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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第45回・神に通ずる門戸



「私が熱を出して寝てた時に主人は、〝お〜い大丈夫かぁ? なあ、晩飯どうする〟だって。もう、腹立つでしょ。高村先生、どう思います」

 恵子が身を乗り出すようにして言った。

「あ〜、それはちょっとね」

 高村は苦笑いしながら言った。

「わかりやすい〝愛悪〟ですね」

 大地が言った。

「すまないね、親の躾(しつけ)が悪かったのかねー」

 自分の息子のことである。音江も苦笑いしながらすまなそうに言った。

「ホントですよ、おばあちゃん」

 恵子は、そう言いながらも「冗談ですよ」と音江に目顔で知らせた。

 大地は2人のそんな様子から、嫁姑関係も実の親子のような仲で、恵子が夫の性格をも包み込みこんでいるようなほほ笑ましさを察していた。それは、高村も同様であった。




 高村は話題を変えた。

「それから、信ということだね。信(しん)で〝まこと〟と読むけど、神さまは〝まこと〟の塊で、しかも〝まこと〟の上にも〝まこと〟。だから信の真で〝信真(しんしん)〟というんだよ。でも、信がさも真のように思えていても、そこに偽りが隠れているとしたら、それは〝信真〟ではなく、信を装った偽りになる。これが罪深い〝信偽(しんぎ)〟となるんだよ。例えば選挙で、〝私が当選のあかつきには、こうします〟、なんて言っていても、いざ当選してしまうと手のひらを返したように、〝状況が変わりまして…〟とか言って、平気で公約を破る政治家がいたりするけど、あれなんかは罪が深いと思うよね」

「なるほど、それも保身であったり、自分のためなんでしょうね」

「そうだね。国民の方を向いてないんだろうね」

「でも、この世の中では、嘘(うそ)も方便とか言って、相手のために嘘をつかないといけないという場合もあると思うのですが」

「確かにそうした場合はあるね。そんな時は、必ず相手に対する深い愛がともなっていると思うよね。思いが愛善であれば行動は信真となり、神さまのみ心にかなっていることになると思うよ」

「なるほど、でも自分の思いや行動が、今おっしゃった神さまのみ心かどうかっていうのは、どうしたらわかるんでしょうね」

「鋭い質問だね、雨宮君」




 高村は少し間を置いて話を続けた。

「神さまのみ心を知るためには、まず神さまがいかなる存在なのかを知ることが大切だと思うね。時々、『神さまがいるというなら、納得できるように見せてくれ。頭をたたくなり、耳をひっぱるなりして教えてくれないか』、なんて言う人があるんだよね。手っ取り早く知りたいということかもしれないけど、これはとても幼稚なことなんだよ。ちょうど幼稚園の子供が、幼稚園へ行くのはばからしいから、大学の講義をすぐ聞かしてくれと言っているようなもので、実際、そういうわけにはいかないんだよ」

「目に見えないから信じないという人でしょうね」

「この世の中には、目に見えないけど存在しているものは、たくさんあるよね」

「そうですね」

「空気や電波、光だって人間の目に見えない波長のものはたくさんあるし、音でも人間の耳には聞こえない周波数の音波はあるわけだよね。ましてや、神さまは、1人の人間が生まれるずっと前からおられ、自分が死んだあとでも永遠にいらっしゃる存在でしょ。一切は神さまの中に住まわしていただいておりながら、あまりに大きいために、わからないんだよ。私のお腹(なか)の中にいる微生物は、私の体の全体を外から見ることはできないのと同じなんだよね」

「あっ、そういえば、以前綾部の祖父に、人間の力は神さまの力に比べると、虱(しらみ)の眉毛(まゆげ)に巣くう虫の、そのまた眉毛に巣くう虫……という聖師さまのお示し(注:『霊界物語』第5巻)を教えてもらったことがありました」

