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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第47回・清らかな遊び

「今、大地君が読んだところにあった芸術的な〝総和の美〟というのは大切なことなんだと思うねえ」

 音江が言った。

「そうですね、全体的な調和の美しさということでしょうが、何事においても、調和や和合というのは大切なこ
とだと思いますね」
 高村が相づちを打った。
「お茶の稽古でも調和が大切。お茶のお道具もそうね。私の家にはあまり高価なお道具はないので、ちょっとした物をお道具に代用してお稽古することもあるんですよ。そんな時は、ほかのお道具と違和感がなく調和できるように注意しているんです。でもね先生、この取り合わせを考えるのが、結構楽しいんですよ」
「たとえば、どんなものを使われているんですか?」

「海外旅行のお土産でいただいたしゃれたエッグスタンドを蓋置にしたり、銀のロウソク立てを一輪挿しの花入れにしたりするんですよ」
「そういえば、いただいたおしゃれな大理石のピルケースを、おばあちゃん〝こりゃあいいね〟って、香合にしていたことありましたね」





 恵子が思い出したように言った。

「そうだったね。意外といろんなものが、お道具として使えるものでね、それを工夫するのが楽しいことなんですよ」

「なるほどね」
 高村が納得したような表情で言った。
「あの〜、僕はあまりお茶のことは知らないので申し訳ないんですが、茶道ではいろんなものを応用してもいいということなんですか?」
 大地が、首をひねりながら言った。


「あ、ごめんね大地君。もちろんお茶会などでは、ちゃんとしたお道具を使うことは必要なんだけど、そのことに

あまり過敏になりすぎて、道具を競うようなことになっては、本末転倒してしまうということなんだよ。だから、

町村さんのように、お土産でいただいた気の利いた一品を、香合や蓋置に応用して、お稽古で使ったりされるとい

うのは、とても良いことだと思うんだ。お土産をくださった人が、その席にいれば感激されるだろうし、〝こうい

う使い方もあるんだ〟って、皆さんの関心も高くなるんじゃないかな。そうしたことは、三代教主さまも望んでおられたことだとご著書のお示しから拝察できるし、その〝こころ〟が、大本の中では茶道の普及や稽古を通して広がっていったんだと思うなあ」




 高村の話を聞く大地の様子を見ていた音江は、大地が茶道具の名前も理解していないだろうと察し、話題を変えて大地に質問した。
「大地君、茶道って何をするもの?」
「えっ、茶道ですか? お茶の稽古ですよね」
「そう、そのお茶って?」
「抹茶ですよね」
「そうね、お抹茶をいただくのよね。茶道は突き詰めると、一服のお茶をお客さんに、いかにおいしく差し上げ、お客さんはそれをいかにおいしくいただくか、ということなのね。〝茶の湯とはただ湯をわかして茶を点てて 飲むばかりなる事と知るべし〟という利休百首の歌があるんだけど、核心的な歌だよね」

「なるほど、わかりやすい歌ですね」
 大地が笑顔で言った。
「でも、その〝飲むばかりなり〟がなかなかむずかしいのよね」
 恵子が言葉をはさんだ。
「僕もお抹茶はいだだいたことがありますが、作法はちょっと面倒くさいですよね」
「そうね。最初はそう感じて当然よね」





