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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第52回・『春の訪れ

 会社への道すがら、車を運転しながら車内に下げている型代の「祓い

の証」が目に入った。大地は家を出る前に、京子から綾部での節分大祭

参拝を勧められたことを、ふと思い出していた。

……母さんには「悩み事がない」と言ったものの、実はあるんだよなあ。

 京子に言ったことは本心ではなかった。大地は、今の仕事を続けるべ

か迷っていた。以前にも悩んだことだったが、一度それを打ち消して

仕事に取り組んできた。

 ……自分は営業に向いていないのでは?

 半年前にも考えたことだった。営業先でお客さんと商談することは楽

かったが、商品を奨める段になって、相手が望んでいる商品に関し、

自社より他社の方に良い商品があることを知っていると、つい相手の立

場に立ってまい、他社製品を奨めてしまう自分がいたのだ。

 ……お客さんのためにはなるけど、やっぱ、これじゃあ、会社のため

にはならないよなあ。

 そんな大地の心情が顔に表れているのを京子が知ってか、ちょうど松

代荘で開催された「生きがい講座」を勧められたのが去年の夏のことだ

った。


その時、高村特派から講座後にいろいろと話を聞き、何となく心が落ち

着き、以来、気持ちを切り替えて仕事に打ち込んできた。

 ……でもやっぱり吹っ切れないなあ。

 心のどこかに、「このままじゃいけない」という自分がいた。


 四月下旬、信州も春の訪れを感じる季節になっていた。大地はお得意

さんまわりが終わった午後、千曲川沿いを営業車で走っていた。

小布施橋を渡りながら、河川敷に目をやるとピンクや白の花が目に入っ

た。

……ちょっと休憩するかあ。

大地は橋を渡りきってから車を停め、おだやかな陽気に誘われるように、

河川敷に下りていった。そこには桜と花桃が今を盛りと咲き誇っていた。

若葉の木々の間からは、向こうに菜の花畑、遠くには、残雪をいだいた

黒姫山と妙高山が見える。まさに春爛漫。近くには、散歩する何組かの

母子の姿もあった。

大地は手を広げて背伸びをし、大きく深呼吸した。

 ……あー、気持ちいいなあ。

 大地は、花桃の下を歩きながら、漂ってくるほのかな香りを楽しんで

いた。


しばらく歩いてベンチに腰をおろした。ポケットには、さっきお得意さ

んからもらった缶コーヒーが入っていた。

 ……ちょっとぬるくなったけど。

 そう思いながら、プルタブを開け、コーヒーを飲んだ。

ほっこりとした気持ちになった。


少ししてスマートフォンが鳴った。見ると、京子からのメールだった。

〝今日は何時に帰る?〟

 相変わらず、用件のみのメールであった。

〝仕事も早く終わりそうだから、六時前には帰るよ〟

 大地も短くメールを返した。京子からすぐに返信が来た。

〝了解! 待ってます!〟

 ……えっ、待ってますって、何かあったっけ?

