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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第24回・天国の貧富



「それは…」

 松太郎は少し間を置いた。

「何なに?」

 大地はじれったさそうにたたみかけた。

「いちばん大切なことは、神さまのことをしっかり理解するということなんだ」

「神さまのことを?」

「そう、まずは神さまがいらっしゃるんだ、ということを信じることだな」

「僕は何となく信じてるけどなあ」

「そうか、大地は信じてるか。それならいいんだ」

「何となくだよ」

 松太郎は、大地の言葉をうれしそうに聞きながら話を続けた。

「信じるということにも、〝信じようと思う〟、〝信じているつもり〟、そして、〝信じ切る〟というように、段階があってなあ。大地は、今2番目くらいかなあ」

「なるほど、そうかもしれないなあ」

 大地は納得したようにうなずいた。

「もっとも、大地が神さまを信じてなかったら、おじいちゃんのこんな話も聞く気にならないだろうがなあ」

「そうだね」

 大地は笑いながら言った。

「まあ今は、それでもいい。でも、これから長い人生を生きていく間に、神さまを〝信じ切れる〟ようになってくれれば、おじいちゃんは何よりうれしいよ」

「うん、努力するよ」




「大地、むか〜しの人たちは、大自然そのものが神さまだと思い、その大自然によって人は生かされていると考えていたんだ。だから人間も自然の一部という発想で、自然に逆らわず、自分たちの生活を自然に合わせるようにして暮らしていたんだ。でも、時代が進み、特に近代になってからは、人間が都合のいいように自然を変えて、自分たちの生活により便利になるように手を加えてきた。あげくの果てには、人間が自然を征服できると錯覚してしまったところに大きな間違いがあったんだよ。これはとんでもないおごりで、神さまに対して、とっても申し訳ないことなんだ」

「環境破壊も人間の仕業だもんね」

「そうだなあ。そもそも、〝環境〟という言葉自体、昔はなかったんだからなあ」

「へえ〜、そうなんだ」

「とにかく、人は生きているんじゃなくて、大自然の力、神さまによって生かされているということを自覚することが、まず大切なことなんだ。それが、天国で富める天人になるための第一条件ということだな」

 大地は、無言でうなずいた。




「それから、日常の生活では、国祖の神さまが願っておられるように、〝われよし〟〝つよいものがち〟の心を持たないようにして、神さまのため、世のため、人のために、自分にできることを精いっぱい実践していくことだな」

「それって、けっこう難しいことだと思うけどなあ…」

「そう、簡単じゃあないけど、まずはそういう〝意識〟を持つことだな。現実的には、すべき仕事をキチンとして、働いて得たものの中から、余財を神さまのご用のためにささげることだな。聖師さまは、そのことを〝宝を天国の庫に積んでおく〟とおっしゃっているんだよ」

「宝を天国の庫に……、ん〜、よくわからないなあ」

 松太郎は、「そうだろうなあ」という表情を浮かべながら、話を続けた。




「大地、この世での現実的な財産でまず思いつくのは?」

「まあ、お金だろうね」

「そうだな。そのお金はいろんな方法で自分の手元に入ってくるだろう」

「仕事をして稼ぐのが普通だよね」

「その稼いだお金は、どうするかな?」

「必要な分は使って、貯金するんじゃない。最近は金利が低いから、タンス預金する人も多いって聞いたことあるけど、普通は銀行や郵便局なんかに預けておくんじゃない?」

「そうだな。その中から、その人にできる範囲でいいから、神さまのご用に使っていただこうと浄財をささげることが、〝天国の銀行〟に預けることになるんだよ。それが〝宝を天国の庫に積んでおく〟ということなんだ」

「おじいちゃん、この世の銀行のように天国の銀行でも利子は付くの?」

「もちろんチャンと付くよ。でもそれは、預けた人の〝まごころ〟次第で変わるんだよ。義務感やイヤイヤながら預けても神さまは喜ばれないからね」

「変動制なんだね?」

 大地はニコリとしながら言った。

「まごころ変動制かな」

「なるほどね」




「人間だってそうだろう。もし、大地が欲しいなあ、って思っている物を友だちが持っていて、それを友だちが快く譲ってくれたらうれしいだろう。でも、大地があまりにしつこく欲しがったからって、仕方なくイヤイヤくれたら、大地もあんまりいい気分じゃないんじゃないかなあ」

