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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第55回・『王仁三郎と鬼三郎』

問答のような松太郎の答えに、大地は首をかしげた。

「おじいちゃん、どういうこと?」

「王仁三郎の〝王仁〟は、百済の王仁博士の名前からとられた名前でもある

んだけど、発端はそうではなかったということなんだよ」

「え?」

「実を言うと、聖師さまの王仁三郎というお名前は、開祖さまのお筆先で

められたものでな。つまり、神さまがご命名されたお名前ということな

んだよ」

 松太郎が答えた。

「あら〜、そうだったの? 知らなかったわ」

 京子が驚いたように言った。

「ちゃんと『おほもとしんゆ』の中に書いてあるんだよ」

「あら、拝読してないことがバレちゃったみたい」

 京子が笑いながら言った。

「まあ、『おほもとしんゆ』は全部で七巻あるし、その中の一カ所に示され

ていることだから、京子が知らないのは無理はないけどな」

「ということは、おじいちゃんはどこにあるのか、わかるわけ?」

 京子がちょっといじわるっぽい口調で言った。

「もちろんだ」

 松太郎が自信ありげに言った。

「でもおじいちゃん…」

 大地が、思いついたように言った。

「あの…、確か…、開祖さまのお筆先は、もともとほとんどが平仮名だったんだよね」

「そうだよ」

「それなのに、どうして王仁博士の王仁をとって、王仁三郎っていう漢字になったの?」

 大地が言った。

「確かに! 大地、よく気づいたわね」

 京子が言った。

「大地、的確な質問だなあ。よしよし、食事が終わったら、ゆっくり教えてやるからな」

 松太郎はそう言いながら箸を進めた。

 夕食が終わり、食卓を片付けて、松太郎と大地が向かい合って座った。

「おい、おばあさんも京子も座ったらどうだ」

 松太郎が台所に向かって言った。

「今、洗い物しているから、済んだら行くわ。でも、ここからでも話は聞こえるから

どうぞ進めていいわよ」

「そうそう、お先にどうぞ」

 京子のそばにいた とも も言った。

「そうかあ?」

 松太郎は少し残念そうに言うと、「じゃあ」と言って立ち上がり、ご神前の手前の

部屋に行き、本棚から『おほもとしんゆ』を一冊抜いた。

そして、「確かこれだったはずだが…」と小声で言いながら、ページをめくった。

だが、お目当てのページがすぐにみつからず、しばらく探していた。

 …あれ、おじいちゃん、遅いなあ。

 大地がそう思った時、松太郎が戻ってきた。

「さすがにすぐに見つからなかったなあ」

 そう言いながら、テーブルの上に『おほもとしんゆ』第一巻の目的のページを開いて置いた。

「ほらここにあったよ」

 大地は松太郎が指さした部分を読み始めた。

       明治三十六年旧六月四日
今度の御用は、各自同じ御用はさしてないぞよ。

昔からの霊魂の因縁だけのことをさすぞよ。

 出口直には筆先で知らさすなり、純子には筆先の代わりに口で言わさすなり、

上田喜三郎は出口王仁三郎と名を替えさして、神界の経綸の御用に使うなり、

役員は役員で各自に異うた御用を致さすから、同じ御用は一人も無いぞよ。
        (第一巻 二五九頁)


