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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第44回・愛善と愛悪



 しばらくして、片付けをすませた長野主会の役員とともに、高村特派がロビーの方へ歩いてきた。高村は、主会長はじめ役員と挨拶(あいさつ)を交わしたあと、大地たちが座っているソファの方へやって来た。3人は立ち上がって高村に会釈(えしゃく)した。

「先生、もうすみましたか?」

 恵子が訊(たず)ねた。

「すみません、お待たせしました」

「どうぞお掛けください」

「はい、ありがとうございます。会場の大広間は3時半までの借用だそうで、急いで片付けてきました」

 高村が座りながら言った。

「ほかのご用事があるんじゃないですか?」

 そう音江が訊(き)くと、高村は笑顔で答えた。

「いえ、あと2日ほどは長野にいますので、大丈夫ですよ」

「そうですか、先生もお忙しいですね」

「いや〜、ありがたいことです。それにしても今日は、最終的にちょうど50人の方が来てくださったそうですよ。そのうち、一般の方が11人いらしたそうですね」

「いつもより大勢来ていただいたようで、びっくりしました」

「主会の皆さんが、お声かけをがんばられたのでしょうね。ほんと、ありがたいことでした」

 そう言いながら、高村は大地の方へ視線を向けた。

「雨宮君だったね。さて、質問をうかがいましょうか」

「はい、よろしくお願いします」

 大地は頭を下げた。




「〝愛と信(しん)〟が大切なことについてだったね」

「はい」

「ということは、正守護神と副守護神のところの話かな?」

「はい、そうです」

 大地はそう言いながら、今日の講座前に配られた資料袋の中から講座レジュメを取りだし、そこに書き込んだメモを見ながら話を続けた。

「人の霊魂は精霊と言って、〝妙なる〟のことだと、初めて知りました。で、その精霊は、ふだん〝自分〟とか〝自分の心〟と認識している〝われなる精霊〟であって、それと肉体とを〝この世〟で守るために、正守護神と副守護神がついているということでしたね」

「良く理解してくれているね。その通りだよ。もちろん、便宜上(べんぎじょう)わかりやすいようにお話ししているけど、精霊の働きは実際、単純なものではないと思うんだよ。人の心って複雑で、しょっちゅうコロコロ変わるものだからね」

「そうですね。僕の心なんかいつもコロコロ転がり回ってますね」

「みんな同じだよ」

 高村は、やさしく答えた。となりに座っている音江と恵子も頷(うなず)いていた。

「〝愛〟と〝信〟は、正守護神と副守護神を通じて〝われなる精霊〟に働きかけるということでしたが、その際に、正守護神の愛は善(よ)い愛で、信は真(まこと)の信。反対に、副守護神の愛は悪い愛で、信は偽(いつわ)りの信、ということでしたね。この部分が分かったような分からないような感じだったんです」

 大地はすまなそうに言った。

「いや〜、それは申し訳ないなあ、私の説明不足だったんだろうね。じゃあ、もう少し順を追ってお話しするね。まず、人の肉体と霊魂の関係だけど、そのイメージを例(たと)え話で言うと、ちょうど重くて大きな着ぐるみを着て動き回っているようなものと思ってもらうといいかな。人が肉体の死を迎えると、その重くて不便な肉体を脱いで、本来の魂だけになって、あの世で自由に行動できる状態になれるんだね」

「なるほど、今、ゆるキャラブームで、あちこちで着ぐるみのキャラクターが登場してますから、わかりやすい例えですね」

 と大地が言うと、

「ひこにゃんとか、くまモンね」

 横から恵子が言葉をはさんだ。

「そうですね、個性的でおもしろいキャラクターがたくさんあるでしょ。人間の肉体も同じように、それぞれの特性がありますからね」

 高村が返した。

「なるほど、そうですね」

 大地が相づちを打った。




「それからね…」

 と高村は大地の方を見て、別の例えを話し始めた。

「精霊と守護神と肉体、それと人生との関係を例えてみるとね…」

「はい」

「人生はよく旅に例えられるけど、人はオギャーと生まれてきてから、車という肉体に乗り込んでハンドルを握り、人生というドライブをするようなものなんだよ。ゴールは、もちろん死ということになるんだね。そして、ゴールテープを切ると車を降りて自由に歩き回ることができるんだけど、それまではずっと車を運転しているんだね」

