十曜の紋WEB用2.psd宗教法人大本headnametype.png

I トップページ I グローバル I お問合せ I
印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |


HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第34回・感謝と祈願と誓いと祓い





 音江は、大地と自分の湯呑みにお茶をつぎ足し、一口飲んでから話し出した。

「まず、朝拝で奏上する感謝祈願詞(みやびのことば)は、漢字を見ると、読んで字のごとく、〝感謝〟と〝祈願〟の〝詞(ことば)〟ということ。神さまに対して、感謝の気持ちをお伝えし、その後に〝お願い〟をすることになるのね」

 音江の話を聞きながら、大地は、〝おほもとのりと〟を開いて、感謝祈願詞を確かめながらうなずいた。

「なるほど、漢字からするとそういうことですね」

「ところで大地君、お願いごとをするとき、相手が人だったら、どうする?」

「どうする、というと?」

「ただ、お願いするだけかな?」

「お願いの内容と相手にもよるでしょうけど、何らかの援助をしてもらう場合だったら、ちゃんと状況を説明してからお願いすると思います」

「ということは、たとえば、〝私もこんな努力をしますからお願いします〟、とか、〝私もこんなふうになりたいので力を貸してください〟、っていうような頼み方になるということかね」

「そうそう、そうです」

「つまりは、一方的なお願いじゃ申し訳ないということでしょ」

「まあ…、そういうことになります…よねぇ」

 大地は首をかしげながら、歯切れの悪い口調で答えた。音江は大地の様子を見ながら、さらに続けた。

「人に対するお願いでさえそうであれば、ましてや神さまに対する祈願というのは、もっときちんとしたものだと思うの。だから、祈願は、言葉を代えるとお誓いでもあるんじゃないかと、私は思っているのよ」

 音江は、自分の言葉を確かめるような口調で言った。

 大地は無言でうなずいた。


norito.jpg



「そういう気持ちで祝詞に書かれている〝感謝〟と〝祈願〟をするのが、感謝祈願詞で、その『のりと』を毎朝神さまにあげるわけね。で、一日が終わり、振り返ってみると、朝お願いしお誓いしたような結果になっているか、ということが問題よね」

「そうですね」

「もちろん、その日によって結果は違うだろうけど、朝、〝こんな努力をしますからお願いします、お力を貸してください〟、って頼んでおきながら、達成できてなかったら、極端な言い方をすると、神さまとの契約違反ということになるわけ」

「え〜っ、契約違反ですか?」

「契約違反は、ちょっとおおげさかもしれないけど、神さまに対しては申し訳ないことでしょう」

「まあ…」

「だから結果的にはそうしたことが、罪や穢(けが)れになるわけなのよ」

「罪…、ですか?」

「神さまの目からみた罪というのは、ただ人間的な罪悪ということだけではなくて、悪いことを〝包み隠す〟ことや、〝積み上げ〟ていくことなのよ。それから一面では、良いことやできることをあえて実行しないで〝包み隠し〟ていることも、大きな罪なのよ」

「へぇ〜、そいうことも罪になるんですか?」

「そうなのよ。それから穢(けが)れというのは、気が枯れると書いて〝気枯(けが)れ〟というの。だから、物事に対して後ろ向きになったり、消極的になったりすることも穢れになるわけなの」

「そうなんですか。僕が思っていた罪や穢れとはちょっと違うんですね」

「そうかもしれないわね。それから、悪いことだと知っていて犯してしまうこともあるでしょうし、人には、知らず知らずに犯した罪や穢れもあるのよ。だからこそ、お祓(はら)いの祝詞(のりと)である『神言(かみごと)』を夕拝で奏上して、一日の罪や穢れを清めていただくの。これが朝夕拝での、『感謝祈願詞』と『神言』奏上の意味だと思っているのよ」

「つまり、自分のお願いや誓いを立てて、それでもできなかったことに対して、その罪穢れを清めていただくということですか?」

「そうね」




 大地はここでさらに疑問が深まり、少し考えて口を開いた。

「でも、その朝拝の時の感謝とお願いというのは、すでに〝のりと〟に書いてあることですよね」

「そうね」

「具体的にはどんなことなんですか?」

「そう、そこが問題で、一番大切なところよね」

「ですよね」

 二人は、そろってお茶を飲んだ。




「まず感謝の部分は、元の大神さまが大宇宙に天地を創造されて、この地球上の人類をはじめ、万物を生み育てておられる、その大きな恩恵に対して感謝を申し上げているのよ」

 音江の説明に、大地は〝おほもとのりと〟を見ながら言った。

「この最初の八行分のところの『恐(かしこ)み恐みも白(まを)す』、までのところということですね」

「そうよ、とっても広い意味での感謝なのね」

 音江は、両手を広げながら言った。

「あのー、元の大神さまというのは一点のゝ(ほち)から始まる神さまのことですよね」

「あら、大地君知ってるの?」

「綾部でおじいちゃんに詳しく聞きました。スの言霊や国祖・艮(うしとら)の金神さま、天地剖判(てんちぼうはん)のことなんかも教えてもらいました。あっ、でも全部おぼえているわけじゃないですよ」

