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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第57回・『覚悟』

「大地もそう思うか!

神さまは、聖師さまに一旦目的地をお告げになったのに、

ちょっと先へ進ませといて、一晩たったら〝引き返せ〟って。

こりゃあ、今だったら誰もが酷な話だと思うだろうなあ」

「そうだよねぇ、なんか意地悪されているような感じだね」

 大地は頷きながら言葉を続けた。

「あっ、何か忘れ物でもあったんじゃないの?」

「忘れ物?」

 大地の意外な返答に、松太郎は苦笑した。

「いや、そんなことじゃないんだよ」

「じゃあどんな理由なの、おじいちゃん」

「聖師さまも、これはおかしい、って思われたようだなあ。ほらここ」

 と、松太郎は文中を指さした。


 そこで余は、大に怪しんで神界へ其所以を奉伺した。


「私もとても怪しいと思って、その理由をうかがった…とあるだろう」

「はい」

「続けて、聖師さまが神さまにされた質問の内容が書いてあるなあ」


「私は神命を奉じて西北に向って参り、且又『丹後へ行くべし』

との御教えなりしを固く守りて来れり。

元伊勢詣りは神界より中止なされしや」

と聊か質問的に神答を迫ったが、

其時神は余に向って徐ろに、左の神示を賜わったのである。

「次が神さまの答えだね」

「そうだ」

 松太郎は、文中を指さしながら読み進めた。


 神は霊であるから、霊を以て霊に対するは真の道である。

今汝は、全霊なる神の命を請けて、只一心に其旨を守り、

神霊の地に到って修業せんとす。

其志や誠に嘉賞すべし。汝が霊は、既に内宮、外宮に参詣したり。

神は無遠近、無広狭、無明暗にして、

過去、現在、未来に通ずるものなり。

汝の正霊、既に神前に安座せり。故に遙々丹後に到らずとも宜し。

何れ二、三年の内には、肉体も参詣せしむる事あるべし。

汝は是より園部の知己に頼〔便〕り、

一週日の間、閑静なる室を借りて幽斎を専修すべし。


「ん…、どういうこと?」

「つまり、聖師さまは全身全霊を傾けて、

神さまのご神命に従おうとなさったわけだ。

その志、赤誠は時間や空間に関係なく、

神さまのみ心に届いたとおっしゃっているんだよ。

だから目に見える元伊勢の神前に行かなくても、

聖師さまの魂はすでにご神前に座っておられると同じことだ、

ということだなあ」

「なるほど」

「それに、二、三年の間には、

聖師さまの肉体も元伊勢に実際に参拝することになると、

予言されているなあ」

「おじいちゃん、それは事実だったの?」

「大地、そうだよ。三年後の明治三十四年には、

元伊勢お水のご用というのが行われているから、

そのころには聖師さまも元伊勢に参拝に行っておられるはずだなあ」

「予言通りだった、ということだね」

「そうだなあ」


「ただなあ、大地」

「なあに?」

「この一連の話で、

おじいちゃんが〝大切だなあ〟と思うことがあるんだよ」

「どんなこと?」

 大地は興味深げに訊いた。

「それはなあ、〝覚悟〟ということだよ」

「覚悟?」

「そう覚悟」

 松太郎は頷きながら言った。

「この話の深意は、

おじいちゃんたちには及びもつかないことかもしれないんだけど、

ただ信仰のあり方、心得としてお手本とすべきことがあると思うんだ」

「それは?」

「聖師さまは、神さまのおっしゃることを疑うことなく、

素直にお聞きになり、一生懸命に実行されているということなんだ。

だから神さまは、その聖師さまの〝まことの覚悟〟を見届けられて、

その目的を達したとおっしゃっているわけだ」

「つまり神さまは聖師さまの覚悟を試されたということ?」

「さあ、その神意はわからないけど、

さっき説明した聖師さまの置き手紙や、

園部へ引き返された時の神さまとの問答を見ると、

少なくとも聖師さまの覚悟がわかるなあ。

これが、まことの信仰のお手本じゃないかと思うんだよ」

「そうなんだね」

「信仰のことは、今大地に言っても、

もう一つピンとこないかもしれないけど、

覚悟というのはそんなものだと、おじいちゃんは思うんだよ」

「なんとなく分かる気がするよ」

「そうか。よかった」

 松太郎は嬉しそうに言った。


「昔、大本のある立派な神の家の管理を預かった信者さん夫婦に、

三代教主さまが、

『あなたたちは、一生ここにおってや』とおっしゃったことがあるんだ。

それでそのご夫妻は強い使命感と覚悟を持って、

長い間、いろんなことを乗り越えて、

神さまから与えられた自分たちのご用だと信じ、

一生懸命に神の家をお守りされてきたんだ。

もちろん、三代さまがご昇天になったあともね。

 ところが、年をとって二人とも体の不調を感じ出し、

周囲の人たちに迷惑をかけるわけにはいかないし、

このままではお約束したことが果たせないと覚悟を決められた。

神の家を『守る』ということは、

同時に『継続させる』ということでもあると言って、

そこを後身にゆずり、故郷に帰られたんだ」

「立派な夫婦だね」

「そうなんだ。その時に聞いた話が印象的でよく覚えているんだよ」

「何?」

「三代さまが『一生ここにおってや』とおっしゃったのは、

『その覚悟で神の家を守りなさい』

という深いお諭しがあったんだと思えるようになった、とね」

「なるほど」

「考えてみると、『いついつまで』って期限を切られるのと、

『一生の間』では、その覚悟の度合いが違うような気がするだろう」

「確かにそうだね。三代さまのおっしゃったことを、

神さまのお言葉として素直に受け取って、

強い覚悟で頑張られたんだね」


 松太郎が、大地の言葉に反応するように、声に力を入れて答えた。

「大地、その『頑張る』という言葉だけど、

今はその言葉がないと会話に困るくらいに使われる言葉だなあ」

「そうだねえ」

 大地は、松太郎の話の展開にちょっとびっくりしたように反応した。

「実は『頑張る』という漢字は当て字で、

『我に張る』から転じたという説があるんだ。

もともとは、〝我意を張り通す〟、〝自分の意見に固執して譲らない〟

という悪い意味の言葉だったらしいんだ。

つまり、大本的に言うと、〝われよし(我良し)〟ということだ」

「へぇ〜、知らなかった」

「『頑張れ』が、好感的な言葉になったのは、

ベルリンオリンピックで、NHKのアナウンサーが

〝前畑ガンバレ!〟って絶叫したのがきっかけだったんだ。

このラジオ中継に日本中が沸き立って、

『頑張れ』が、忍耐し、努力するという

良い意味での言葉として受け入れられるようになったという

歴史があるんだよ」

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「〝前畑ガンバレ!〟っていうのは、何となく聞いたことあるけど、

まさかそれで言葉の意味が変わったとは、知らなかったなあ。

じゃあ、〝頑張ります!〟って言うと、

本当は、〝私の我を張り通します!〟と言っているということなんだね」

「そういうことだなあ」

「じゃあ、おじいちゃん、

今までのような意味で『頑張ってね』って言いたい時には、

何て言ったらいいの?」

「そうだなあ、京都弁だったら、〝おきばりやす〟ってところだろうが、

標準語だと何と言うかなあ?」

 松太郎もそこまで考えてなかったのか、腕を組んで考え込んだ。

「ん〜?」

 松太郎は、小声でいくつかの言葉を口にするが、

適切な熟語が浮かばない様子であった。

困っている松太郎の顔をのぞき込み、大地が笑顔で言った。

「おじいちゃん、ガンバレ!」

(続く)

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長