十曜の紋WEB用2.psd宗教法人大本headnametype.png

I トップページ I グローバル I お問合せ I
印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |


HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第60回・『玉串とは』

ともと京子が朝食の支度を調えている間、大地は松太郎と一緒に朝拝を行い、終わって四人で手早く朝食を済ませた。

その後、予定していた時間に車に乗り込み、大地の運転で梅松苑に向かった。長生殿の南にある寺町駐車場には、まだ駐車スペースがあり、入口に近いところに車を止め、歩いて苑内に向かった。

「おじいちゃん、まだだいぶ時間があるね。ちょっと早かったんじゃない」

「そうだなあ、でも、ゆったりした気持ちでお参りする方がいいんでなあ」

松太郎が大地に言った。

「おじいちゃんは、何でも早め早めにする方だからね」

京子が大地に向かって言った。

「その娘なのに、どうしてお母さんは違うのかなあ?」

大地が京子の顔をのぞき込むようにして言った。

「あら、どういう意味?」

京子が笑いながら答えた。



苑内に入ると、松太郎夫妻は、地元や地方の知人と何人も出会い、その都度挨拶(あいさつ)したり、近況を語り合ったりした。京子と大地も会う人ごとに紹介され、思った以上に時間が経(た)った。

「おじいちゃんたち、知り合いが多いね」

 松太郎夫妻が地方の信徒と懐かしく話しているそばで、大地が京子に耳打ちした。

「そうね。まあ、大本の中で長く生きているからね」

 京子が笑顔で答えた。


 ようやく四人は、長生殿の地下入口から入り、亀の間の玉串受付に向かった。

「ここで玉串を渡すんだね」

「そうだよ。それぞれに三方(さんぼう)があるだろう」

「ホントだ、おじいちゃんが書いてた通りだね」

 大地も自分で用意した大祭の玉串を係の人に手渡し、大祭のしおりとお下がりをいただいた。

 その後、四人は長生殿内に入り、比較的前の方に座ることができた。

「お母さん、今日は四年前の節分大祭より前の方に座れたよ」

 大地が京子に言った。

「早く出てきたかいがあったわね。祭典が始まるまでには、まだ少し時間があるけどね」


 京子の言葉を聞きながら、大地が隣の松太郎の方を向き、思い出したように話し掛けた。

「さっき、お玉串を出した後に思ったんだ。すごく基本的なことだろうけど…」

「ほう」

「そもそも〝玉串〟ってどういう意味なの?」

 大地の質問に松太郎は、頷(うなず)きながら話し始めた。

「そうか、玉串袋のことは話したけど、玉串のことは話してなかったなあ」

 そう言いながら、松太郎は少し体を大地の方へ向け、言葉を続けた。

「大地が玉串袋に名前を書くときに、お玉串は〝まごころ〟でさせていただくことが大切だ、と言っただろ。その〝まごころ〟を形に表したのがお玉串なんだよ。昔、先輩から、〝玉〟つまり自分の〝魂〟を串につけてお供えするから玉串というんだ、って聞いたことはあったけどなあ」

「なるほどね。でも確か、祭典の中で、松をお供えするのも同じ玉串というよね」

 大地はさらに尋ねた。


「そうだなあ。大本では、玉串というと雌(め)松の小枝にシデをつけたものだなあ。今日の大祭でも、教主さま、斎主をはじめ、各代表者がお供えして、最後に参拝者代表にあわせて、参拝者全員がお参りするあの玉串だ」

「そうだよね」


「実は玉串というと、神社などでは、榊(さかき)の小枝にシデをつけたものが一般的なんだ」

「確か、そうだね」

「そもそも〝たまぐし〟というのは、〝榊〟の別の呼び方でもあって、榊自体を玉串とも言ったようなんだ。古い文献には、〝太玉串(ふとたまぐし)〟とか〝八十玉串(やそたまぐし)〟とか書かれていて、神さまにお供えする榊の枝に、木綿(ゆう)とかシデをつけたものということなんだ。木の綿(わた)と書いて〝もめん〟と読むけど、あれで〝ゆう〟と読むんだよ。〝木綿(ゆう)〟と言ったら、楮(こうぞ)という木の皮をはいで、その繊維を蒸して水に浸して裂いて糸状にしたもので、神社などで神事に使うんだよ」

