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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第20回・中有界での面会



「どうしたんだい?」

 松太郎は少し身を乗り出して言った。

「ごめんね、おじいちゃん。一つ聞き忘れたことがあるんだけど……」

 大地は申し訳なさそうに言った。

「何だい?」

「あのね、テレビドラマなんかで、死ぬ間際に、よく〝お迎えが来る〟って言ってると思うけど、あれってホントに誰かお迎えに来るのかなあ?」

 松太郎は大地の質問に軽くうなずきながら答えた。

「〝お迎えが来る〟というのは、仏教的な言葉で、〝来迎(らいごう)〟ともいうんだけど、臨終の時に、仏さまや菩薩が浄土、あの世から呼びに来られるということで、死期が近くなっているということなんだよ」

「あっ、そういう意味なのかあ。じゃあ、あの世に行くときに、霊界にいる精霊が迎えに来るということじゃないんだね」

「そうだなあ。だけど死後、中有界では、先に霊界に行った親しかった人と会うことは可能なんだよ」

「えっ、じゃあやっぱり、先に亡くなった家族や友達に会うことができるの?」

「ああ、そうだよ。特にこの世で夫婦や兄弟姉妹だった精霊には、神さまのお許しをいただいて、中有界で会うことができるんだ」

「友達とも会えるのかなあ?」

「特に親しかった友人にも会えるそうだよ」

「そうか、良かった」

 大地は笑顔で答えた。

「でも、中有界も広そうだしなあ…。おじいちゃん、どうやって会いたい人を捜すの?」




 大地の質問に、松太郎は例のごとくしばらく考えてから、逆に大地に質問した。

「今、大地が友だちといっしょにいるとしよう。場所は、人が大勢集まっているところ。たとえば縁日やイベント会場とか。そこに、大地の友人とその友人の友達の3人で行っていた。友人の友だちとは、その日初めて会ったとしよう」

「はい」

「しばらく歩いていて、あまりの人ごみだったので、大地が2人とはぐれてしまった。まわりを見ても2人の姿がない。さてその場合、大地はどうする?」

「そりゃあ、まず携帯で連絡するよ」

「そう言うだろうと思った」

 松太郎は想定していた答えが返ってきた、と笑いながら言葉を続けた。

「まあ、今の時代はそうだろうなあ。じゃあ、3人とも携帯は持っていなかったと仮定した場合はどうかな?」

 大地は、しばらく目をつぶって考えてから答えた。

「そうだねえ。もし呼び出しする方法がなければ、とにかくその友達が行きそうなところを、一生懸命捜すしかないだろうね」

「そうだろうなあ。じゃあその場合、大地の心の中には、どんな思いが浮かぶかなあ」

「早く捜さないとまずいなあ、って思うだろうね」

「そうだな、そう思うだろうなあ。じゃあその時、大地の頭にはどんな景色が浮かんでるだろうなあ?」

「景色?」

「そう、どんな絵や音が浮かぶかなあ?」

「ああ、そりゃあ、その友達の顔や声が浮かぶんじゃないのかなあ?」

「そうだなあ」

 松太郎は納得したような口調で言った。

「じゃあ、友人の友達の顔はどうかな?」

「えっ。たぶん、その日初めて会った人だったら、まずすぐには思い浮かばないと思うよ」

「おそらくそうだろうな。やっぱり知らず知らず、親しい友人の顔や声を思い、いろいろ考えながら捜しまわっているだろうなあ」

「そうだと思うよ」




 松太郎は少し間をおいて話を続けた。

「それと同じことだよ、大地。中有界で、先に亡くなった自分の家族や兄弟姉妹、それからとても親しかった人に会いたい、と強く思った時、おのずとその人の顔や声が浮かんでくるんだ。ほかにもその人との楽しかった思い出の場面なんかも浮かんで来るだろうなあ」

「なるほど、そうだろうね」

「中有界ではそうしたことを思った瞬間、目の前に会いたい人が現れるんだよ」

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「え〜、捜さなくていいの?」

 大地は驚いた。

「すごいね、おじいちゃん」

「霊界は現界のような時間や空間がない〝思いの世界〟〝想念の世界〟だから、深い情でつながっている精霊同士だったら、お互いの思いが通じればすぐに実現するんだよ」

「へえ〜、それなら携帯で連絡して捜すより、はるかに早いね」

「そうだな」

 二人は笑いながら顔を見合わせた。




 みろく殿には、時おり参拝者があり、ご神前と祖霊社で祝詞を奏(あ)げている。2人がいる休憩室にはガラス戸越しに、参拝者の拍手の音と祝詞の声が聞こえてくる。大地は、その声の方へ顔を向けた。

