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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第51回・『神さまのご守護」

「おはよう」

 起きがけの大地は、手ぐしでボサボサの髪をかき上げながら、リビングに入ってきた。

「あら、おはよう」

 台所から京子の声がした。

「大地、テーブルの上に人型が置いてあるでしょ。いつものように、住所と自分の名前と年齢を書いておいて

ね」

「ん〜、あ、これね。わかった」

 大地が地元での職に就いて二年半が過ぎた。平成二十五年が明け、一月も後半になっていた。

「そうか、もうすぐ節分だね。前に綾部に行って、おじいちゃんと節分大祭にお参りしたのは…、学生の時だか

ら…、もう三年前になるかなあ〜。早いなあ〜」

 大地が当時をなつかしむように言った。

「もう三年たつんだね。あのころ大地は就活でちょっと落ち込んでたもんね」

 京子が大地に近寄りながら、ちゃかすように言った。

「やめてよ。あの当時は真剣だったんだからね」

「そうだったね。だから見かねて、お母さんが綾部のおじいちゃんのところに行くようにすすめたのよ」

「そうでした。どーも、ありがとうございました」

 大地は、テキトーな口調で言った。

「今年、またお参りに行ってきたら?」

「いや…、今は…、まあ、そんなに悩み事ないから…」

 大地は歯切れ悪く言った。

「あら、悩み事がなくったってお参りはできるのよ」

「そりゃあそうだけど…ねぇ」

「ちょうど今年は二月三日が日曜日だしね」

「そうなの? でも、節分大祭は四日の朝まであるから、月曜日になっちゃうじゃない?」

「一日会社を休んだらいいだけじゃない」

「もう、お母さんは簡単に言うけど、そう休めないよ」

「あらそう。でも、友達と遊びに行くときには有給をとってたじゃない」

「えぇ〜、あ〜、それはまあ、友達は大切にしないといけないからね」

「あら、そうでございますか?」

 京子が嫌みっぽく言った。

「で、これに書けばいいんだね」

 大地が話を変えた。

「そう、こっちの型代の方にも、大地の車と自転車を書いておいてね」

 そう言いながら、京子は台所へ入った。大地はそばにあったボールペンを手にとったが、まだ顔を洗っていない

ことを思い出した。

「おっ、いけねぇ」

 ボールペンを置き、洗面所に向かった。しばらくして洗面をすませ、リビングに戻ってきた大地は、椅子に掛け

て人型と型代に必要事項を記入した。

大地カット2.psd

「お母さん、これに息を吹きかけて体をなでたらいいんだったよね」

 リビングに入ってきた京子に訊ねた。

「そうよ、特に頭をよくなでた方がいいかもね」

 京子が冗談口調で言った。

「了解です」

 大地も笑いながら答えて、人型に息をかけ、全身をなでた。終わると顔の前で軽く押し頂く格好をして、型代と

いっしょにした。

「これ、どうする」

「綾部のおじいちゃんに送らないといけないんでね。あっ、でも大地が持っていってくれるなら別だけどなあ〜」

 そう言いながら、京子が大地から人型・型代用紙を受け取った。





「だからぁ…、ねぇ…。あ、そうそう、前から気になっていたんだけど、その人型の紙の真ん中に書いてある象形

文字みたいなのは、何かのマーク?」

 大地が人型用紙に目線を向けた。京子も手にした用紙に目を落とした。

「あぁ、これね。確か…、お祓いをするという〝修祓〟の二文字よ。修学旅行の〝修〟という字と、祓うの〝祓〟

という字が縦につなげて書いてあるのよ」

 京子は用紙を大地の目の前に差し出した。大地は用紙に顔を近づけ、じっと見て、

「なるほど、〝修祓〟という字かあ。そう言われたらそう見えるね。お母さん、すごい! よく知ってたね」

「でしょ。……実は、だいぶ前に、私もおじいちゃんに質問したことがあってね。その時に聞いたのよ」

「だろうなあ」

 二人は顔を見合わせて笑った。

大地カット1.jpg

「でもお母さん、この人型って効くの?」

