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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第23回・天人の職業



 みろく殿南側の小部屋に入ってから、1時間以上は過ぎただろうか。暖房が効いた小部屋のガラス戸はうっすらと曇っている。神苑の樹々に残っていた雪もおおかた溶け落ちてしまったようだ。

 大地は、湯呑(の)みに少し残っていたお茶を飲み干した。急須を持つと、まだお湯が入っている手応えがあった。

「おじいちゃん、お茶入れようか。だいぶぬるいけどね」

「まだあったのか。じゃあ、もらおうか」

 大地は、松太郎の湯呑みにお茶を注いだ。

「でも、ここからの景色はきれいだねえ」

 大地はお茶を入れながら言った。

「そうだなあ、ここから見る金竜海は格別だなあ。昨日が立春だったせいか、今日の景色は一段ときれいに見えるなあ」

「どうぞ」

「おおっ、ありがとう」

 松太郎はそういうと、湯呑みを持ってお茶をすすった。

「ほんとに、ぬるいなあ」

「だよね」

 大地は笑いながら急須に残ったお茶を、自分の湯呑みに注ぎ切った。その湯呑みを手に取り一口飲むと、大地は外に目をやり、独り言のように言った。

「天国の天人は、いつも何をしてるのかなあ?」

「んん、何?」

 大地の言葉が聞こえなかったのか、松太郎が尋ねた。

「あ、いやね、天国の天人って毎日何をして生活しているのかなあ、と思ってね」

 大地の質問に松太郎は、また例のごとく聞き返した。

「大地は、天人さんたちは何をしていると思う?」

「あっ、また逆質問ですか」

 大地はニヤリとしながらも素直に答えた。

「たぶん、自分の好きなことをして遊んでるんじゃないかなあ」

 その答えを聞きながら、松太郎はお茶を飲み終え、湯呑みをテーブルに置いてからしゃべり出した。


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「実はなあ大地、天国にも職業があるんだよ」

「へえ〜、そうなの?」

「天国には、この世と同じように、海や山や川、平野もあって、草木も育ち農地もあるんだ。ただ違うのは、この世よりもすべての景色が格段に美しいということだ。そこで天人たちは、所属する団体の中で、自分の能力にあった仕事をしているんだよ」

「へえ〜、仕事をしてるんだ」

「そう、決して遊びほうけているわけじゃないんだ。天国だから、文字通りの〝天職〟を楽しんで、それぞれがお互いのために、団体のために、神さまのために、喜んで仕事をしているんだ。つまりは、自分のためでなく、神さまのご用に立てるような仕事をしているということなんだ」

 大地は黙ってうなずいている。松太郎は説明を続けた。

「いいかい大地、神さまが宇宙や、あの世とこの世を造られたのは、目的があってのことなんだ。つまり用があるから造られた」

「用?」

「〝今日はちょっと用事があるから〟っていう、あの用事と同じで、〝ご用〟ということだな。人間の用事ではなくて、神さまの〝ご用〟。平たくいうと、神さまのお仕事ということだなあ」

「神さまのお仕事?」

 大地は、首をかしげた。

「そう、神さまのお仕事。神さまのなさる業(わざ)ということだから、大本では〝ご神業〟と言っているんだ」

「ご神業」

 大地は松太郎の言葉を繰り返した。

「つまりは、天国の天人たちは、ご神業、神さまのご用のために、毎日嬉々(きき)として働いているんだよ。だから誰一人として、この世のように金もうけのためとか、私利私欲のためとかということで働いている者はいないんだ。それがこの世とは決定的に違うということだな」

「へえ〜、それでみんな楽しいのかなあ?」

「そりゃあ楽しいさ。仕事上でのトラブルはないし、もちろん政治や経済の問題、思想的な問題もないから、とっても平和で幸福な生活なんだ」

「そりゃあ、天国だもんね」

 大地は笑いながらうなずいた。

「天人個人の心は、団体みんなの心、団体一同の心は、天人一人一人の心と同じということだな」

「そうか、やっぱりそういう天人同士が、同じ団体に集まっているということだもんね」

「そういうことだな」




「それから聖師さまは、天国にも〝士農工商〟の区別があるとおっしゃっているんだ」

「えっ、〝士農工商〟ってあの江戸時代の?」

「いやいや、江戸時代の〝士農工商〟とは違う。農業と工業・職人、商人は同じようなものだけど、武士はさすがにいないんだ」

「じゃあ、士は何?」

「士というのは、神さまの教え、誠の道を多くの天人に教え伝えることを仕事としている天人のことだ。その天人を〝宣伝使〟というんだ」

「宣伝使……」

「だから大本では、この世でも神さまのみ教えを宣(の)べ伝える人を〝宣伝使〟として任命しているんだ」

「じゃあ、おじいちゃんも〝宣伝使〟なんだね」

「まあ、一応な」

「だから、いろんなこと、こんなに詳しいんだね」

 大地は納得したような口調で言ったあと、ふと表情を変えて言葉を続けた。




「ねえ、おじいちゃん。今、この現界は〝格差社会〟と言われるけど、天国でも〝士農工商〟のような区別があるということは、やっぱり格差があったり、貧富の差があったりするということじゃないの?」

 松太郎は、大地の質問にうなずきながら言葉を返した。

「天国にも貧富の〝区別〟はあるんだよ」

「え、やっぱりあるの!」

「でも、この世の貧富の差とは違って区別なんだ」

「ん〜、そうこなくっちゃ」

 大地はまた笑いながら言った。

「天国では、天人各自の働きによって報酬を得るということではなくて、すべては神さまのもので、あらゆることは神さまに〝させていただく〟という考えを、どの天人も持っているんだ。神さまによって生かしていただいているんだという気持ちで、日々感謝の生活をしているから、貧富の区別があっても、現界のように、貧しい者は決して富める者を恨まないんだ。それにもともと、天人それぞれの念頭に、貧富という感覚がないんだ。貧富自体もみな神さまから賜るもので、天人各自の努力によって得るものでもないんだよ」

「……」

「それは、この世にいる間にその人が、どれだけ善を尽くし、徳を積んできたかによるわけで、それが天国に来てもそのまま自然に貧富の区別になるというわけなんだよ」

「つまり、現界ではどれだけ財産や富を持っているかで左右される貧富の差だけど、天国での貧富は、生きている間にどれだけ、世のため人のために尽くしてきたか、ということなんだね」

「その通りだよ、大地」

「じゃあ、天国でお金持ち、というか富める天人になるためにはどうしたらいいの?」

「まあ、天国で金持ちになりたい、という野心を持った時点で、そこに〝自分〟という思いが強く出ているから、すでに難しいかもな」

 松太郎は笑いながら大地の顔を見た。

「なるほど。ということは、そんなことも思わない方がいいんだね。野望は禁物ということだね」

「まあ、そうだな。あとは……」

「あとは、何?」

 大地は、身をのりだした。

(つづく)


※「おほもと」誌・平成23年11月号から転載

第24回「天国の貧富」は
次週4月13日〔金〕に公開します

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長

イラスト担当:にしじまさとしのプロフィールはこちら

西島 里司(大本メディア愛善宣教課主幹)

にしじま さとし:昭和36年兵庫県生まれnishijima.jpg
平成2年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、編集部長などを経て
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課主幹