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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第40回・敬けんな姿で深い祈りを



 話を熱心に聴(き)く大地を、音江は自分の孫を見るような目で見ていた。そこへ恵子が入ってきた。

「大地君は、ホントえらいねぇー」

「えっ、何がですか?」

「だって、おばあちゃんの話をしっかり聴いているんだものね」

「あー、でもおもしろいですよ」

「だから、感心してるのよ」

 恵子が手にしているお盆の上には、皿に盛った〝おやき〟が乗っていて、湯気が立っている。

「今、蒸したからどうぞ」

 そう言いながら恵子がテーブルにおやきを置いた。

「もうおかまいなく」

 大地が遠慮気味に言った。

「まあ、食べなさい、若いんだから」

 音江が勧めた。

「はい、ありがとうございます」

 大地はおやきを一つつまんで、半分に割った。

「粒あんのおやきですね。いただきます」

「へぇ、どうぞ」

「ん〜っ、おいしい!」

「そうかい、そりゃあ良かった。じゃあ私も…」

 そう言いながら音江も一つつまんだ。

「こりゃあ、カボチャだね」

「カボチャもあるんですね」

「最近のおやきは、種類が増えたのよ。昔、家で作る時は、粒あんのほかに、野沢菜と切り干しダイコン、丸ナスだったけどね」

 恵子が説明した。近くにおやきの専門店もできたらしい。ひとしきりおやきの話をしたあと、音江が言った。

「じゃあ、続きを話そうかねぇ」

「はい。え〜と、ここからですね」

 お茶を飲んでいた大地は、湯呑(ゆの)みを置くと、『おほもとのりと』を手にして、読み始めた。


『身に触(ふ)るる八十(やそ)の汚穢(けがれ)も、心に思ふ千々(ちぢ)の迷(まよひ)も、祓(はら)ひに祓ひ退(やら)ひに退ひ、須弥仙(みせん)の神山(みやま)の静けきがごとく、和知川(わちがわ)の流(ながれ)の清きがごとく動くことなく変(かは)ることなく、息長(おきなが)く偉大(たくまし)くあらしめたまひ』


「さっき、一霊四魂(いちれいしこん)と五情(ごじょう)の働きで、私たちの心を練(ね)り鍛えさせてください、ってお願いしたところまでいったでしょ」

「はい、そうでした」

「でも、そうお願いしたけども、私たちは現実の世界に身を置いているわけだから、知らず知らずにいろいろな穢(けが)れや迷いがわき起こってくるのよね」

「人間ですからね」

「それを祓って、静かで神々しい弥仙山(みせんざん)のように、それから和知川の清流のように、清らかで動くことなく、変わることなく、いつまでも続くようにお願いします、というのがこの部分の大まかな意味なのよ」

「あのぉ〜、和知川は節分の時に人型を流した綾部を流れる川だと思うんですが、その前の〝須弥仙(みせん)の神山(みやま)〟、今、弥仙山といわれましたけど、それはどこの山ですか?」

「この山はね、綾部の梅松苑からも見えている山なんだけど、大本にとってゆかりの深い霊山で、弥仙山(みせんざん)という山なの。地元では丹波富士とも呼ばれていて、きれいな形をした山なのよ。『おほもとのりと』では、弥仙山と和知川の様子で、清らかさをたとえてあるのよ」

「そういうことですか、わかりました」

「それじゃあ、その続きを読んでみて」


『世の長人(ながひと)世の遠人(とほひと)と健全(まめまめ)しく、親子、夫婦(めおと)、同胞(はらから)、朋友(ともがき)相睦(あひむつ)びつつ』


「この最初のところの、『世の長人』と『世の遠人』の二つの言葉だけど、どちらも〝長寿の人〟という意味なのよ。『健全(まめまめ)しく』は、〝健康で〟ということだから、あわせて健康で長生きをして、ということね。そのあとは、だいたいわかるでしょ」

「親子、夫婦、仲間や友達同士仲良く、ということですね」

「そうね、当たり前のことをあえて書いてあるということは、今の世の中、そうしたことも危うくなっているのかねぇ」

「そうなのかもしれませんね」

「さあ、その続きね」


『天(あめ)の下(した)公共(おほやけ)のため、美(うるは)しき人の鏡として、太(いみ)じき功績(いさを)を顕(あらは)し、天地(すめかみ)の神子(みこ)と生(うま)れ出(い)でたる其(その)本分(つとめ)を尽(つく)さしめたまへ』


「漢字を見たら、だいたいの意味はわかると思うけど、ここは『感謝祈願詞(みやびのことば)』の結論のようなところじゃないかと思うのよ」

「なるほど、そうなんですね」

「世のため人のために、人の模範となって、人としての立派な功績をおさめて、神さまの子としてこの世に生を受けた本分、目的を果たさせてください、ということね。つまり、人生の意義や目的を達成させてください、というとても大切なお願いね」

「人生の意義と目的っていうと?」

「神さまの理想とされる世界、大本では〝みろくの世〟と言っているけど、地上天国。これを建設することが、人生の意義であるし大きな目的なのよ」

「そうなんですか?」

 大地は少し首をかしげた。

「なんだかピンときてないみたいだけど、大地君もおいおいわかってくるわよ」

「はい、勉強します」

 大地は、少し笑いながら言った。




「あっ、でも、これが結論なら、その後(あと)の部分はどういうことですか」

「それはね、今まで説明してきたことを誰にお願いするかということ。続きに、『すべての感謝(ゐやひ)と祈願(いのり)は』とあるけど、それが、その前の部分をさすわけね」

