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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第37回・恐るべきは執着心



「それは、何ですか?」

 大地は、聞き返した。

「聖師さまのお示しに

  天地(あめつち)の神の宮居(みやゐ)と生まれたる
    人の身魂(みたま)ぞ清くもたまし

というお歌があるんだけどね、このお歌からすると、人の身魂というのは、天地の神さまのお宮となるべくして生まれたものであって、それをいつまでも清く持ち続けましょう、ということなの」

「あの〜、お歌はいいんですが、一回聞いたくらいでは、僕、覚えられないんですけど…」

「あっ、それはそうね。じゃあ」

 そう言って音江は、台所の恵子に声をかけ、鉛筆と新聞広告の裏紙を利用したメモ用紙を持ってきてもらった。

「はい、どうぞ」

 恵子が音江に手渡した。

「ありがとう」

 音江は、メモ用紙にさっき詠んだ道歌を書き記し、それを大地に見せた。

「こういうお歌なのよ」

 大地は、メモ用紙に目をやった。

「やっぱり聞くだけじゃなくて、目で見た方がピンときますね」

「最後の『もたまし』、っていうのは、〝持つべきでしょう〟、という意味だから、身魂を汚さないように清くもつべきでしょう、ということだと思うのね」

「なるほど。清く保てなかった場合に、身魂が何によって汚されるのか、ということになるんですね」

「そうね」

「で、それは何ですか?」

 大地はたたみかけるように聞いた。




「大地君は何だと思う?」

「うわ、おじいちゃんといっしょの逆質問だ」

「意地悪だったかね?」

「あ、いや、そんなことはないですが…。〝天授之至霊(もとつみたま)〟の魂を汚すものですから、やっぱり〝悪いこと〟かなあ?」

「〝悪いこと〟、というと?」

「たぶん、おじいちゃんが言ってた罪とか穢(けが)れとかじゃないかと思うんですが…」

「やっぱり大地君は察しがいいねえ」

 と言いながら、大地に見せていたメモ用紙をとり、さっきの歌の横に、もう一首道歌を書いた。

  人々の心に澄める月かげを
    かくすは欲と罪の雲なり

「これがその答えね」

 大地は、メモを見ながら、その歌を声に出して読んだ。

「これって、どういう意味ですか?」

 大地は首をかしげながら言った。

「月かげというのは、漢字ではこうかくけど」

 と言いながら、「月影」と書いた。

「月影は、月の光、月の形や姿のことをいうのよ」

「月の影じゃなくて、月の光や形ですか」

「そう。〝澄める〟は、清らかに澄んでいるというのと、住んでいる、心にある、という両方の意味があると思うんだけど、要は心にある神さまの光ということね。これを隠してしまう。〝隠す〟は、葬るとか偽るという意味もあるのよ。で、隠してしまうその〝雲〟は何なのかというと、人の欲と罪だ、とおっしゃってるのよ」

「あー、なるほど、このお歌には、そんな深い意味があるんですね」

 と言ってから、大地はしばらく考えてさらに質問した。

「それじゃあ、人間がその欲や罪を作ってしまう原因は、何なんですか?」




「そうね。聖師さまは人が欲と罪に迷う最大の原因について、それは〝執着心〟だと言っておられるのよ」

「執着心ですか」

「そう、霊界物語の中でもいたるところで執着心の恐ろしさを戒めておられるんだけど、これが一番の原因のようね」

「執着心かあー。でも、執着心のない人なんているのかなあ?」

 大地は首をひねりながら言った。

「この現実の世界、物質の世界で生きている間は、みんな何らかの執着心はあるものよ。まあ、私みたいな歳になってくると、だんだん薄くなってくるけど、大地君のような若者なら、たくさんあるかもね」

