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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第38回・幸魂の愛深く



「幸魂は…っと、あ、ここですね」

 大地はそう言って、『おほもとのりと』の続きを読み始めた。

『幸魂の愛深く、天地(あめつち)の間(うち)に生(いき)とし生(い)ける万物(もの)を損(そこな)ひ破(やぶ)ることなく、生成化育(かむながら)の大道(おほみち)を畏(かしこ)み』

「幸魂についても、荒魂(あらみたま)や和魂(にぎみたま)と同じように本来の働きと、逆に働いた場合、それからその時のブレーキ役が書かれているんですか?」

「そう、ちゃんと書かれているのよ。幸魂の本来の働きは、〝愛〟。それが行き過ぎたり方向を間違えると〝逆らう〟になってしまって、その時にブレーキ役をするのが〝畏む〟という働きなのよ」

 音江の説明を聞いた大地は、『のりと』を見ながら、少し首を横に傾けて考える様子をしながら訊(たず)ねた。

「あの〜、ここには〝愛〟と〝畏む〟の字はあるんですが、〝逆らう〟という漢字は書いてないようなんですけど…?」

「それはね、〝損ひ破る〟という言葉で置き換えてあるみたいだねぇ。この世界に生存する生物を〝損ひ破る〟ということは、みだりに傷つけたり殺したりして、生命(いのち)を保とうとする万物の本質に〝逆らう〟ことだからね。」

「あ…、そうなんですね」

「幸魂の本来の働きである愛は、『のりと』の中では、〝めぐみ〟と読ませてあるし、ほかに〝いつくしみ〟とも読むでしょ。大地君は、〝愛〟という言葉を聞いて何を思い出すかなあ?」

「そうですね…。男女の恋愛とか、親子の愛とかですかね」

「そうね、やっぱり人が人を〝愛する〟ということを一番に考えるよね。でもね、愛するということは、人と人との関係がうまくいっているときはいいんだけど、いったん仲が悪くなったり、関係にヒビが入ったりすると、〝かわいさ余って憎さ百倍〟という諺(ことわざ)があるくらい、お互いに憎み合うようになったりすることがあるものなのよね」

「そう言えば、サスペンスドラマとかでよくあるパターンですね」

「そうね、お互いの心が離れて、そのうちに顔を見るのも嫌になったり、相手のすることなすことに対して、ことごとく逆らったりするようになるものよね。そうなるとなかなか元のような関係に戻すのは難しくなるの」

「でしょうね」

「そんな関係を、修復するためには、できるだけ早い時期に、〝畏(おそ)れる〟という気持ちに帰ることが必要になってくるのね」

「〝畏れる〟というのは、恐(こわ)い、恐(おそ)ろしい、と思うことですか?」

「いいえ、言葉の意味からはそうとも受け取れるんだけど、実は〝畏れ慎む〟ということで、〝おそれ多くつつしむ〟ということなの。大地君は、〝畏敬〟という言葉はわかるかな?」

「はい、〝畏敬の念〟とか言いますよね」

「そう、畏れるということは、相手を敬うという気持ちになる、ということでもあるのね」

「そうか、人間関係では、相手を敬うという気持ちがなくなると、愛するということができなくなる、ということですね」

「そういうこと。でもね、大地君」

 音江は少し身を乗り出して言った。

「何ですか?」

「この『のりと』の幸魂の部分は、もっともっと深い意味があるのよ。よく見て!」

 そう言いながら、音江は大地が読んだ部分を指さした。




「ここでの愛は、『天地の間(うち)に生とし生ける万物(もの)』に対する愛を示してあるのよ。つまりこの世に生命を受けている万物、すべてのもの、言葉を代えると『人群万類(じんぐんばんるい)』というものに対する大きな愛のことなのね」

 そう言いながら、音江はメモ用紙に『人群万類』と書いた。

「なるほど、人間を始め、生きとし生ける物すべてということですね」

「そう、だからものすごく大きな愛ということになるよね」

「そんな愛の心を持つことは、僕には無理ですよ。だって、蚊一匹だって殺せないということでしょ。いや〜、無理、無理」

 大地は顔の前で手を振りながらそう言った。

「そうよね。そういう意味では、人間は知らず知らずに、愛に逆らう行為をしているものなのよね。だから本当の大きな愛を持てるのは、万物を造られた神さまだけということがわかるのよ。そうした神さまの愛のことを聖師さまは〝平等愛〟と示されているのよ。すべての生きとし生ける物を平等に愛されるということね」

「〝平等愛〟ですか。これは簡単な言葉のようですけど、何だかものすごく重い意味があるように感じますが…」

「そうね。信仰をしている人が、〝私は神さまを愛しています〟、なんて言うことがあるけど、私はそれはちょっと違うなあ、って思うのよ。気持ちはわかるけど、愛という言葉の使い方を間違っているんじゃないかなと思うのね」

