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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第59回・『お玉串袋』

「さあ、じゃあ、寝るとするか」

松太郎が眠た気な目で言った。

「そうね、先に休んで」

京子が言った。

「明日はみろく大祭だから、七時半には出ようかね」

「えっ、大祭って十時からじゃないの?」

京子が訊(き)いた。

「早めに行動する方がいいからなあ。それに、遅くなると近くの駐車場が満車になるから、早く行った方がいいんだよ」

松太郎は京子の方を見て言った。

「そうだね。わかったわ」

京子が納得したように頷(うなず)いて、おやすみなさい、と言った。

「おやすみなさい」

大地も松太郎に声をかけた。

「はい、おやすみ」

そう言って松太郎はリビングを出た。

「大地もくたびれただろう、もう寝るかい?」

ともが訊いた。

「そうだね。いつもよりだいぶ早いけど、たまには健康的でいいかもね」

「布団は敷いてあるからね」

「おばあちゃん、ありがとう。いつもベッドだから、綾部に来て、たまに畳の部屋の布団で寝るのはいいんだよね。じゃあ、お母さん、お先に!」

「はい、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

大地は二人にあいさつし、居間に向かった。



翌朝、穏やかな光が部屋に差し込み、窓外から小鳥のさえずりが聞こえてきた。大地はいつもより少し早く目が覚めた。

洗面を済ませ、布団をたたんでリビングに向かうと、台所では ともと京子が朝食の支度をしていた。

松太郎は、リビングに座り、何やら筆を走らせていた。

「おじいちゃん、おはようございます」

「おはよう、よく眠れたかい?」

「うん、ぐっすり眠れたよ。今日は爽やかな朝だね」

「ああ、気持ちのいい朝だなあ」

大地は、台所の二人にも朝のあいさつをした後、松太郎の手元に目をやった。

「玉串袋に名前を書いているの?」

「そうだよ。今日の大祭の玉串やそのほかにお供えする玉串を準備しているんだ。さて、これで最後だな」

松太郎の前に並んだ玉串の袋を見て、少し驚いたように大地が言葉を続けた。

「おじいちゃん、そんなにたくさんあるの?」

「たくさん? そうか、大地にはそう思えるんだなあ」

「大祭のだけかと思っていたんで……」

「みろく大祭はもちろんだけど、ほかにもいろいろ祭典があるんで、できるだけさせていただくんだよ」

「そうなんだね。で…、どんな祭典があるの?」

「玉串受付に行った時、すぐにわかるように、右肩に祭典の名前を書いたから、これを見てもらったらわかるよ」

玉串袋.jpg

松太郎は、見やすいように玉串袋をキチンと並べた。大地はそれに目をやり、袋の右肩の文字を読んだ。

みろく大祭
老松殿
みろく殿大神様
祖霊大祭
万霊大祭
奥都城祭典

「六つもあるんだね」

と言いながら大地は少し困惑した表情になった。

「北海道や九州のように、遠いところから旅費を使って参拝に来られる信者さんのことを思ったら、地元に住んでいる者としては、当たり前のことだよ。あと、緑寿館にお参りできる時は、そのお玉串も用意するんだけどね」

松太郎が、かみしめるように言った。

「あの~、おじいちゃん。僕も同じだけしないといけないの?」

「大地も働いているんだから、大地自身の名前でお供えしたらいいけど、あまり無理はしないで、できる範囲の〝まごころ〟をさせていただいたらいいと思うよ。それに、お母さんもお供えするだろうしなあ」

「あっ、そうか、じゃあお母さんと連名で書いてもいいんだね」

大地の言葉に、松太郎は頭(かぶり)を振った。

「いや、連名は避けた方がいいんだよ」

「えっ、どうして?」

大地が不思議そうに訊いた。

「確か聖師さまが『玉鏡』の中で書いておられたと思うけど、連名ですることは神さまに対して、ご無礼にあたることなんだよ」

「どういうこと?」

祭員.jpg

「たとえば、何人かで千円ずつ出し合って玉串を包むとした場合、その時の思い、想念が良くないんだよ。何人かで相談すると、イヤでも出さなきゃならない、という不純な気持ちが混じってしまうから、神さまは決してお受け取りにならないんだそうだ。問題は、玉串の額ではなくて、その人の〝まごころ〟が大切なんだよ」

「なるほど、そういうことか」

大地は、一応納得しながらも、言葉を続けた。

「じゃあ、雨宮家の家族一同で玉串をお供えする場合はどうするの?」

「その時は、家族全員の連名にするんじゃなくて、世帯の代表者の名前でお供えすればいいんだよ」

「そうか、だからこのお玉串には、おじいちゃんの名前を書いているんだね」

「そう、このお玉串は、梅木家の代表者として書かしてもらっているんだよ」

「そういうことか」

大地が頷いた。


「だから、うちはお父さんの名前でお供えするからね。大地、そこにある玉串袋に書いてくれる?」

台所から出てきた京子が大地に向かって言った。

「えっ、僕が書くの?」

「そうよ、お父さんの代わりにね。今、暇でしょ」

「まあ、それはそうだけど…」

大地は、分かったよ、と言いながら、松太郎から筆ペンを借りて、松太郎が書いた玉串袋を参考に、父・雨宮剛の名前を玉串袋に書いた。

「大地、後で私も書くから、袋を置いといてね」

京子が言った。

「えっ、お父さんの名前だけじゃだめなの?」

「それはそれ。私も、私の名前で別にお供えさせていただきたいのよ」

「へえ~、そういうもんなの?」

「それが私の〝まごころ〟というものよ」

「そうですか」

大地は首をひねったが、何となく京子の気持ちがわかった。

「じゃあ僕も、大祭だけ、僕の名前でしようかなあ?」

「しようかな、じゃないの! させていただく気持ちが大切なのよ。まあ、でも感心、感心」

京子がすかさず、大地の言葉尻をつかまえつつも、笑いながら言った。

「わかったよ」

「大地、その気持ちが尊いんだよ」

松太郎が諭すように言った。


「あっ、袋が足りないや…。そうだ、玉串の受付に行ったら置いてあるよね」

そう大地が言うと、松太郎は大きく頭(かぶり)を振った。

「その気持ちは感心しないなあ、大地」

「えっ」

大地は驚いたように言った。

「受付に行けば玉串袋があるから、それをもらえばいいんだ、という気持ちはいかんのだよ。あの袋はあくまでも、玉串を忘れて来たり、あとで不足に気づいた人のためのものということで置いてあるんだ」

「そうなんだ」

少し間を置いて、松太郎が話を続けた。

「たとえば、お世話になった方に御礼を包んで持って行くとしよう。その場合、その人の家に行ってから、ご祝儀袋をくださいって言えるかい?」

「ん……」

「相手先で、ちょっと待ってください、って言って、袋に名前を書くことができるかい?」

「いやぁ~、それはさすがにできないでしょ」

「そうだろう。ましてや神さまにお供えさせていただくお玉串だ。事前にちゃんと準備して、大切に持参することが大事なんだよ。それが信徒の心得というものだ。神さまは目に見えないからって、いいかげんなことをするといかんぞ。ちゃんと見ておられるからな、大地」

「なるほど、気をつけないといけないね」

「わかればよろしい」

松太郎は大きく頷いた。

「それから大地、玉串袋は隣の部屋に買い置きがまだあるからな」

「おじいちゃん、それを先に言ってよ」

大地は苦笑いした。

(続く)

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長