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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第56回・『神命』

 大地は無言で頷き、しばらくしてふと思い出したように口を開いた。

「そういえばおじいちゃん、さっきの話の中にあった、聖師さまが置き

手紙を残して亀岡を出られることになった時の、神さまからの〝お告げ〟

というのは、いったいどんなことだったの?」

 大地の質問に、松太郎は「よくぞ聞いてくれた」と言わんばかりの

笑みをもらした。

「大地、それを訊きたいか。よしよし、じゃあ、ちょっと待っててな」

 と言いながら立ち上がり、また本棚がある部屋に行き、

中から化粧箱に入った一冊の書籍を持ってきた。

「確かこれだ」

 松太郎は化粧箱ごと大地の方に向けた。

「出口王仁三郎著作集」

 大地がタイトルを読んだ。

 松太郎は化粧箱から中身を取り出しながら話を続けた。

「この本はもう四十年くらい前になるかなあ、読売新聞社から出版されたもので、

聖師さまが書かれたいろいろな著書が集められたものでな。全部で五巻あって、

これはその第一巻なんだ。今は販売されてないけど、

おじいちゃんが若いころに買っていた大切な本なんだよ」

「そうなんだ」

「で、この中に〝本教創世記〟という著述が百ページ以上収めてあって、

そこに聖師さまの名前の由来話も書いてあるんだよ」

 そう言いながら松太郎はページをめくった。

「本教創世記?」

 大地は、文中に書かれた文字に目をやりながら言った。

「本教…、つまり大本が創世された記録という意味だろうが、

内容は、新しい宗教としての大本を創り出していく経緯が中心になっていて、

聖師さまが半生を回顧して書かれた自伝のようなものなんだ」

「そうか、だからこの中に、お若いころのエピソードとして書き残しておられるんだね」

「そういうことだ」

「ほら、ここだ。第九章…」


 松太郎がページを指差し、大地ものぞき込んだ。

「何だか難しそうだねえ?」

「まあ、かいつまんで話そうかねえ」

「そうしてください」

 大地が軽く胸の前で手を合わせて言った。

「まずは聖師さまが書かれた置き手紙の内容だけど、これだけあるんだ」

 そう言いながら松太郎は二ページにわたる手紙の部分を指差した。

「難しい漢字がたくさんあるけど、どんな内容なの?」

 松太郎は、活字を目で追い、大地がわかるように、意味をかみくだきながら説明した。

「今の世の中は野蛮で殺伐とした〝われよし、強いもの勝ち〟

の悪魔の世になっている。日本人も精神が昔と変わってしまい、このままにしていたら、

世界は破滅してしまう。今のうちに社会の風潮を一掃しなくてはならない。

自分(聖師さま)は神さまが望まれる世界をつくるために、身も心も尽くして

神さまにご祈願してきた。今や天の時がめぐってきて、自分の心身ともに神さまに捧げたので、

もう自分のものではない。天下公共のために、神さまのみ心のままに働かなければならない。

だから家族のことは忘れないといけないので、不在中はご神前に燈明をあげて、

首尾よく神さまのご神命を遂げて帰ることを祈っていてほしい……というような内容だったんだなあ」

「なんか、すごい内容だね。で、鬼三郎と署名されたわけだね」

「そうだなあ。そして、その続きに書いてあるのが、

『之も全く、余一己の力で書いたのでなく、七、八分迄神の助筆であった』とあるから、

書き置きの内容も、神さまが書かされたものだったということだなあ」

「そうなんだね」

 大地は感心したように言った。

「で、神さまのお告げというのはどんなことだったの?」

「神さまのお告げを、〝ご神命〟というんだけど、その内容は、この文章の最初に書いてあってな…」

 松太郎はページを戻した。

「ほら、ここに書いてある。『汝は今より修業の為めに西北の方位に向って旅行すべし。

可成的秘密を要す』というご神命だ」

「えっ、西北に向かって行け、というだけ? けっこうアバウトだね」

大地は少し笑いながら言った。

「そう、それだけだな」

松太郎も笑顔で答えた。

「神さまはどこへ行くのかは教えてくれないの?」

「そうだなあ」

松太郎は話を続けた。

「ただ、旅の途中で、ご神命が加わるんだよ」

「何だ、そうなの。で、どこへ行けって」

「聖師さまは夜中、午前零時に家を出られて、近くの小幡神社という産土さんにお参りされて、

その後、聖師さまが一週間の霊的修業をされた高熊山に参拝されたとあるなあ。

それから、西北に向かって歩いていかれたんだ。そして一晩かかって、

園部というところに着かれて、天満宮に参拝されたとある。

たぶん大本ともゆかりのある生身天満宮だろう」

「生身天満宮?」

「菅原道真を祀るのが天満宮だけど、園部は菅原氏代々の所領があって、

道真公の邸殿もあったそうだ。道真公が太宰府に左遷を命ぜられた時に、

道真公を慕っていた園部の代官が、道真公のことを思い、道真公の木像を彫って、

ひそかに祠を建ててお帰りを祈念していたんだなあ。でも残念ながら、

二年後に道真公は亡くなってしまうんだよ。そんないきさつがあって、園部の天満宮は、

道真公が生きていた時から祀られていたということから、生身天満宮と呼ばれるようになったそうだ」

「へえ〜、そんな天満宮があったんだね」

挿絵2のコピー.jpg

「道真公の没後、都で次々と悪いことが起こって収まらなくなり、道真公の祟りと恐れて、

都をはじめ、各地で祀られるようになったのが天満宮なんだ。それが広がって後には、

学問の神さま〝天神さん〟として祀り、今は全国に、一万二千社くらいあるらしいなあ」

「そんなにあるの?」

 大地はその数に驚いた。

「だから、道真公が亡くなる前からお祀りしていたという園部の生身天満宮は、

全国の天満宮の中でも、最も歴史の古い天満宮ということになるんだよ」

「日本最古の天満宮かぁ」

 大地は大きく頷いた。

「で、聖師さまがその天満宮で、修業をされているときにご神命が下ったんだ」

「目的地がわかったの?」

「そう、ここだな。『身心を清めて、又々幽斎の神感法に入り、丹後の国の内宮、

外宮を指して参上せよ、との神勅を拝受した……』とあるだろう」

「ということは、そこが目的地だということだね。で、いったいどこなの?」

「大本のその後の歴史からすると、〝丹後の国の内宮〟というのは、

綾部から車で一時間くらいの福知山市大江町にある元伊勢内宮・皇大神社で、

〝外宮〟は元伊勢外宮・豊受大神社ということになるなあ」

「じゃあ、聖師さまはそこへ行かれたんだね」

 大地が松太郎の方を見て言った。

「いや〜、実は違うんだよ」

「えっ、どういうこと?」

「聖師さまも行く先が決まったと思われて、勇んで園部を出発されたんだけど、

しばらく歩いて園部の西北の観音峠の頂上にあった茶店で休憩されていたら、

また神さまからのご神命が下ったんだなあ。ほらここ……」

 松太郎が文中を指差した。

「『山中に於て暫時鎮魂を修するの神勅を得て』とあって、聖師さまは、

神命のまにまに山の中に入られて、また修行されたんだ」


挿絵1のコピー.jpg




「えっ、また」

「しかも、すぐには次の神命が下りなかったんだ。結局一晩修行されて、

明け方になってようやくご神命が下がったんだそうだ。さて、どうなったと思う、大地」

「さあ? まったくわからないけど…。まさか、目的地が変わったとか」

「正解! と言うか、『園部迄引返すべし』…だと」

「えー、どういうこと?」

(続く)

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長