 そう思いながらも、帰ればわかることだと思い直し、残ったコーヒー

飲み干してから腰を上げた。

 その十分ほど前、大地の自宅に一本の電話が入った。京子が受話器を

とった。

「はい、もしもし、雨宮でございます」

「あ、もしもし京子さん、町村です」

「あら、恵子さん。どうしたの?」

「今、大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ」

「実はね、今うちに、大本の特派の高村先生がお越しでね。

おばあちゃんと三人で話してたら、大地君の話になったのよ。

ほら、去年の夏、松代荘で会ったでしょ」

「そう、高村先生が来ておられるの? その節は大地がお世話になった

ものね」

「でね、今夜、高村先生はうちに泊まられるんだけど、夕方時間がある

そうなので、よかったら大地君に会いたいとおっしゃっているのよ。

どうかしら?」

「あらぁ、それはありがたいわね。で、どうしたらいいの?」

「先生が京子さんのお宅にうかがいたいっていうことなんだけど」

「そうなの。じゃあ、一度大地の都合を訊いてみて、またお返事しますね」

 京子は、受話器を置くと、すぐに大地にメールした。

 ……よしよし、六時前に帰ってくるなら大丈夫。

 京子は大地からの返信メールを見ながら、早速、恵子に電話を入れた。

「よかった、じゃあ、高村先生に伝えるね」

「はい、よろしくお願いします」

「京子さん、先生はうちへ帰られてからいっしょに夕食していただくんで、

ご心配なくね。そんなに長居はされないと思うんで」

「そうなの、わかったわ。ありがとうございます。じゃあ、

お待ちしてます」

 午後五時半、玄関のチャイムがなった。

京子が出ると高村特派が笑顔で立っていた。

「高村です。今日は突然にすみません」

「いいえ、ようこそお越しくださいました。大地も喜ぶと思います。

さあ、どうぞお上がりください」

「はい、お邪魔します」

「先生、うちにはまだご神前がないので、すみません」

「はい、承知しています」

「いずれはと思っていますので」

「そうですね。楽しみにしています」

「そのためにも、大地にしっかりお話をしてやってください」

「いや〜、今日は大地君と雑談をしに来ただけなので…」

「先生、それがありがたいんですよ」

「そうですか」

 高村はリビングに案内され、テーブルについた。

 しばらくして大地の車がガレージに入った。

……あれ、お客さんかな。ん? 京都ナンバー? 誰だろう?

「ただいま」

「おかえりなさい。大地、お客さんよ」

「え、誰? 僕に?」

「まあ、入って」

 大地は恐る恐るリビングのドアを開けた。

「お邪魔してます」

「あー、高村先生」

 大地は驚いた声で言った。

「お久しぶり」

「ご無沙汰しています。その節にはいろいろとありがとうございました」

「あれから、もう八カ月くらいたつね。元気だった?」

「はい、おかげさまで。先生は?」

「はい、この通り元気です」

 ひとしきり挨拶が終わると、大地は部屋に鞄を置き、手を洗ってからリビ

ングの席についた。

 それからしばらく、お茶を飲みながら、何くれと無く話がはずんだ。

「ところで大地君、仕事は楽しいかい?」

「はい、楽しいんですが、ただ…」

「ただ、どうしたの?」

 大地は、少し間を置いてから話し出した。

「実は、今の仕事をずっと続けるかどうか、迷っているんです」

「そうなの?」

 大地は高村に、今の心情を隠さず話した。高村もそれを親身になって

じっくりと聞いた。


「どうだろ大地君、気分を変えて、自分の心を見つめ直すためにも、

一度聖地へお参りしてきたら。綾部には梅木さんもおられるし、ちょうど、

もうすぐ〝みろく大祭〟もあるからね」

「みろく大祭?」

「そう、五月五日のみろく大祭」

「ゴールデンウイークですね」

「大本の四大大祭の一つなんだよ」

「じゃあ、節分大祭もその一つなんですね」

「二月三日の節分に行われるのが、大本で一番大切な祭典である

〝節分大祭〟だね。あと、春・夏・秋と、それぞれに大祭があるんだよ。

五月が〝みろく大祭〟、八月が〝瑞生大祭〟、十一月が〝大本開祖大祭〟。

その中で瑞生大祭だけが亀岡であって、あとの三大祭は、

綾部で行われるんだよ」

「節分大祭は一度お参りしたのでわかるんですが、〝みろく大祭〟って

どんなお祭りなんですか?」

 大地が興味深げに訊いた。

「大地君は、天の神さまと地の神さまのことはわかるかなあ?」

「前に綾部のおじいちゃんから教えてもらったので、

何となくわかりますが…。確か遠い昔に、大地の神さまである国祖が

ご隠退されるときに、天上の神さまと神約を結ばれたんですよね。

で、国祖が再びこの世に現れられた時に、天の神さまが天上の世界から

地上に降りて国祖を輔けられるということじゃなかったですか?」

「そう、すごいね。よく知っているね大地君!」

「いやあ、うろおぼえです」

「その天の神さまのことをみろくの大神さまとも言うんだよ。

そして、聖師さまの肉体を借りて降りてこられ、神さまのお仕事である

〝みろくの世〟を創るというご神業に、いよいよ本格的にとりかかられる

という節目の日をお祝いして始められたお祭りが、〝みろく大祭〟なんだよ」

「いつ始まったんですか?」

「聖師さまが五十六歳七カ月を迎えられた昭和三年の三月三日から始まったんだよ。

大本では〝五・六・七〟で〝みろく〟とも読んでいて、とても大切な数字なんだよ」

「昭和三年三月三日、五十六歳七カ月…。なるほど、三が三つならんだ日に、

五六七の歳を迎えられて、それをお祝いされての祭典だったということですね」

「この日に聖師さまは、『今日こそは五十六年七カ月五六七の神代の始めなりけり』

とお歌を詠まれて、みろくのご神業のスタートを宣言されているんだね。

だから、私たちは、みろく大祭にお参りして、みろくの大神さまをたたえ、地上天国・

みろくの世が一日もはやく到来しますようにと、心をこめてお祈りさせていただくんだよ」

「……」

「大地君、ぴんとこないかい?」

「ええ、いや、何となくわかるんですが…」

「そうか。じゃあね、たとえば、こういうことならどうかなぁ」

 高村は例え話を始めた。

(続)

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長