「というと?」

「愛するというのは、親が子を愛するというように、上から下へ向かったもので、〝神さまが人を愛される〟っていうのが本来なのよ」

 音江は言葉を噛(か)みしめるように言った。

「じゃあ、神さまを信仰している人はどう言ったらいいんですか?」

 大地が訊(き)いた。

「そうね。神さまを〝恋い慕う〟、と言った方がいいんじゃないかなあ。神さまが人を愛し、人が神さまを恋い慕う。だから、〝信仰は恋愛の心〟という聖師さまのお示しがあるのよね」

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「あっ、なるほど」

 大地は納得したようにうなずきながら言った。

「大地君も、早く恋い慕う人ができたらいいねぇ。あ…、それとも、もういるのかな?」

 音江はニコニコしながら訊ねた。

「い、いえ、いませんよ。さあ、おばあちゃん、次いきましょう!」

 大地はあわてて『おほもとのりと』を手にとり、続きを読み始めた。

『奇魂(くしみたま)の智(ひかり)によりて、異端邪説(まがのをしへ)の真理(ことわり)に狂(くる)へることを覚悟(さと)るべく』

「次は、奇魂ですね」

「そうね。奇魂の本来の働きは、〝智〟。ここでは〝ひかり〟と読ませてあるね。それが行き過ぎたり方向を間違えると〝狂〟になってしまって、その時にブレーキ役をするのが〝覚(さと)る〟という働きなのよ」

「智の働きってどんなことですか?」

 大地が訊いた。

「今の世の中、殺人や強盗事件、誘拐や詐欺など、いろんな悪事がはびこっているでしょ。さも善いことのように見せかけて、悪いことを働く人間もたくさんいるよね。そうした罠や誘いにうっかり乗せられないようにするためには、奇魂の智が必要なのよ。智をしっかり働かせて、真理に反して狂っている異端邪説をしっかり覚りなさい、っていうことね」

「最近流行(はや)っているオレオレ詐欺なんかもそうですよね」

「そうよ。詐欺にひっかからないようにするには、奇魂の智をしっかり磨くことが大切なのね。以前、家に消化器の斡旋(あっせん)に来た人がいたの。〝消防署の方から来ました〟、って言ってね」

「消防署員になりすましてたってことですか?」

「でもね、消防署から来ました、とは言ってないのよ。消防署の方から来ました、ってね」

「あ、なるほど、消防署がある方角から来た、ということですね」

「年寄りの中には、消防署だったら大丈夫だろうと、高いお金を払って買ってしまった人もあったのよ」

「おばあちゃんは大丈夫だったんですか?」

「私も年寄りだけど、そこはそれ、奇魂の智慧(ちえ)を発揮して、きっぱり断ったわよ」

 と得意そうに笑いながら言った。

「よかったですね」

 大地も笑いながら言って、質問を続けた。

「その智慧というのは、正しい知識のことなんですね」

「ちょっと違うかな!」

 と言いながら、音江はメモ用紙に『智慧』と『知恵』と書いて、最初の方を指さして大地に見せた。

「なるほど、こんな字なんですね」

「辞書だとどちらも同じような意味で載っているけど、こちらの智慧は、宗教的叡智(えいち)という意味合いが近くて、より本来的な常識でもあると思うの」

「常識…? 常識というのは、普通一般的なあの常識ですか?」

「普通の常識というのは、人によって基準が違っている場合があるよね。聖師さまの道歌のなかで、常識という言葉が出てるのがこのお歌なの」

 と、言葉が終わらないうちに、音江はまたメモ用紙を手元に寄せて道歌を一首書いた。

 常識は神の誠の道まなび
  得たる智慧より何ものもなし

「時代や場所に左右されない本当の常識というのは、神さまの教えを学んで得る智慧以外にはないということ。後天的な知識や知恵じゃなくて、智慧は、人が元々神さまからいただいているものなの。そこに神さまの光をいただいて本来の力を発揮できるというわけ。智慧の智は、日(ひ)を知る、日というのは霊のことでもあるし、神さまのことでもあるのよ」

「何となくわかったような、わからないような…?。でも、これから何かあった時は、〝この問題は奇魂を働かせて覚るとどういうことかなあ?〟と、考えるようにします」

 大地は姿勢を正して言った。

「そうね。それが第一歩ね」

 音江はうれしそうに大地の顔を見ていた。

「さあ、次がいよいよ直日(なおひ)の御霊(みたま)よ」

(つづく)

※「みろくのよ」誌・平成25年2月号から転載

第39回「鎮魂帰神(みたましづめ)の神術(みわざ)によりて」は
4月1日〔月〕に公開します

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長