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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第50回・『真の幸福」

「大地も帰っていたのか」

 引き出物の大きな紙袋を提げて大地の父・剛がリビングに入って

きた。ほろ酔い気分のようで赤ら顔である。

「おかえりなさい。僕は一時間くらい前かなあ」

 大地が答えた。

「おかえりなさい、どうだった披露宴?」

 そう言いながら、京子が台所からリビングに入ってきた。

剛は、紙袋を京子に手渡した。

「ああ、いい披露宴だったよ。友ちゃんも見違えたなあ」

「友美ちゃんはもともときれいじゃない」

「そうなんだけど、やっぱり花嫁となると違うなあ。

一段とべっぴんさんになっていたよ」

「高井さんも良かったわねえ」

「そう、〝花嫁の父〟はもうデレデレで、最後の花嫁からの手紙の

時には、もう涙、涙だったよ。友ちゃんも本当に幸せそうだったなあ」

「ちあきが結婚するときには、お父さんもそうなるんじゃない?」

 京子が茶化すように言った。

「いや、俺は大丈夫だよ」

「わからないわよ〜」

「お父さん、意外と号泣しちゃったりしてね」

 大地も笑いながら言った。

「友美ちゃんは大地と同じ歳だったよなあ」

 剛が訊いた。

「そう確か同級生だったよ」

 大地が答えた。

「お相手はおいくつなの?」

「確か三つ上って言ってたから、二十七歳だな。

仲田義信君って言って、なかなかの好青年だったよ。

とてもお似合いのカップルだと思ったなあ」

「そうなんだ。で、二人のなれ初めは?」

「おう、それそれ」

「何、どうなの?」

「いやあ〜、なかなか面白い出会いだったんだね、これが」

「え、訊かせてよ」

大地が身を乗り出した。京子も興味深げな表情になった。

「それがなあ、タクシーの運ちゃんが〝恋のキューピット〟

って話なんだよ」

 そう言いながら、剛は大地の正面に腰を下ろした。

「へえ〜、面白そう」

「あっ、母さん、水一杯もらえるかなあ」

 剛は、ネクタイをゆるめた。

「はい、どうぞ」

 京子は、剛の前に水の入ったコップを置いて、隣に腰掛けた。

剛は半分くらい水を飲むと、話を続けた。

「友ちゃんは大学を出てから、市内の結婚式場に就職して、

ウエディングプランナーの仕事をしているんだ。

そこでは毎朝、職員が職場の掃除をするんだけど、友ちゃんは、

よく玄関の外の溝も掃除していたそうだ」

「溝を?」

「そう、溝を。なぜか溝が汚れているのが気になるみたいで、

時には溝にはめてある金網をはずして、たまった汚い泥を

すくい上げたりしていたらしいね」

「あら、感心ね」

「でも彼女は、それをお客さんや人に見られたくなくって、

朝少し早い時間とかにしてたそうだ」

「まあ、偉いわねえ」

「で、その近くにタクシー乗り場があってね。

一人のタクシー運転手さんが、友ちゃんが溝掃除している姿を

よく見ていたんだね。それに友ちゃんは、通勤でタクシー

乗り場の横を通るとき、そこにいるタクシーの運転手さんたちに

声をかけたり、毎朝きちんと〝おはようございます〟って、

挨拶していたんだそうだ」

「へえ〜、またまた感心だね」

「だろう、たいしたもんだよ」

「ある日、一人の運転手さんが近づいてきて言ったそうだ」

「おねえちゃん、偉いねえ、よく汚い溝掃除をやってるよね」って。

 すると友ちゃんが、

「いえ、気になるから、ちょっと掃除してるだけです」

 って答えると、運転手さんが訊いてきたそうだ。

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「おねえちゃんは、毎朝きちんと挨拶してくれるし、

〝おっちゃん元気?〟とか気さくに声を掛けてくれるじゃないか。

あんたみたいな子は、きっといい彼氏がいるんだろうなあ?」

 ところが友ちゃんは、ちょうどその少し前に、それまでつき合っていた人と

別れたところだったんで、少々意気消沈していたんだね。それで、

「いえ、彼氏はいませんよ」

 って答えたんだと。そしたら運転手さんが、

「それだったら、あんたに会わせてあげたい青年がいるんだけど。

どうだい、一度会ってみないかい?」

 と誘ってきたそうだ。

 友ちゃんは最初気乗りがしなかったんだけど、

運転手のおっちゃんがあんまり積極的に薦めるし、〝どうでもいいや〟

って、半ばやけ気味で、

「じゃあ、会うだけ会ってみます」と、

誘いを受けたそうなんだ。

 で、その相手の青年というのは、タクシー乗り場の近くのビルに

出入りしているエンジニアの子で、その彼も毎朝、タクシーの運転手

さんたちにちゃんと挨拶していく青年だったそうだよ。その運ちゃんは、

〝私らが立ち話していても、誰もがその横を素通りしていくのに、

二人だけはきちんと挨拶をしてくれる。この二人なら

きっと相性がいいんじゃないか〟と思ったそうだよ。

 それで、運ちゃんに言われた日時に、タクシー乗り場で三人が

落ち合ったんだ。そこでお互いを紹介され、それからタクシーに乗せられて、

運ちゃんが薦めるレストランまで送ってもらい、初めてのデートをした

ということなんだよ。

 そしたら二人気が合ったらしいね。連絡先を交換し、一年間お付き合いをして、

結婚することになった……というなれ初めなんだよ。

「へえ〜、面白い出会いだね。そんなことがあるんだね」

 大地が感心して言った。

「その運転手さんは、〝あいさつ〟を通して、二人の心根に共通するものを

感じたのよね」

 京子が言った。

「そういうことだな」

「ということは、その運転手さんが実質的な仲人さん

みたいなものよね」

「そうなんだよ。だから、披露宴にはその運ちゃんも招待されて

出席してたんだよ」

「いい話だね」

「まあ、オチもあるけどね」

「え、なに?」

 大地が興味を示した。


「運転手さん、友ちゃんたちがうまくいったものだから、

恋のキューピットとして自分にその才があると勘違いしたのか、

調子に乗ってその後も何組かくっつけようとしたらしいんだけど、

ことごとくダメだったらしいよ」

 剛が笑いながら続けた。

「まあ、でも二人にとっては恩人だからね。

運ちゃんもとっても嬉しそうだったなあ」

「そんな二人なら、きっと幸せな家庭を築いていくんでしょうね」

 京子が笑顔で言いながら立って、台所へ進んだ。

「まあ、間違いないだろうね」

 剛はそう言って残ったコップの水を飲み干した。

「お父さん、着替えてきたら」

 台所から京子が声を掛けた。

「そうだな。あ、大地、この引き出物開けてみてくれるか?」

「了解です」

 大地が言った。

 剛はイスから立ち上がり、二階の自室へ向かった。

大地は手提げ袋から引き出物を取り出し、包みを開けた。

新しい人生をスタートさせた二人の〝しあわせ〟が

伝わってくるようであった。

 翌朝、大地は朝食のテーブルに着いた。ふとテレビの横の、

大本み教えカレンダー『こころの鏡』が目に入った。

一枚めくられ、〝2日〟になっていた。

 二代教主さまの『をぎまつ』の書画の横に尊師さまのお示しが

かかれていた。


 真の幸福は、お互いが
 親切にし合うところにある

 大地は、前日の新郎新婦のなれ初めの話を思い返した。

 ……〝真の幸福〟かあ。友美ちゃん夫妻は、きっとなれるんだろうなあ。





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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長