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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第32回・み手代お取次ぎ




「大地君が言ったように、確かにご飯をよそう杓文字(しゃもじ)の形だね」

「そうですよね」

「杓文字は、別の言い方だと何というかね?」

「えっ、あ、なんだろう? たぶん…杓子(しゃくし)かな?」

「そう、杓子だね。じゃあ、杓文字と杓子の違いは知ってる?」

「え、同じじゃないんですか?」

「もちろん同じ意味なんだけど、杓文字は杓子の〝女房詞(にょうぼうことば)〟なのよ」

「女房詞?」

「昔、宮中に仕える上級女官を〝女房〟と言っていたんだけどね、室町時代ころから、その女官たちが女らしさをあらわした言葉を〝女房詞〟と言ったのよ。特に衣食住に関わるものを言い換えたそうよ。まあ隠語みたいなものだったのね」

「へえ〜、そんな言葉があるんですね」

「後世になると、そのことばが将軍家に仕える女性から、町家の女性にまで広がっていったそうで、たとえば、寿司は〝おすもじ〟、饅頭(まんじゅう)は〝おまん〟、浴衣(ゆかた)は〝ゆもじ〟というようにね。特に、杓文字のように、語尾に〝文字〟をつけるものは、〝文字ことば〟とも言うそうよ」

「おばあちゃん、詳しいですね」

「まあ、大地君より歳(とし)をとっているからね」

 音江は、ちゃめっ気たっぷりに笑いながら答えた。

「で、どうしてみ手代ってそんな杓子の形をしているんですか?」

「それが肝心のことだったね」

「はい」

 大地も笑いながら言った。

「それならみ手代の由来から話さないといけないね」

「お願いします」




「確か大正12年だったと思うけど、聖師さまが熊本県の小国(おぐに)という里にご巡教に行かれたそうなの。この小国には杖立(つえたて)温泉という湯治場(とうじば)があってね。平安時代の初めのころ、旅の途中で訪れた弘法大師・空海がここの温泉の効能にとっても感銘したそうよ。そして持っていた竹の杖(つえ)を立ててみたところ、節々から枝や葉が生えてきたので、それが杖立温泉の名前の由来になったそうなの」

「おもしろい謂(いわ)れですね」

「ほかにも、杖をついて湯治にやってくる病人や老人も、帰るころには元気になって、杖を忘れるという、温泉の霊験をたたえた由来もあるそうよ」

「なるほど、杖を立てて帰るということですね。じゃあ、聖師さまもこの杖立温泉をお気に召されたんでしょうね」

「そうだったと思うね。実際、とても良いところよ」

「おばあちゃんは、行かれたことあるんですか?」

「一度だけね。もう15年以上前になるかね、確か、聖師さまがご巡教になってから70周年の時だったね」

「そうですか」

「そのご巡教中に、聖師さまがご自身の誕生日を迎えられたので、その時に、小国名産の竹の杓子に歌をしたためられたということなの。

 杓子の表には、

 萬有(ばんゆう)(の)身魂(みたま)をすくう古(こ)の釈子(しゃくし)
    心のまゝに世人(よびと)す九(く)へよ

 というお歌、そして裏には、

 この杓子わが生れ多(た)る十二夜の
    月のかたち尓(に)よくも似し可南(かな)

 とご染筆して鎮魂(ちんこん)されたそうなの」

「その実物は今でもあるんですか?」

「最初のものかはわからないけど、小国の信者さんのところには、その当時のものが残っているのよ」

「へえ〜、すごいなあ」

「聖師さまは、その竹の杓子をたくさん持ち帰られ、信者さんへのお土産としてお下げになったそうで、それに同じように、

 万有の生命(いのち)をすくふ此(この)釈子
    心のままに世人救へよ

というお歌とご署名、母印が押されてあって、これを使って救いのご用にお仕えするようにご指示されたそうなの」

「それがみ手代の始まりなんですね。だから今でも杓子の形をしているわけですね」

「そういうことなの」




「あの〜、でもどうして母印を押されていたんですか?」

「それはね、聖師さまの母印は特別な形をしていて、押されたのを見たら誰でもわかるんだけど、su.jpg(ス)の形をしているの。でも、大地君、〝ス〟ってわかるかなあ?」