「おじいちゃん、この上田喜三郎というのが聖師さまのことなんだね」

「そうだよ。聖師さまは亀岡の穴太というところで、上田という農家の長男と

してお生まれになってな、幼名を喜三郎といったんだ」

「〝ようめい〟って?」

「子供のころからの名前ってことだな。

綾部に来られて二代さまと結婚なさったときも上田喜三郎で、

このお筆先にあるように、明治三十六年の六月から替わったということだから、

三十二歳くらいまで、喜三郎という名前だったんだよ。

それから、『おほもとしんゆ』の中では、上田喜三郎のほかに、

〝上田海潮〟や〝海潮〟という別名で書かれている部分も多いなあ」

「そうなんだ」

 大地が頷いた。

「結婚なさったのはいつなの?」

「明治三十三年の一月だよ。だから、結婚後三年半たって、出口王仁三郎になられたということだな」

「神さまがそう決められたということだね」
 
大地が頷いた。

「で、おじいちゃん、さっきの質問だけど、どうやって王仁三郎という漢字になったわけ?」

「実はなあ、喜三郎青年は、大本入りする前に一度、〝きさぶろう〟という同じ読みで、

別の署名をしておられたことがあるんだ」

「署名?」

「喜三郎青年が、幽斎ということを研究されていたある日にな、〝ひそかに出修に行け〟

という神さまからのお告げがあったそうだ」

「幽斎、出修…?」

「あぁ…、それを詳しく話しているとややこしくなるといけないから、

今は説明しないけど、まあ…、神さまのお道を探求されるためのご用だと思ってくれ」


「うん、わかった」

「で、そのお告げのことや家族に内緒で出かけることを、喜三郎青年が斎藤という

友人に話されたんだ。

すると斎藤は、突然喜三郎が姿を消してしまうと、家族が心配するだろうから、

もしもの時のために一筆書くようにと勧めたそうだ。それで喜三郎青年は、

書き置きを書いて、最後に署名したんだが、どうしたことか、喜三郎ではなく、

〝喜〟が〝鬼〟になって、〝鬼三郎〟と署名されたんだ。

喜三郎青年は、鬼三郎も〝キサブロウ〟と読めるからいいんだろう、

って思って書き直されなかったんだと」

「へえ〜」

「そしたら、綾部に来て三年ほどたって、このお筆先が出て、

〝おにさぶろう〟と神さまから命名されたわけだよ。

それで聖師さまは、青年時代に書かされていた〝鬼三郎〟は、〝おにさぶろう〟

と読むべきだったんだと悟られ、今度は〝おに〟を〝鬼〟ではなく、

同じ発音の〝王仁〟にされた、というわけだ」

「なるほど、神さまは、何年も前に、聖師さまに〝鬼三郎〟と書かせて、

本当の名前は、〝おにさぶろう〟なんだと知らせておられたということなんだね」

 大地は感心して言った。

「そういうことだ。聖師さまは後に、若いときに書いた鬼三郎は、

〝きさぶろう〟じゃなく、〝おにさぶろう〟と読むのであって、

書き置きの署名の一件も、鬼門の金神のお仕組だった、とおっしゃっているんだ」

「そうか、鬼門の金神ということは、国祖からのお知らせだったということだね」

 大地は頭の中で、聖師さまのお名前の流れをあらためて追ってみた。

 喜三郎
  ↓
 鬼三郎
  ↓
 おにさぶろう 
  ↓
 王仁三郎

55挿絵.psd


「それから確か…、『出口王仁三郎全集』の第一巻の中で、王仁博士のことに

関して書き残しておられたはずだなあ」

「そうか、だから、おにさぶろうに名前を替えられたときに、〝鬼〟じゃなくて、

〝王仁〟を使われたんだね」

「ああ、おじいちゃんも先輩たちからそういうふうに伝え聞いているよ」

「すごいねえ」

「それから、王仁博士の名前は、古事記や日本書紀にも出てくるなあ。

日本書紀では、王仁だけど、古事記では、和邇吉師という名前で出ているんだよ。

確かこんな字だったなあ…」

 と言いながら松太郎は、手元にあったメモ用紙に、二つの名前を書いた。

「こんな難しい字なんだね。おじいちゃん、よく書けるねぇ〜、すごいなあ」

「まあな」

 松太郎は少し照れながら言った。

「日本書紀の中では、王仁は〝わに〟って読んでいたから、今でも聖師さまのことを

〝わにさん〟とか〝わにさぶろうさん〟と呼ぶ人がいるんだけどね」

「へえ〜、そうなの」
(続く)

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長