「なるほど、これまでの感謝と祈願の内容全部をお願いする対象が、この後登場するわけですね」

「そうよ、さて、それは誰かな?」

 音江の質問を受けて、大地はその後の 『のりと』を何度か読み返した。




「あっ、これかな?」

「どれどれ」

「綾部でおじいちゃんに聞いた神さまの名前があったんで」

「どこ?」

「国常立大神(くにとこたちのおほかみ)、豊雲野大神(とよくもぬのおほかみ)、じゃないですか」

 大地は、『のりと』のその部分を指さして言った。

「そうそう」

「この大地を作られた、国祖(こくそ)の神さまとその妻神(つまがみ)ですよね」

「まあ、大地君、たいしたものね」

「いやあ、この間おじいちゃんに聞いたばかりですから」

 大地は照れながら頭をかいた。

「『国常立大神、豊雲野大神』の直前が、『国の大御祖(おほみおや)』ってあるけど、これが大地君が言った〝国祖〟と同じことね。そして、その前がそれにかかる修飾語になるわけね。ちょっと読んでみて。

「はい」


『千座(ちくら)の置戸(おきど)を負(お)ひて、玉垣(たまがき)の内津御国(うちつみくに)の秀津間(ほつま)の国の海中(わだなか)の、沓島(おもと)神島(うらと)の無人島(しまじま)に神退(かむやら)ひに退はれ、天津罪(あまつつみ)、国津罪(くにつつみ)、ここたくの罪科(つみ)を祓ひたまひし、現世(うつしよ)幽界(かくりよ)の守神(まもりがみ)なる…』


「まず、『千座の置戸を負ひて』というのは、神々や人々が積み重ねてきた罪を代わって背負うこと。『神退ひに退はれ』は追い出されること、退隠(たいいん)させられることね」

 音江は、大地が手にした『のりと』の文字を指さしながら説明を続けた。

「つまり、すべての罪を引き受けられて、沓島(めしま)と神島(かみしま)に追い退われたこと。そして、この世とあの世すべての罪穢れをお祓いして、ご守護くださる国祖とその妻神ということね。この部分は、初めて『のりと』を読む人だったら、たぶんわからない内容かもしれないけど、大地君は松太郎さんに、国祖の神さまのご退隠のことを聞いているっていうから、だいたいわかるよね」

「まあ、何となくですけど…」

 大地はうなずきながら言った。

「その沓島・神島が無人島だというのはわかりますが、それはどこにある島ですか?」

「『玉垣の内津御国の秀津間の国の海中の…』というのは日本の海上、ということね」

「日本のどこですか?」

「沓島が、綾部から見て艮(うしとら)、東北の方角にある京都府舞鶴市沖で、若狭湾(わかさわん)の海上にある孤島よ。それから、神島は、綾部の坤(ひつじさる)、西南の方角で、兵庫県の高砂市沖にある島なのよ」

「艮と坤ということは、沓島に国常立大神が退隠されて、神島に豊雲野大神が退隠されたということですね」

「そう、察しがいいね、大地君」

「その後の『のりと』ですが…」

 そう言って大地が続きを読んだ。


『また伊都(いづ)の御魂(みたま)、美都(みづ)の御魂の御名(みな)に幸(さき)はへたまひて聞(きこ)しめし、相(あい)うづなひたまひ』


「『国常立大神、豊雲野大神』の後に、また別の名前が出てきますけど、これは何ですか?」

「『伊都の御魂、美都の御魂』というのは、国常立大神さまと豊雲野大神さまの二柱の神さまのことだけど、この世に現れられた時、国常立大神は、厳格な縦役の伊都の御魂の神さま、つまり開祖さまを通して出現されたの。そして、豊雲野大神は、救いの美都の御魂の神さま、つまり聖師さまのお姿でお生まれになって、私たちに尊い教えを伝えてくださったわけ。だからこのみ名によって、ご守護とみ救いにあずかれますように、そして幸多くあることをどうぞお聞きとどけください、ということなのよ。そして…」

 音江が『のりと』の最後の部分を読んだ。


『夜(よ)の守り日の守りに守り幸はへたまへと、鹿児自物(かごじもの)膝折伏(ひざおりふ)せ宇自物(うじもの)頸根突抜(うなねつきぬ)きて、恐(かしこ)み恐みも祈願奉(こひのみまつ)らくと白(まを)す』


「最後は、大神さまに対し、精いっぱいの敬けんな姿勢と心で深い祈りをささげます、という意味なんだけど、その姿勢が二つのたとえで書かれているのよ」

「二つですか」

「『鹿児自物膝折伏せ』は、子鹿が前足を折り曲げて行儀良く座っている姿、『宇自物頸根突抜きて』は、鵜飼(うかい)で使う鵜が鮎などを捕らえようとして水中に深く首を突き刺している姿を表現してあるのね」

大地カット鵜飼.jpg大地カット鹿.psd


「あっ、なるほど子鹿と鵜ですか。それほど敬けんな姿で、っていうことなんですね」

 大地は感心したような表情で大きくうなずいた。

(つづく)

※「みろくのよ」誌・平成25年4月号から転載

第41回「晴れやかな心」は
6月1日〔土〕に公開します




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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長