「そりゃあ、そうだね。それに相手の執着心がその物に残るようで、気分がよくないかもしれないね」

「そうだろう、それと同じことだ。〝神さまどうぞ使ってください〟と、気持ちよくまごころ込めてささげられたら、神さまも喜んで使われるんだよ。おまけに、思ってもみない〝お礼〟を頂いたりすることもあるんだよ」

「などほど、それが利子になるんだね」

「そういうことだなあ。でも、最初からその利子を当てにしてたら、それは〝まごころ〟とは言わないからな」

「あっ、そりゃあそうだね」

 大地は、苦笑いした。




 松太郎はふと思い出したように、話を続けた。

「そうそう、おじいちゃんの知り合いで商売をしてて、どうにも仕事がうまくいかず困り果てていた人がいたんだ。人事は尽くしたんだけど、もう商売もやめなければならないかもしれないというところまで追い込まれてしまった。それで、あとは〝神さまにお任せするしかない〟と、手元にあったすべてのお金を持って聖地にお参りし、そのお金を全部お玉串としてお供えしたんだ。ところが、それから家に帰ると、思わぬところから仕事の依頼が来て、窮地を救っていただいた、というおかげ話もあるんだよ」

「それは、すごいね」

 大地は感心したような表情で言った。




「それから天国で富める天人になるためには、もう一つ大切なことがあるんだ」

「何?」 

「それは、生きている間にしっかり〝徳〟を積むことだな」

「徳かあ」

「しかも陰徳と言って、人に知れないように徳を積むことが大切なんだ」

「ん〜、まだ僕には難しいかも」

「まあ、おいおいわかってくるから、心配しなくてもいいよ。それよりも今はまず、大学を卒業して、ちゃんと就職することがいちばんだな」

「あ〜、現実に引き戻された感じだなあ」

 大地は、松太郎から視線をそらし、窓の外の金竜海に目をやった。




 その時、松太郎のズボンのポケットで、携帯電話の呼び出し音が鳴った。松太郎は携帯を取り出し、開いて画面を確認した。

「おっ、うちからだ。はい、もしもし」

 2人がなかなか帰ってこないので、心配した祖母ともからの電話であった。

「わかった、今から帰るから」

 そう言って電話を切り、松太郎は携帯をポケットに押し込んだ。

「おばあちゃんが待ってるから帰ろうか、大地」

「そうだね、すっかり長居してしまったからね」

 大地が湯呑(の)みと急須をお盆に乗せている間に、松太郎がファンヒーターのスイッチを切ってゆっくり立ち上がった。それに合わせて、大地はお盆を持って立ち、松太郎に続いて部屋を出て受付まで進んだ。

「ごちそうさまでした」

 お礼を言うと、お盆ごと受付に返し、出口に向かった。後ろから、「お気をつけて」という言葉が聞こえた。お茶を出してくれた女性であった。

「ありがとうございました」

 大地は振り返って、ていねいに頭を下げた。

 玄関の階段を下り、靴を履いてみろく殿前の石橋を渡った。玉砂利を踏みしめる音が心地よく、空気はヒンヤリしているものの、あまり寒さは感じなかった。

 松太郎が振り返り、みろく殿に向かって頭を下げた。大地もそれに続いた。

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 頭を上げた大地は、いつになくさわやかな気分になっていることに気づき、何だか不思議な気持ちであった。

(つづく)



※「おほもと」誌・平成23年12月号から転載

第25回「ー 節分こぼれ話 ー 節分のうどん店」は
次週4月20日〔金〕に公開します

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長

イラスト担当:にしじまさとしのプロフィールはこちら

西島 里司(大本メディア愛善宣教課主幹)

にしじま さとし:昭和36年兵庫県生まれnishijima.jpg
平成2年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、編集部長などを経て
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課主幹