「は、はい」

「おや、正直ね」

「あの〜、その執着心をなくすにはどうしたらいいんでしょうか?」

「そうね、惟神(かんながら)かなぁ」

 音江は即答した。

「惟神?」

「つまり、神さまに、神さまのみ教えに、おまかせする、ということね」

「神さまにおまかせする、ですか? 僕にはまだピンとこないかもしれません」

「そりゃあそうよ、今から〝わかりました〟って言われたら、ビックリしちゃうわよ。ただ、そのことを知っていれば、何かのときに役にたつかもね」

「はい、覚えておきます」

「はい、いい心がけです」

「で、具体的にはどうしたらいいんですか?」 

 大地は、笑顔で質問を続けた。

「そうね、この『おほもとのりと』を奏上することがいちばんね。もちろん意味も理解しながらね」

「〝明従(めいじゅう)〟ですね」

「そう、そういうこと」

「あっ、だから今、感謝祈願詞(みやびのことば)の意味を教えてもらっているんですものね」

「そうだったね」

 二人は笑いながら言った。




「それじゃあ、続きね」

 と言いながら、音江は『おほもとのりと』を読んで説明を続けた。

『すべての事業(なりはひ)をなすにも、大御神(おほみかみ)の恩頼(みやまのふゆ)を幸(さき)はへたまひて』

「恩頼というのは、恩恵とかご加護ということだから、どんな事をするにも、まず神さまのご守護をいただいて、という意味ね」

「はい」

『善事正行(よごとまさわざ)には荒魂(あらみたま)の勇(いさ)みを振起(ふりおこ)し、ますます向進発展完成(すすみひらきまつたき)の域(さかひ)に立到(たちいた)らしめたまへ。朝な夕な神祇(かみたち)を敬(ゐやま)ひ、誠の道に違(たが)ふことなく、天地(あめつち)の御魂(みたま)たる義理責任(つとめ)を完(まつた)うし、あまねく世の人と親しみ交(まじ)こり、人慾(わたくし)のために争ふことを恥(はじ)らひ』

 音江は『おほもとのりと』をここまで読み、説明を始めた。

「この部分からは、さっき話した一霊四魂の働きのことをより詳しく説明されているところなのよ」

「そうなんですか」

 大地は、音江が読んだところに目を落とした。

「四魂にはそれぞれ相反する二つの働きがあって、しかもそれを制御する力が備わっているのよ。最初の荒魂だけど、善い方に働いたら〝勇む〟になって、それが行き過ぎって悪い方に働いたら〝争い〟になるの。そしてそれを制御するブレーキの役目が〝恥る〟という感情なのよ」

「へえ〜」

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「ここの最初のところは、善いと思うことは、荒魂の勇気を振り起こして、より善い方向へ向かって発展・完成させてください。そのためにも、朝夕、神さまを拝み、道からはずれないようにして、神さまからいただいた身魂の本来の務めを全うさせてください。世の中の人々と親しく交わって、恥の心をもって自分の慾のために争うことがないようにしてください、ということが大まかな意味になると思うのよ」

「なるほど、この一節の中に、荒魂、勇、争、恥、って全部書いてありますね」

「ね、すごいでしょ。で、次が和魂(にぎみたま)よ」

『和魂の親みによりて人々を悪(にく)まず、改言改過(あやまちをくひ)、悪言暴語(ののしること)なく、善言美詞(みやび)の神嘉言(かむよごと)をもつて神人(かみがみ)を和(なご)め、天地(あめつち)に代(かわ)るの勲功(いさをし)を堅磐(かきは)に常磐(ときは)に建て』

「和魂本来の働きは〝親み〟で、それが行き過ぎたり方向を間違うと〝悪〟になってしまうの。その時のブレーキ役が後悔の悔という字で、〝悔(く)いる〟という働きなのね」

 と言う音江の言葉を聞きながら、大地は『おほもとのりと』を少し引き寄せて、首をかしげて言った。

「あの〜、その悪と悔やむというのはどこにありますか?」

「悪は、言暴語の最初にあるでしょ」

「あ、ホントだ」

「悔やむは、単語そのものはないけど、同じ意味のことが書いてあってね。それが…」

 と言いながら、『改言改過(あやまちをくひ)』のところを指さし、

「ふりがなで、〝くひ〟と書いてあるでしょ」

「あ、なるほど」

「〝悔ゆる〟というのは、悔い改めるということで、くよくよ後悔するだけじゃなくて、より積極的に改めていくことなのね」

「悔い改めるかあー」

「人は、どうしても自分の物差しで人を判断してしまうものなのね。それで計れないときは、自分を正当化しようと、知らず知らずに相手を悪く思い、それが悪言暴語になってしまいがちなのよね」

「そう…ですね」

「そんなときに、悔い改めて、悪い言葉を使わず、できるだけ善い言葉を使うように心がけないといけないの。そうして神さまも人も和ませ、神さまに代わって、正しく永遠に勲功をたてさせてください、ってことかねぇ」

「ん〜、なんか深いなあ〜」

「そうよね。で、次が幸魂ね」

(つづく)

※「みろくのよ」誌・平成25年1月号から転載

第38回「幸魂(さちみたま)の愛(めぐみ)深く」は
3月1日〔金〕に公開します

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長