「ただし……」

 松太郎の言葉に、大地は顔を戻した。

「何、おじいちゃん」

「いったん、中有界で別れた場合は、天国でも地獄でも、再び会うことはないそうだよ」

「え〜、そりゃまた、つらいなあ」

「まあ、人間的にはそう思えるけど、思いの世界である天国では、お互いが同じ愛情や信仰、性格や心情でなければ、いっしょにいることはできないんだ。だから、もし天国でもずっといっしょにいたいのなら、この世にいる間に、お互いが同じ愛情や信仰、性格や心情を持てるようにすればいいんだよ」

「おじいちゃん、簡単に言うけど、それって難しいでしょ」

「その通り、なかなか難しいなあ。それに性格や心情が違うからこそ、人はお互いに切磋琢磨、修行ができるわけだからな」

「なるほど、それがこの世の修行にもなるわけだね」

「そういうことだ」

「ぼくはまだ独身だからわからないけど、特に夫婦の間がそうなのかなあ?」

「大地、その通りだよ。聖師さまがおっしゃるに、中有界でいちばん普通に再会できるのは、夫婦の再会なんだそうだ」

「やっぱり!」

「しかも、この世でどれくらいお互いが心情的に近づいていたかによって、中有界でいっしょにいられる時間が決まるそうだよ。心情的に深くつながっていた夫婦ほど長い時間を過ごせるんだよ」

「へえ〜、そうなんだ」

「もし、現界で夫婦の心の和合が薄かった場合は、ちょっとの時間で別れてしまうそうだよ」

「ということは、この世でケンカばかりして、仲の悪かった夫婦は、あの世でもすぐに別れてしまうということだね」

「そういうことだ。ほとんどすれ違いでの再会の場合もあるのかもしれないなあ」

 と、松太郎は苦笑いしながら言った。

「だから、〝あの世でまでもいっしょになりたくない〟、とお互いに嫌っている夫婦だったら、天国で夫婦になることはまずないはずだなあ」

「そうだろうね」

「逆に、〝あの世でも絶対いっしょになりたいんです〟っていう仲のいい夫婦だったら、もしかしたら、天国でも夫婦になれるかもしれないなあ」




「そういえばおじいちゃん、この世で、仲のいい夫婦は顔も似てくるって言うらしいけど、ホント?」

「そうだね。永年連れ添っているオシドリ夫婦は顔も似てくるもんだね」

「やっぱりそうなのか」

 その時、ふと気づいたように大地が言った。

「ということは、自分が会いたくない人には、霊界では会わなくてもすむんだね?」

「そりゃあ、霊界に行ってまで、会いたくない人に会う必要はないだろうよ。ましてや同じ心情の持ち主じゃなければ、会うことはないはずだよ」

「そうだよね」

 大地は笑いながら言った。




「先の話だけど、おばあちゃんが亡くなって、そのあとにおじいちゃんが霊界に行ったとしたら、おばあちゃんと会いたい?」

「そりゃあ、会いたいさ。ただ、おばあちゃんが会いたいかどうかは知らないよ。おばあちゃんが会いたくないと思っていたら、会えないかもしれないからなあ」

 と、松太郎は少しはにかみ口調で言った。

「いや、それはないでしょ。きっと長い時間をいっしょに過ごすんじゃないかなあ」

 と、大地も笑顔で返した。

「まあ、おばあちゃんより、おじいちゃんの方が先にあの世へ行くだろうけどなあ」

「いえいえ、お2人ともこの世で、これからもなが〜い時間を過ごしてください」

「そうだな、それが修行だからな」

(つづく)


※「おほもと」誌・平成23年8月号から転載

第21回「天国へのアプローチ」は
次週3月23日〔金〕に公開します

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長

イラスト担当:にしじまさとしのプロフィールはこちら

西島 里司(大本メディア愛善宣教課主幹)

にしじま さとし:昭和36年兵庫県生まれnishijima.jpg
平成2年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、編集部長などを経て
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課主幹