ。ただ多くの人はこれに気づいていないだけなんだよ」

「精霊は、永遠に死なないということなの?」

「そうなんだ。このことを知って、この世を喜びをもって生きていくことが大切で、その鍵となる〝み教え〟こそが、実は〝不老不死の妙薬〟であると言えるんだよ」

「だから、霊界のことを詳しく知っておくということが大切なんだね」

「そういうことだ」

 松太郎は、大きく頷(うなず)き、話を続けた。

「大地、人の死というのは悲しいものだよ。特に、身近な人が、不慮の事故や災害、事件などに巻き込まれて亡くなったときなどは、その悲しみはより深いものがあるんだよ」

「僕はまだその経験がないからわからないけど、きっとそうだろうね」

「でもなあ、もしこの世に〝死〟というものがなく、誰も死ぬことなく、人が増え続けたら、この世の中はどうなるかなあ?」

「そりゃあ、大変なことだよね。人口が増え続けたら、環境問題や食料問題は今の比ではないし、しまいには、地球がパンクしてしまうんじゃないかなあ」

「そうだなあ。そうした意味で、聖師さまは、『死は神さまの慈愛である』とさえ説いておられるんだ。もちろんそれは、肉体を主にしたことではなく、あくまでも霊魂を中心に考えてのことだがなあ」





 松太郎は少し間を置いて、大地に質問した。

「死ぬということは怖いことだと思うかな?」

「うん、今の僕にとっては怖いものだね」

「そうだな、それでいいんだ」

「いいの?」

「もちろん。神さまは、人の〝死〟というものに対して、〝恐怖心〟を与えておられるんだ。これも神さまの愛なんだよ。もし死が怖くなかったら、人は簡単に命を落としてしまいかねないからなあ」

「あっ、なるほど」

「もっとも最近は、自殺者が増えているそうだ。年間3万人以上の人が自殺していて、交通事故で亡くなる人よりもはるかに多いらしいなあ」

「悲しいことだね」

「そうなんだ。自らの命を絶つことは、神さまから見たら最も重い罪になって、霊界に帰ってから、たいへんな苦労をしなくてはならないそうだよ。現界での苦痛以上のものが待っているんだから、決して死んだら楽になるのではなく、よけいに苦しくなるということも知っておかないといけないんだよ」

「それは大変なことだね」

「霊界は、意志・想念という思いの世界だから、自殺した時の苦しい思いをそのまま持っていき、それに縛られてしまうんだよ。肉体がない分、その思いがより鮮明になってきて、よけいに苦しい思いが強くなるんだ」

「自殺は自分の魂のためにも、やってはいけないことなんだね」

 と言って、大地は頷(うなず)きながら松太郎の話に耳を傾けていた。





「梅木さん」

 後ろから霊祭部の女性が声をかけた。

「そこでお話しされていると、寒いでしょう。よかったらあちらへどうぞ」

 と、みろく殿南側の小部屋を指差した。

「あっ、ありがとう。じゃあ、あっちへ行こうか」

 松太郎と大地は、ゆっくり立ち上がり、万霊社の前のストーブのそばから、小部屋に向かって歩きだした。先に歩いていた女性が、「部屋は暖かくなっていますし、今、お茶を入れますね」と振り返って言いながら、受付の方へ進んでいった。

 二人は、小部屋の中に入り、ガラス戸越しに見える金竜海に目をやった。神苑の樹々には、まだうっすらと雪が残り、朝の日をあびて融けた水滴が金竜海に落ち、水面にいくつもの波紋が広がっていた。

「お茶をどうぞ」

 くだんの女性がお盆に急須と湯呑(の)みを乗せて入ってきた。女性は手際よく長机の上に湯呑みを置き、急須からお茶を注いだ。

「いただきものですけど、よかったらどうぞ」と茶菓子を添えた。

「いや〜、ありがとうございます。遠慮なくいただきます」

「どうぞ、ごゆっくり」

 女性が部屋から出たあと、2人は長机に向かい合って座り、同時に湯呑みを手に取り、お茶を飲んだ。

「あ〜、おいしい」

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 大地はホッとした気分になった。

「きれいな神苑の景色を見ながらいただくお茶は、格別だなあ」

 松太郎も笑顔になっていた。





「おじいちゃん」

 大地が松太郎に聞いた。

「亡くなった人の精霊が中有界に入って、50日たったら、それぞれに決められたところへ行くということだったけど、みんな天国に行くことになるの?」

「みんな行くんだよ、と言いたいところだけど、天国へ行けない精霊もあるんだ」

「その精霊はどこへ行くの」

「地獄と呼ばれるところだなあ」

「やっぱり、神さまは地獄もつくっておられたんだね」

「いや、そうじゃないんだ」

「えっ、そうじゃないって、どういうこと?」

 大地はまた不思議そうな顔をした。

(つづく)

※「おほもと」誌・平成23年5月号から転載

第18回「自分で造ってしまう地獄」は
次週3月2日〔金〕に公開します

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長

イラスト担当:にしじまさとしのプロフィールはこちら

西島 里司(大本メディア愛善宣教課主幹)

にしじま さとし:昭和36年兵庫県生まれnishijima.jpg
平成2年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、編集部長などを経て
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課主幹