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HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第61回・『直会』

みろく大祭の祭典が終わり、祭典後の行事も済んで直会(なおらい)に移った。玉串捧奠(ほうてん)者席に座っていた松太郎が、大地の横に戻ってきた。

「おじいちゃん、ご苦労さまでした」

大地が松太郎に声を掛けた。

「ああ、ありがとう。気持ちよくお参りさせていただけたよ」

「良かったわね」

京子が言った。

「大地、祭典はどうだった?」

「とてもすがすがしかったよ。それに毅然(きぜん)とされた教主さまのお姿がきれいで、印象的だったなあ。ごあいさつも、こんなに近くで聞かせていただいて、感動しちゃったよ」

「そうかい、それは良かった」


直会とお茶が、縁側の直会係から手渡しで配られてきて、大地たちも受け取った。

「そういえばおじいちゃん、大祭にはたくさんの係の人がいるけど、みんな本部の人なの?」

「いや、そうじゃないよ。信者さんたちが大勢ご奉仕しているんだよ。主に近隣の近畿圏の人が多いけど、全国から大勢の信者さんがご奉仕に来られるんだ。祭典や直会の係、玉串受付、場内整理や下足預かり、食堂やお茶席などいろいろなところで、大祭の準備や執行に関わるお手伝いをされているんだ。終わったらそれぞれの片付けをしなきゃならないし、忙しいんだよ。でも、こうした大勢の方のご奉仕があって、大祭が執行できるんだよ。ありがたいことだなあ」

松太郎がしみじみと言った。

「私たちも少し前までは、お手伝いに入っていたのよ。でもね、ちょっと年がいってきたんで、最近はこうしてゆっくり参拝させていただいているんだよ」 

ともが言った。

「そうだったんだね。ご苦労さまでした」


大地が少し頭を下げながら言った。その時、直会のカバーを見た大地が言った。

「おじいちゃん、これで〝なおらい〟って読むの?」

「そうだよ」

「知らないと、絶対〝ちょっかい〟って読んじゃうね」

大地が笑いながら言った。

「なるほどそうかなあ?」

「あ~、そうかもね。私たちは子供のころから聞いていたから何とも思わなかったけど。初めて見た人は読めないかもね」

京子が感心したような表情で言った。

「どうして直会って言うの?」

大地が京子に訊(き)いた。

「それは、その…。おじいちゃんが教えてくれるからね」

京子が松太郎の方を向いて答えを促した。大地も松太郎の方を見た。


「直会というのは、〝直(なお)り会(あ)う〟という意味で、宴(うたげ)の原初の姿だって言われているんだよ」

「直り会う?」

「昔の人たちは、お米やお酒に始まる食べ物というのは、すべて天地のみ恵み、神さまからいただいたものという自覚があって、食べ物を神さまにお供えして神事を行い、感謝の気持ちを捧(ささ)げたんだ。祭りというのは本来、神さまと人々とが真に釣り合うと書いて、真釣(まつ)り(祭)という意味があるんだよ」

「つまり、今日のようにたくさんの神饌物(しんせんもの)をお供えした大祭も〝真釣り〟なんだね」

「そう。太古の人たちも神事の時は、みんなが平常とは違って、特別に気持ちを整え、緊張感を持ってお参りしたんだね。そうした平常と違う特別なことを〝ハレ〟(晴れ、霽れ)と言うんだ」

「晴れ着のハレね」

京子が言葉をはさんだ。

直会を頂く.jpg

「そうだよ。で、〝ハレ〟の反対が〝ケ〟(褻)で、つまり普段通りに戻るということだ。昔から日本人は、日常と非日常を使い分けていたので、そんな言葉が生まれたんだろうなあ。華やかで晴れ晴れとして、穢(けが)れを晴らした〝ハレ〟の神事から、〝ケ〟の平常に戻るということ。つまりみんなが平常に〝直り会って〟、お下がりを調理して宴を催したんだね。だから、祭典の後の宴を直会と呼ぶようになったんだよ。今は時間や参拝者の数の関係で、お下がりを調理したりすることはできないので、こうした神事の後のお弁当や食事を直会と呼んでいるんだよ。でも本来は、この直会までがお祭りの一環だから、直会はハレの延長でもあるかもしれないね」