「じゃあ、同じ漢字でも、〝もめん〟と〝ゆう〟では違うんだね」

「もめんと言ったら、綿、コットンのことだなあ」

「なるほど、おもしろいね」

「シデというのは、紙を垂らすと書いて、紙垂(しで)と言ったり、単に垂らすという一字(垂)でシデとも読むんだ。それから、垂らす手(垂手)や、ほかに、四つの手(四手)とも書くなあ。ほら、紙のシデは四つの長方形が斜めにつながっているように見えるだろう」

「ああ、あのしめ縄なんかに付いているヒラヒラした紙だね」

「そう、あれもシデだね」

「木綿とシデを合わせて木綿四手(ゆうしで)と言うこともあるなあ」

「でも、大本では雌松にシデをつけたものが玉串なんだね。どうして?」

大地が尋ねた。

玉串奉奠アップ.jpg

「聖師さまのお示しで、この大地ができたときに、最初に発生した植物が雌松だからと聞いているんだ」

「へえ~、そうだったのか!」

「意義的には、シデが衣食住の衣、衣服。松の小枝が衣食住の住、住居を作る材木の〝型〟と教えられているんだよ」

「なるほど。じゃあ食は…?」

「祭典の中で、献饌(けんせん)というのがあって、神饌物といってたくさんの食物をお供えするんだけど、それが文字通り、食にあたるんだよ。だから、お供えする神饌物と玉串で、〝衣食住〟をあらわすということになるんだよ」

「あっ、そういうことか。なるほどね」

「衣食住はすべて神さまからいただいたものだから、神饌物と玉串を通してそのご恩に感謝する気持ちを神さまにお供えさせていただくんだ」

大地が頷きながら、ご神前の方に目をやり、首をかしげた。

「あれ? でも、おじいちゃん、もう両脇にお供え物があるけど、あれは?」

「祭典中の本献饌ではお供えしきれない神饌物をあらかじめ八足の両袖にお供えしてあるんだよ。副献饌と呼んでいるけど、副献饌だけでもたくさんあるなあ。全国の信者さんから、大祭にお供えしてくださいと届いたものも多いんじゃないかなあ」

「じゃあ、その本献饌では、どのくらいお供えしてるの?」

「献饌のあとに数えてみたらいいけど、確か三方が三十台近くあるんじゃなかったかなあ」

「そんなにあるんだね」

ふと気づくと殿内は参拝者で徐々に埋まってきていた。大地は辺りを見回してから、また松太郎に訊(き)いた。


「おじいちゃん、話は戻るけど、玉串のこと…、受付で出した玉串は、お金だよね。あれは、〝まごころ〟をお金で表すということなんだね」

「まあそういうことだなあ。ただ…」

「ただ…、何?」

「大本では袋に〝御玉串〟と書いてあるけど、一般的には〝料〟を付けて、〝御玉串料〟と書く場合が多いんだよ。それは、榊の玉串の代わりとして納める金銭のことだったり、祈祷(きとう)やお祓(はら)いの謝礼として納める場合も表書きに〝御玉串料〟と書くようだなあ。同じような意味の言葉で〝幣帛(へいはく)料〟という場合もあるんだ」

「でも大本では〝料〟は付けないのね。その方がいいわよね」

京子が横から口を挟んだ。それを遮(さえぎ)るように、大地が言った。

「どっちにしても、神さまにお供えをする場合は、〝心を込めて〟、ってことだね、おじいちゃん」

「その通り」

「でもまあ、意味を知っていることは大切なことだし、意味がわかると心も込もるんじゃないの」

京子が言った。


〝ドーン!〟

「あ~、ビックリした」

大地が報鼓の音に驚き、後方を振り返った。

「祭典まであと十分だな。太鼓は、五回・六回・七回と打つんだ」

「五回・六回・七回?」

「それぞれ後の二回は続けて打つんだ。五・六・七で〝みろく〟だからね」

「そういうことかあ」

殿内のアナウンスが流れ、玉串捧奠(ほうてん)者の名前が呼び出された。その中に松太郎の名前があった。

「あれ、おじいちゃんじゃないの?」

「実は今日、参拝者代表で玉串捧奠をさせていただくんだ。じゃあ、前に行くとするか」

「なんだ、そうだったのか。おじいちゃん、〝まごころ〟で玉串捧奠してください」

大地が確認するような口調で言った。

「そうだな」

松太郎はニコニコしながら、席を立って最前列の毛氈(もうせん)席に移動した。

しばらくして、みろく大祭が始まり、祭典は厳かに進められた。玉串捧奠では、松太郎の後姿を見ながら、大地も心を込めて礼拝した。

玉串奉奠.jpg

(続く)

next.pngnext.png

nextnext.pngnextnext.png

この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長