 大地は思い出したように言った。

「そう、あのお示しもおもしろいね。時間的なことでも、人間の一生は、神さまの歴史からするとほんのちょっとの時間しかないんだよ」

「というと…」

「56億7千万年の神さまの歴史を、この世の1年に置き換えてみると、天地がわかれてできたのが8月6日くらいになるんだ。さらに、人類の誕生は、800万年前とすると、12月1日になるし、2012年前の紀元ですら、12月31日の午後11時59分49秒くらいなんだよ。85歳まで生きたとしてもわずかに0.5秒に満たないくらいなんだよ」

「そんなに短いんですか」

「人の一生は悠久の神さまの歴史からみたら、まばたきしているくらいなものなんだよ」

「ん〜」

 大地は感心するように頷(うなず)いた。




「だから、神さまは目で見る存在ではなく、感じる存在なんだね。自分自身が神さまの懐(ふところ)の中にいるわけだから、そのことを自分の身のまわりの自然や出来事を通してでも気づかないといけないわけだね。この理(ことわり)がよくよくわかってくると、神さまを感じられるようになるし、〝花一輪見ても、神さまのみ心がわかるようになる〟と示されているんだよ」

「具体的にはどうしたらいいんですか?」

「本来、科学も芸術も宗教も、その目的は神さまの存在を明らかにし、霊界の実在を知ることにあるんだ。ちょうど高い山への登山と同じで、頂上は1カ所でも、登山道や登り方に違いがあるのと同じなんだ。だから、大本の教えを通して知るのであれば、たくさんあるご神書を拝読して、神さまのみ教えに触れることがいちばんだと思うね。それから、先輩方の信仰的な話を聞くことなんかも大切だね」

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「大地君は、おばあちゃんの話も、辛抱してよく聞いてたよね」

 恵子が言うと、

「おや、辛抱してたのかい?」

 と音江が大地に聞いた。

「いえ、そんなことないですよ。おもしろかったですよ。おばさん、変なこと言わないでよ」

 大地が笑いながら言った。




 3人の様子を横目に、高村は鞄(かばん)の中から持っていた『信仰叢話(しんこうそうわ)』を取り出して、後の方のページをめくり、大地の方へ向けた。

「ここに、さっき言った神さまを知る方法を、尊師さまがお示しになっているんだよ」

 大地は身を乗り出して見た。

『神に通ずる門戸として三つあります。それは善とか愛とかいう方面から神を感ずる道、これは宗教あるいは道徳であります。真理、道理によって神を感ずるのは、これは学問であります。美によって神を感ずるのが、これが芸術であります。この三つがある。そしてそれぞれ特長がある。

 愛とか善とかによって神を感ずるのは、これはよほどその人の心が利己的でなしに、高尚であり進んだ心境の人でなければ、そこまでにゆかない。ただ愛と善というても、その人自身の愛善ではだめである。宇宙の愛善、神から見た愛善でなければならない。利己的な愛善は神の目から見た愛善にならない。愛善から神を感ずる人は少ないのであります。よほど飛びはなれた修養のできた人、天稟(てんぴん)の人でなければ、そういうことはむつかしい。

 つぎに、真理または道理によって神を感ずる人は──これもそう全部はゆかない。人間のうちの何割かはそういうふうにしてゆきましょう。が、一般の人全部が道理や真理によって悟ってゆき、だんだんと神へ行くというのはなかなかむずかしい。いまの世では相当の学者と称せられる人でも、魔道に陥っているから、かえって違ったところに行っておったりして、ほんとうの真理に行く道でなしに、迷い道に行っているから神を感じない人が多い。

 ところが、美によって神を感ずる──これは誰でもはいれる。爺(じい)さんでも婆(ばあ)さんでも、子供でも学者でも、女でも共通に容易にはいれるものがこの門であります』

 大地はここまで目を通して言った。

「美しいものをたくさん見たら、神さまのみ心を知ることができるのかぁ!」

(つづく)


※「みろくのよ」誌・平成25年9月号から転載

第46回「宗教と芸術」は
11月初旬に公開します




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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長