 この質問に、京子は少し真顔になって大地を見つめ、口調を変えた。

「大地、〝効く〟とかいうもんじゃないのよ。人型は、一年の間に、知らず知らずに犯した罪・穢れをはらってい

ただいて、神さまのご守護をいただく、とっても大切なものなのよ」

 京子は諭すように言った。

「あ、ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったんだけど…」

「ん、わかっていればよろしい」

 京子はまた笑顔になった。



「ところで、どんなご守護があるんだろうね」

 大地があらためて訊いた。

「そりゃぁ、人型のおかげ話はたくさんあるわよ」

「どんな?」

「そうね、印象に残っているのはね…」

 そう言いながら京子は少し考えて言葉を続けた。

「何年か前の『おほもと』誌に載っていた

おかげ話はすごいなあ、って思ったなぁ」

「へ〜、どんな?」

「確か島根県の隠岐島に住んでる八十過ぎの漁師のおじいさんの話でね。その人は大本の信者さんではないんだけ

ど、毎年人型を受けておられたのね。それで〝型代の祓いの証〟を、自分の船や車につけていたのよ。ある日その

おじいちゃんが漁に出たっきり帰ってこなかったそうよ。無線の応答もなくって安否不明になったわけ。家族や漁

師仲間もとっても心配して、必死で捜索したけど、見つからなかったの」

「ほう」

「三日たって、その日も夕方になり捜索が中断することになって、おじいさんと一番仲の良かった漁師さんも、や

むなく港に帰るために船を旋回させていたの。そしたら、白地に赤い丸印、まるで日の丸の旗を小さくしたような

紙片が海面に浮いているのが目に留まったの。その漁師さんは直感的に〝じいさんの舵に結んであったものだ〟と

思って、網ですくいあげたら、『大本節分大祓祈願』って書かれた〝祓いの証〟だったのよ」

「あ、あの車に下げているお札だね」

「そうなの。で、その漁師さんは、〝じいさんは生きている!〟と捜索していた全部の船に連絡をいれて、風向き

と潮の流れから、お札が流された地点を目指して捜索が再開されたのよ」

「それで?」

「そうしたら、しばらくして竹島の近くを漂流している釣船を発見。大声で呼びかけると、おじいさんの元気な声

が返ってきて、みんな大喜びをした…、っていう話なのよ」

へぇ〜、助かってよかったね。しかし、まあ、よく漂流している場所がわかったもんだね?」

「それがね、〝祓いの証〟が流れていたのは、偶然ではなかったのよ」

「えっ、どういうこと?」

「実は、遭難したこのおじいさん、その半月前にも自動車事故を起こして、その時にも大きなおかげをいただいて

いたのよ」

「そうなの?」

「車で山にタケノコ掘りに行く途中、運転を誤って崖下へ転落してしまったんだって」

「へぇ〜」

「気がついてあたりを見まわしたら、押しつぶされたドアに少しすき間があったんで、そこから這い出したそう

よ。幸い、顔と手足に軽いすりキズだけで、九死に一生を得たわけよ」

「よかったなあ」

「で、レッカーで車を引き揚げたところ、車内に結びつけていた型代のお札がなくなっていたそうで、おじいさん

は〝お札が身代わりに谷底へ落ちてくれた〟って思ったそうよ。この事故の体験があったから、海でエンジンと無

線機が故障して遭難した時、潮の流れが港の方に流れているからって、罰当たりかもしれないけど、型代の祓いの

証をはずして、『ゴメン、ゴメン』って言いながら、海に流したんだって。で、それを仲のいい仲間が見つけてく

れて無事に救助された…、っていうわけ。どう、すごい話でしょ!」

「すごいね。そのおじいさんは、二度も神さまに助けてもらったんだね」

 大地は、感心した表情で言った。



「ところで大地…」

 京子が言った。

「会社、時間大丈夫なの?」

「うわぁ、まずい! もう、お母さんのせいだよ」

「えっ、私…。何言ってんのよ。早くしなさい!」

 大地は二階へ駆け上がった。京子は大地が書いた人型を見て、ニコリと笑った。

(続く)

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長