「長いドライブですね」

「ハンドルを握って運転しているのが、〝私〟の本体である〝われなる精霊〟なんだよ」

「つまり〝自分の心〟がドライバーということなんですね」

「そして助手席に乗っているのが、正守護神で、ドライブするための正しい道案内をしてくれる役なんだよ」

「ナビゲーターということですね」

「そういうことだね。ところがもう一人、後部座席に乗っているのがいて、それが副守護神なんだ。これがドライブをサボらせたり、危ない方向へ連れていこうとすることが多々あるんだね」


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「悪い奴(やつ)ですね」

「そう、でもね、これがいなければ、〝私〟は、ただひたすら運転してしまうのでたいへんなことになるんだよ。たまには休憩したり、ガソリンも入れないと車自体が走れなくなってしまうよね。だから、副守護神の最低限の誘導は、絶対必要なんだよ」

「〝副守護神 食いたい寝たいが 関の山〟ってお歌がありましたね」

 音江が言った。

「町村さん、尊師さまのお歌ですね」

「へぇ〜、おもしろいですね」

 大地が感心したように言った。




「それでドライバーは、適度に後ろの同乗者の言うことを聞きながら、暴走することなく、青空のもと、ナビゲーターの案内で安全なドライブを続けていけるんだよ」

「そうすると楽しく人生という旅ができるというわけですね」

「そういうことだね、雨宮君。そして、空には太陽が輝き、夜になると月が照るように、常に神さまから守護神を通じて、〝愛〟と〝信〟が注がれているんだよ。で、それが正守護神を通じた場合は、愛は善き愛、つまり〝愛善〟となるし、信は真の信、〝信真(しんしん)〟となって、〝われなる精霊〟に注がれ、ドライバーのより良き力となるんだよ」

「愛善と信真ですか…」

 大地は、どこかで聞いたことがあるような言葉だなあ、と思いながらつぶやいた。




「その反対が、愛悪と信偽(しんぎ)で、副守護神を通じると同じ愛と信でも変わってくるわけね。別の言葉でいうと、〝われよし、つよいものがち〟ということだね」

 高村の〝愛悪〟という言葉に、大地は…おじいちゃんに訊いた言葉だった…、と思い出した。

「愛悪というのは、利己的な愛、自分のための愛ということですよね。で、その反対が、人のための愛で、それが愛善ということですね」

「へえ〜、雨宮君は察しがいいね」

「おじいちゃんの受け売りです」

「おじいちゃんって?」

「綾部の母の実家の梅木松太郎といいます」

「ああ、あの梅木さん。なんだそうだったのか、雨宮君は梅木さんのお孫さんなのか」

「ご存知なんですか?」

「よく知ってるよ。近畿第一教区の特派をしていた時にはお世話になったからね」

「そうでしたか」

「そうかそうか梅木さんのね…」

 高村は大地の顔を見ながら、嬉(うれ)しそうに何度も頷いた。

「先生は、綾部の特派もされていたんですね」

 音江が訊いた。

「はい、東海教区に赴任する前でした」

 高村は音江にそう答えながら、大地の方に視線を戻した。




「話を続けるけど、人生において、〝愛〟と〝信〟は、必要不可欠であって、とても大切なものなんだね。でも、その向け方、使い方次第で、大きく中身が変わってくるものなんだよ。雨宮君がいうように、同じ愛でも、純粋に人のために向けられた愛もあれば、自分のための自己愛になったりと、いろいろ違ってくるんだね」

 高村は、大地の真剣な眼差(まなざ)しにさらに言葉を続けた。

「例えば、カゼを引いて熱を出して寝込んでいる妻を、夫である私が看病しているとするよ」

「はい」

「その時に、妻の身になって、ただひたすら早く良くなってほしいと願い、病院に連れて行ったり、お粥(かゆ)を炊いたりして看病していたとしたら…、これは愛の善だよね」

「はい」

「じゃあ、看病はしているんだけど、心の中にこんな思いを持っていたとしたらどうだろうか?」

「……」

「早く良くなってくれないと、俺の食事が困るからなあ〜。しょうがない、がんばって看病するか」

「なるほどそういう自己中心的な愛が〝愛悪〟ということですね」

 大地は合点がいったように笑った。

「あるある。うちの主人がそうかも」

 恵子が笑いながら言った。

(つづく)


※「みろくのよ」誌・平成25年8月号から転載

第45回「神に通づる門戸」は
10月初旬に公開します




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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長