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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第18回・自分で造ってしまう地獄



 松太郎は、再び湯呑(の)みをゆっくりと口に運び、一口お茶を飲んでから話し出した。

「本来神さまは、霊界には天国だけあればいいと望んでおられると、おじいちゃんは思うんだ。でもなあ、霊界に帰った精霊の中には、どうも〝天国は居心地が悪い〟と感じる精霊がいるようなんだ」

「へえ〜」

「この世でも、本当は天国的な雰囲気が一番好まれるはずなんだが、人によっては、取り巻く環境や、本人の心がけの悪さで、天国的なところよりも、どちらかというと地獄的な雰囲気のところの方がいいという人もあるんだ。もっともそんな人にとっては、そこが天国なんだろうけどなあ」

「へえ〜、そうなの?」

「極端な例かもしれないが、少し前によくテレビで報道されていた〝ゴミ屋敷〟の話題があっただろう」

「全体がゴミで覆われている家だよね。けっこうたくさんあるみたいだね」

「そう、おじいちゃんなんか、よくもまあ、あんなところで生活できるなあ、と思ったけど、住んでいる人は平気なんだなあ。テレビでは臭いは伝わらないけど、きっと悪臭もあるだろうし、周囲の人たちにも大きな迷惑を掛けているはずだ。でも本人は知らんフリで、悪びれた様子もなかっただろう」

「僕の部屋もけっこう散らかっているけど、あれは、すごいよね。そこで生活しているということが、僕も信じられなかったなあ」


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「まあ、そう思うのが普通だろうなあ。でも、こんな極端な話でなくても、たとえば、きれいに掃除されて清められたお茶室でお抹茶をいただくより、タバコの煙が立ちこめた薄暗い飲み屋で酒を飲む方がいいという人もいるだろう。そういう人にとっては、飲み屋が天国なんだよ」

 大地は、首をひねりながら聞いた。

「それは、好き嫌いの問題じゃないの?」

「そうともいえるけど、好き嫌いということは、興味があるかないかの問題で、人間は、興味のないものだと、たとえ目の前にあっても気にも留めないものなんだよ」

「そんなもんかなあ」

 松太郎は、湯呑みを机の上に置き、ちょっと考えてから話を続けた。




「今朝、家からここまで来る間に、いろんな景色が目に入ってきただろう」

「そうだね。きれいな景色だったよ」

「でも、おじいちゃんと大地の記憶に残っている景色や物は、必ずしも同じじゃないと思うんだ」

「それはそうだと思うよ」

「たとえば、アマチュア無線のアンテナが屋根の上に立っている家が何軒かあったけど、たぶん、大地にはまったく目に入ってないはずだなあ」

「エエッ、アマチュア無線のアンテナ? 僕、まったくわからないよ。第一、どんなものがアマチュア無線のアンテナなのか知らないしね」

「そうだろう。今は携帯電話が普及したから、アマチュア無線はあまり流行(はや)らなくなったけどなあ。おじいちゃんは、若い時に興味があって少しやっていたから、今でもアンテナが立っているとつい目が行ってしまうんだよ。でも、そんなものに興味もない大地にとっては、意識したこともないだろうし、景色として目に入ってこないのは当たり前のことなんだよ」

「そりゃあ、そうだよね」

「これと似たようなことが、霊界に行ったときにあるんだよ」

「あっ、わかった。中有界(ちゅううかい)から地獄に行くときのことだね」

 大地は、頷(うなず)きながら言った。




「そう、察しがいいなあ。中有界での滞在期間が過ぎて、次の世界に行くとき、地獄への入り口は、そこに入るべき精霊のためにだけ開かれているんだ。天国に行くべき精霊には、地獄の入り口はまったく見えないんだよ」

「おじいちゃん、それはどんな入り口なの?」

「何でも岩の裂(さ)け目のような入り口らしいなあ。なんだか薄暗くて、すすけた蜂の巣のようにも見えるそうだ。聖師さまが『霊界物語』の中で書いておられるのは、その入り口を入ると、道が斜め下に向かっていて、だんだんと暗い深い穴に入っていくようになっているんだ。先に進むとまたいくつかの入り口があって、その入り口からは、鼻が曲がるような不快な悪臭が漂ってくるらしい。聖師さまは、〝眉毛(まゆげ)が枯(か)れるような感じ〟と表現されているから、よっぽどの悪臭なんだろうなあ」