「なるほど、そんな深い意味があったのかあ」

大地が頷(うなず)きながら言った。

「どう、わかったでしょ?」

「え~、お母さんも初めて知ったんじゃないの」

大地が京子に言った。

「はい、勉強になりました」

しばらくして教主さま、斎主らが直会席に着かれ、司会の発声で参拝者一同、二代教主さまの三首のお歌を唱和し、直会が始まった。

大地は、松太郎から聞いた直会の話を思いながら、おいしく直会をいただいた。


〝ごちそうさま〟の唱和の後、四人は長生殿の大廊下に出た。

「おじちゃんあれだね。教主さまがごあいさつの最後に紹介されていた本を販売しているんだよね」

「『新抄 大本神諭』だな。じゃあ、早速買っておこうかな」

「私が買ってきますね」

ともが言うと、京子が遮(さえぎ)った。


「あんなに並んでるし、私が行くわよ。で、何冊?」

京子が松太郎に訊いた。

「そうだなあ、とりあえず六冊買っておこうかな」

販売のコーナーには人だかりができていた。しばらくして、京子が『新抄 大本神諭』を買って戻ってきた。

「安いわね、一冊五百円しないのよ」

と言いながら、京子はともに本を手渡した。松太郎は、財布から千円札三枚を出して京子に渡した。

「あら、いいのに」

と京子が言うと、松太郎は手のひらを京子に向けて言葉を遮(さえぎ)った。そして、ともが持った『新抄 大本神諭』の中から二冊をとり、そのうちの一冊を京子に返し、一冊を大地に渡した。

「京子と大地のお土産(みやげ)だ」

「えっ、ホント。ありがとうございます」

大地が松太郎にお礼を言った。

「どういたしまして」

と言いながら松太郎はもう一冊を手にし、ページをめくった。

「ほう、いいね。カラー写真もあって、今の教典の『おほもとしんゆ』とはずいぶんと雰囲気が違うなあ。でもこれなら、心ある人には気安く渡せるなあ」

と言いながら、松太郎はさらにページをめくった。

「大本用語の解説や、いろんな案内も載っているなあ。これは人型のおすすめに回る時に使えそうだ。いずれまた、まとめて注文しないといけないなあ」

「いいですねぇ」

横からのぞき込んでいた ともも、あいづちを打った。


長生殿を出た四人は、緑寿館前を降り、金竜海畔での野点席に入席した。席に入るまで十五分ほど並んだろうか、野点席は大人気であった。

しばらくして四人の前に、お菓子とお茶が運ばれてきた。五月晴れのもといただくお菓子と薄茶の味は格別で、床几(しょうぎ)に座った四人は、自然と笑顔になっていた。


「梅木さん」

横から一人の男性が声を掛けてきた。

「あっ、本宮(もとみや)さん、久しぶりだね」

「ご無沙汰しております。お元気でしたか」

「はい、おかげさまで」

「奥さんもお元気そうで」

「はい、ありがとうございます。お久しぶりですね。本宮さん」

ともが笑顔で応え、横にいる京子と大地を紹介した。

「本宮さん、娘の京子です。それと孫の大地です」

「確か、昔、実家でお会いしたことがありましたね」

お辞儀をしながら、京子が思い出すようにして言った。

「そうです。あのころは、ご結婚前でしたよね。じゃあ、こちらはご子息ですか」

本宮が大地の方を見ながら言った。

「そうです、うちの愚息でございます」

「雨宮大地です」

「そうですか。大阪の本宮敏夫です。よろしくね」

「よろしくお願いします」

大地も頭を下げた。

「本宮さんは私の友人で、いろいろお世話になったんだ」

松太郎が本宮を紹介した。

「いえ、こちらこそたいへんお世話になってたんですよ」

「祖霊大祭はお参りするの?」

松太郎が訊いた。

「はい。今日は奥都城まで参拝して、ゆっくり帰ろうかと思っているんです」

「そう。じゃあ、奥都城が終わったら、わが家に寄っていかない?」

「でも、お孫さんたちもいらっしゃっているのに、お邪魔でしょうから」

「いえ、私たちはまったく構いませんから、どうぞいらしてください」

「どうぞ、どうぞ」

京子とともも来訪をすすめた。

(続く)

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この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長