 恵子が相づちを打ち、高村が説明を続けた。

「若い人はそう感じるだろうね。でも、一服のお茶を差し上げ、それをおいしくいただくためには、そこに作法が

あった方が、お互いより良い関係を作ることができるんだよ。決まった作法やルールをお互いが知っていて、亭主

はその作法の上で心を込めてお茶を出し、お客はその気遣いに感謝しながら、作法通りにお茶をいただく。それに

よってはじめておもてなしの〝こころのやりとり〟ができるんだよ。おもてなしというのは、接客する方の気持ち

が大切なのは当然だけど、受ける方も、心得がないといけないんだね。双方の心得、気持ちが大切なんだ。道具の

調和もそうだけど、人と人とのこころの調和がいちばん大切だと思うよ。そのためには最低限の作法を学ぶことは

必要なんだね」

「そうなんですね」

「ぶしつけとか、礼儀にはずれたことを〝無作法〟というけど、作法が無いという言葉だよね。それから、茶が無

いで、〝無茶〟って言うしね」

「なるほど」

 高村の説明に、大地が頷いた。





「ということは、やっぱり作法を勉強しないといけないんですね」

「そうよ大地君、作法を勉強していたら、心が豊になり、ゆとりも生まれるのよ」

 音江が身を乗り出して大地に語りかけた。

「これは聞いた話だけどね、昔、ある年のお正月の夜、三代さまがイギリスから来苑されていた二人の女性をお茶

席にお招きされたことがあったの。三代さまは、『ハッピーニューイヤー』とおっしゃりながらお席に入られて、

二人がキチンと膝をそろえているのを目にされて、『お楽にしてくださいよ。ドッコイショ、私もあぐらをかきま

しょう』と、顔をしかめながら、あぐらをおかきになったの。二人は、すっかり安心されてあぐらをかき、とても

なごやかな席になったそうよ」

「へえ〜、すごいですね」

「三代さまにとって、あぐらはちっとも楽ではないのよ。ご退席の時も、立ち上がろうとなさって思わず『アイタ

タタタ』と声を立てられたので、席はまた笑いに包まれ、しばらくは楽しさの余韻が残っていたそうよ」

「私もそのお話は先輩からうかがったことがありますが、相手の立場に立った三代さまの、深い思いやりのお心が

伝わってくるすばらしいエピソードですね」

 高村が言った。

「なるほど、そういう思いやりの形もあるんですね」

「お客さまをおもてなしするときは、相手の立場に立った思いやりと、それを形にあらわす工夫が必要なのね。そ

うしたことを学ぶのに、茶道の稽古はとてもよい実践だと思うわね。だからこそ、三代さまは信徒に茶道の稽古を

勧められたのよ。立ち居ふるまいやあいさつ、お辞儀の仕方も教えてもらえるしね。大地君もそろそろお稽古して

みたら」

「そ、そうですね…。いずれまた」

「できるだけ若いときから始める方がいいのよ」

「はい、そうですね…」

 音江の誘いに、大地は尻込みしながら答えた。

「三代さまは、世間のお茶は世間のお茶で、大本は、神さまがおつくりになったお道の団体だから、清らかな楽し

いお茶を行ってほしいと願っておられ、自らご精進なさり、広く信徒に推奨されたんだ。最初は、教団の中でも、

〝三代さんは、お茶や舞をして遊んでいる〟なんて非難する人たちもあったようだけど、三代さまは貫き通され

た。そのご努力によって、開祖さまから受け継がれた〝大本の教風〟が今に継承されてきたんですね」

 高村の言葉に音江が頷いた。音江は目を閉じながらかみしめるように言った。

「その三代さまのみ心に応えるためにも精進しないとね。茶道も自分の生活の所作に稽古したことが生かされては

じめて、お茶が身についたということになるのよね。私も、いつまでたっても修行だねぇ」

「いえいえ、町村さんはご立派ですよ」
「いやだよ先生、からかわないでおくれよ」
「あらぁ、おばあちゃん、照れてるんですか?」

恵子の言葉に座が和んだ。





 少し間をおいて高村が口を切った。

「大地君、遊びは好きかい?」
「えっ、遊びですか、そりゃあ、好きですけど…」
「じゃあ、人生に、遊びは必要だと思う?」
「はい、絶対に必要ですね。遊んで息抜きすることは大切なことだと思います」
 大地は胸を張って答えた。
「大地君が今思っている遊びって、どんなもの?」

 大地は少し考えて答えた。
「自分の好きなことですね。たとえばスキーやカラオケ、友達とワイワイ楽しむことなんかでしょうか」
「実は、私が言っている遊びというのは、茶道のようなものをいうんだよ」



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「えっ、茶道って稽古事じゃないんですか?」

「いや、これこそが立派な遊びなんだよ」

「でも、どちらかというと難しい習い事って感じですけど…」

 大地は不思議そうに言った。

「尊師さまはお若い頃、『自分はこの世に遊ぶために生まれてきた』とおっしゃっていた、と三代さまが紹介な

さっているんだけど、尊師さまのおっしゃる遊びというのは、娯楽的なものではないんだね。三代さまは、『遊び

というものは、遊びを楽しみながら、道をおそわるものであると思っています』とおっしゃっているんだよ。そし

て、『清く遊ぶことによって、神さまにお仕えさしていただいていることもあります』ともお示しになっているん

だ。尊師さまのおっしゃる〝遊び〟もそうした道を学ぶ〝清らかな遊び〟のことなんだろうね。大地君もそんな遊

びを見つけ、身につけられたらいいね」

「なるほど〜、ほんとうの遊びというのは、奥深いものなんですね」

 音江も恵子も、大地といっしょに頷いていた。
(続く)


※「みろくのよ」誌・平成25年11月号から転載

第48回
平成26年 1月上旬に公開します




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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長