 大地は笑いながら答えた。

「でも、それなら話が早いねえ」

 音江もうれしそうに言った。

「この天地をお造りになった元の大神さまは、私たち人間に神さまと同じ霊魂を与えてくださったのよ。それが一行目にある『ひと、ふた、み、よ、いつ…』という天(あま)の数歌(かずうた)といわれるものの最初の『ひと』でね、漢字では、『一霊四魂(いちれいしこん)』と書いてあるでしょ」

「あ、ホントだ。これで〝ひと〟と読むんですね」

「大宇宙の成り立ちのいちばん最初が『ひと』なのね」

「ということは、56億7千万年前の最初のころということですね」

「あらぁ、その通り、たいしたものね」

「いいえ、にわか仕込みですから」

 大地は少し照れながら言った。

「でもその〝一霊四魂〟を、神さまから私たち人間もわけていただいていて、それが人の魂なのよ」

「魂ですか」

「魂のことは霊魂といってね、実は一つの霊と四つの魂ということなのよ」

「だから一霊四魂なんですね」

「そう。それに〝人〟というのは、霊が止まるところだから〝霊止〟と書いて〝ひと〟というんだ、と教えられているの」

「なるほど、人にはそういう意味があるんですね。知らなかったなあ〜」

「人が生まれるときに、神さまから与えられる霊魂の本体を〝直霊魂(なおひのみたま)〟というのよ。ほら、次のページにあるでしょ」

 音江の言葉に、大地は〝おほもとのりと〟をめくった。

「あ、あった。『天津神(あまつかみ)より授けたまへる直霊魂(なおひのみたま)をして』。ここですね」

「そう、そしてこの直霊魂は、勇気、親しみ、愛情、智慧(ちえ)というような働きを持っていて、それが四魂といわれるものなのよ」

「なんだか奥が深いですね」

 大地は、かみしめるように言って、質問を続けた。




「で、おばあちゃん、肝心の祈願の部分ですけど、どこになるんですか?」

「そうだったね。感謝の部分が終わって次が祈願の部分になるんだけど、最初に誰に向かってお願いしているかというのが書いてあるでしょ」

「この『天地初発之時(あめつちなりいでしとき)より隠身(すみきり)たまひし大天主太神(もとつみおやすめおほかみ)の御前(みまえ)にまをさく』ってところですか」

「そう、天地の元の大神さまに申し上げるということね」

「なるほど」

「何を申し上げるかというと、その後に続く言葉になるの」

「ということは、『天(あめ)の下四方(したよも)の国に生出(なりい)でし青人草(あおひとぐさ)らの身魂(みたま)に天津神(あまつかみ)より授けたまへる直霊魂(なおひのみたま)をして、ますます光華明彩至善至直伊都能売魂(ひかりうるはしきいづのめのみたま)と成さしめたまへ』の部分ですか?」

「そうなの。『天の下四方の国』は、地球上のすべての国ということ。『青人草』は、草が生い茂る様子にたとえて、人が増えてゆくことを表していて、私たちを含めた地球上のすべての人々に、ということになるの。そこにいただいた直霊魂を『ますます光華明彩至善至直(ひかりうるはしき)』『伊都能売魂(いづのめのみたま)』と成らせてください、というお願いなのよ」

「何だか難しいですね」

「直霊魂の四つの働き、四魂(しこん)の働きが十分に発揮された完全な状態を『伊都能売魂』というの」

「……?」

「自分の霊魂も、神さまにより近い霊魂に成らせてください、そう成るように努力します、というお願い、お誓いということになるかな」

「え〜、そんなたいへんな誓いを立てているわけですか? こりゃあ、うかつにこの『のりと』はあげられないなあ」

「大地君、そんなこと言っちゃだめよ。だって、この伊都能売魂になることが、この世に生まれた人の使命でもあり、大きな意味では、人生の目的でもあるのよ」

「でも、言葉を代えて言うと、神さまと同じになるというようなものじゃないですか」

「そうね」

「いや〜、それはかなりむずかしいですよ」

 大地は、顔の前で右手を細かく振りながら、尻込みするように体を後ろへそらしていた。 

(つづく)

※「みろくのよ」誌・平成24年10月号から転載

第35回「一霊四魂」は
12月1日〔木〕に公開します

next.pngnext.png

nextnext.pngnextnext.png

この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長