 大地は首を傾けて少し考え、思い出したように言った。

「あっ、それならわかります。綾部でおじいちゃんから神さまの歴史の話を聞いた時に教えてもらった、○に点のスの言霊のことですね」

「へえ〜、驚いた。そう、聖師さまが押された母印は、ちょうど○の中に点があるような形なのよ」

「一点のホチですね。すごいなあ」

「大地君、よく知ってたね、感心だね」

「いや〜、おじいちゃんから太古の神さまのご因縁をしっかり聞かせてもらいましたから」

 と少し照れくさそうに笑った。

 音江は、リビングに掛けてあった、聖師さま書の短冊を指さし、

「あのお作品の下に聖師さまの王仁というご署名と母印があるでしょ。あれがそうよ」

 と言った。

「あ、あれですか」

 と言いながら大地は短冊の前に進み寄り目をこらした。

「同じような短冊はおじいちゃんの家のご神前にもあったけど、あの時はこの母印がスの形をしているって気づかなかったなあ。おじいちゃん、教えてくれればよかったのに」

 そう言いながら、またソファに腰掛けた。




「それでみ手代のことだけどね」

 と、音江が話を戻した。

「最近ではあまり言わなくなったけど、杓子というのは、一家の主婦の座や権利を表しているのよ」

「へえ〜、そうなんですか?」

「もっと言うと、一家の経済上の権利の受け渡しの代表が杓子だったの。それで、一家の跡継ぎが結婚して嫁をもらうと、いずれ姑(しゅうとめ)がその権利を嫁に譲るわけね。姑が嫁に世帯をまかせることを、〝杓子を渡す〟といったものなの。だから杓子を渡した後は、飯を嫁に盛(も)らせたということ。命の元である食物を盛るために、主婦の権利として重要視されたのが杓子だったわけ」

「杓文字にそんな深〜い意味があったなんて、知らなかったなあ」

 大地は感心しながら言った。

「まあ、もっとも今、そんな気持ちで杓文字を持つ女性も少ないだろうけどね」

「そうですよね」




「私も、まったく知らなかったわ」

 そう言いながら、恵子が切り分けたリンゴを器に入れてリビングに入ってきた。

「杓文字にそんな謂れがあるなんてビックリよね、大地君」

 器とようじをテーブルに置きながら恵子が言った。大地もそれに答えた。

「まったくです。僕らの年代だったら知ってる女性はほとんどいないんじゃないですか」

「だよね」

 恵子はうなずきながら、台所に戻っていった。

 大地はお茶を飲んで、湯飲みを置いた。するとすかさず音江が大地の湯飲みにお茶を注ぎ足した。どうも音江は大地のお茶が減ると、すぐにつぎ足すようで、さっきからすぐに湯飲みのお茶が満たされている。おのずとお茶の色も薄くなってきていた。

 急須を置くと、音江は話を続けた。




「そんなことで、当初は杖立土産の杓子のように竹の杓子だったんだけど、その後は、白木の杓子になって、代々の教主さまが神霊をこめられてご染筆なさって、大本の宣伝使にお下げくださるようになったのよ。そして、心身の病の人に、このみ手代を通して神さまのみ光を受けておかげをいただいてもらう、そういうご用にお仕えさせていただくの。それが大本の宣伝使の務めでもあるのよ」

「だから、僕が子供のころ具合が悪くなった時に、おばあちゃんがみ手代お取次ぎをしてくれたんですね」

「そうよ。み手代は本当にありがたいのよ。それからね、み手代発祥地の杖立には、温泉街から少し山手に登ったところに〝み手代歌碑〟というのが建っていてね」

「へえ〜、み手代の歌碑もあるんですか。やっぱり杓文字の形をしているんですか?」

「さすがに杓文字の形じゃなかったね」

 音江は大地の質問に笑って答えながら、話を続けた。


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「私が杖立に行った時は、聖師さまのご巡教七十周年とあわせて、その歌碑の建立30周年の記念大祭が、歌碑の前で行われたのよ。歌碑の後ろには、幾筋もの水が流れ落ちる白糸の滝というのがあって、とてもすてきなところなの」

「そんなところにあるんですね」

「それでね、その大祭の後に、ご臨席になっていた四代教主さまが、ごあいさつでおっしゃったことが、私はとても印象に残っているのよ」

「どんなお話だったんですか?」

「最初に、手のひらからエネルギーが出ているということを科学的に証明しているテレビ番組のことをご紹介になったの。そして、手のひらから出るエネルギーを使って病気なおしをしていた人から聞かれたことを紹介されたの」

「どんなことですか」

「手のひらでするお取次ぎでは、相手の人はおかげをいただかれるけど、何人も相手していると、逆に自分の体力をすごく消耗してしまうそうです、っておっしゃってね。だから大本では、み手代というご神器をいただいているから、宣伝使は自分の体に負担をかけることなく、お取次ぎをさせていただけるから、とてもありがたいのですよ、と教えていただいたの」

「なるほど、そういうことがあるんですね」

 大地は感心したような表情でうなずいた。

(つづく)


※「みろくのよ」誌・平成24年8月号から転載

第33回「み教えに“明従」は
10月1日〔月〕に公開します

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長

イラスト担当:にしじまさとしのプロフィールはこちら

西島 里司(大本メディア愛善宣教課主幹)

にしじま さとし:昭和36年兵庫県生まれnishijima.jpg
平成2年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、編集部長などを経て
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課主幹