「想像できないくらい臭いってことかなあ」

 大地は、眉をひそめながら言った。

「ところが、地獄に籍をおくような精霊は、その暗闇や悪臭が、この上なく好きなんだそうだ」

「ゴミ屋敷に住んで何ともないと思える人みたいだね」

「そう、精霊は中有界を出ると、その身魂に応じた場所に自分から好んで進んでいくことになるんだ。地獄へ行くべき精霊の前には行くべき入り口が開き、進むべき道が決まってくるということなんだよ。そのことを聖師さまはわかりやすいお歌で教えておられるんだ」

「どんなお歌?」

 松太郎は、次の道歌(どうか)を大地に伝えた。


 ことさらに神(かみ)は地獄(ぢごく)を造(つく)らねど
    己(おの)が造(つく)りておのが行(ゆ)くなり


「なるほど、そういうことか。地獄というのは、自分自身で造り出すんだね」

「そういうことだなあ」

「じゃあ、死んで中有界を卒業した時に、地獄の入り口が見えないように、この世にいる時から努力しないといけないね」

「そうだ、その心がけが大切だなあ」

 松太郎は、大地の言葉に笑いながら答えた。

 その時、大地はフト気づいたように、真剣な表情で松太郎に質問した。

「おじいちゃん、心がけはいいんだけど、実際にはこの世で、どんなことに注意したらいいの?」

 松太郎は、大地の質問に少し驚いたような面持ちで、言葉を継いだ。

「そうだなあ、それにはもう少し地獄のことを知っておく必要があるかもしれないなあ」

「地獄のことはあまり詳しく知りたくないけど、必要最小限度で教えてもらいたいなあ」

「よしよし、じゃあ簡単に言おう」

「お願いします」




「地獄は、別の言葉で〝根の国・底の国〟とも言うんだよ」

「根の国・底の国?」

 大地は松太郎の言葉を繰り返した。

「つまり地獄界は、大きく分けると、根の国と底の国という二つの領域にわかれていて、地獄に落ちるべき精霊は、その魂に応じた方へ行くんだ」

「その二つはどうちがうの?」

「根の国というのは、虚偽の世界。底の国は悪欲の世界と教えられているんだ」

「虚偽と悪欲?」

「そう、虚偽と悪欲」

 大地は、考えながら言った。

「おじいちゃん、虚偽というのは、ウソやゴマカシということだよね。つまり、ウソをついて、人をだましたりすることだね」

「そうだな。そして、悪欲は、悪い欲。つまり自分のための欲、私利私欲、エゴ、〝われよし〟ということなんだろうなあ」

「そういうことかあ」

 大地は、腕組みをしてしばらく考えて、納得したように言った。

「ということは、地獄に行く資格を作らないためには、私利私欲のために、ウソやゴマカシで人をだましたり、傷つけたりしないこと。〝われよし〟の精神にならないということだね」

「そういうことだ」

「でも、口で言うのは簡単だけど、実践するとなると、しっかり意識して努力しないといけないんだろうなあ」

 松太郎は、大地の言葉を聞いて、うれしそうに大きく頷き、目線を外の金竜海に向けた。そして、一つ息をはいてから、聖師さまのお歌を口ずさんだ。


 悪(あく)と虚偽(きょぎ)このむ霊魂(みたま)は忽(たちま)ちに
    地獄(ぢごく)つくりてひとり落(お)ちゆく


 恐(おそ)るべきものは身魂(みたま)の汚(けが)れなり
    根底(ねそこ)の国(くに)へおのづから行(ゆ)


「おじいちゃんは、よく歌を覚えているねえ。感心するなあ。僕も覚えておこうかなあ」

 大地はそう言いながら、これまでに聞いた地獄に関する三首の歌を、松太郎から繰り返し教えてもらった。

 しばらくして、大地は、独り言のようにつぶやいた。

「根の国と底の国では、どっちが罪深いのかなあ?」 

(つづく)

※「おほもと」誌・平成23年6月号から転載

第19回「魔王とサタン」は
次週3月9日〔金〕に公開します

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長

イラスト担当:にしじまさとしのプロフィールはこちら

西島 里司(大本メディア愛善宣教課主幹)

にしじま さとし:昭和36年兵庫県生まれnishijima.jpg
平成2年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、編集部長などを経て
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課主幹