十曜の紋WEB用2.psd宗教法人大本headnametype.png

I トップページ I グローバル I お問合せ I
印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |


HOME > 教え > 暁の大地・もくじ > 第63回・『お墓参り』

「私、お墓参りは久しぶりだわ」

京子がそう言うと、大地が小声で反応した。

「僕は、初めてかなぁ…?」

「どうだったかしらね~?」

大地の問いに、京子も首をひねった。

「大地がまだ小さいときに、いっしょにお参りしたことがあったと思うよ」

ともが答えた。

「そうなの。まあ、でも今日が初めてのようなもんだね」

大地が言った。

「お松は残っているかなあ?」

そう言いながら松太郎が、つくばい左手奥の事務所の入り口に目をやった。バケツの中には、松の小枝が入っているのが見えた。

「まだ少し残っているようね。分けていただきましょう」

ともが言った。大地たちは、ともが松の小枝を手に戻ってくるのを待ち、いっしょに彩霞苑の大本信徒共同墓地に向かった。


「共同墓地にはいくつかの区画があって、この右側の奥のD地区に、うちのお墓があるんだよ」

松太郎が大地に説明した。

「この垣根の向こう?」

「そうだよ」

「広そうだね」

「その前に大地、あそこの建物に手桶(おけ)と柄杓(ひしゃく)があるから、水をくんで来てくれないか」

松太郎は左手を指し、大地に頼んだ。

「わかった」

そう言って大地は急いで水をくんで戻ってきた。

「早かったわね、じゃあ、行きましょうか」

京子が言った。

松太郎の案内で、D地区に入ってすぐ、大地が驚いたように言った。

「うわ~、やっぱり広いね」

「どこに梅木家のお墓があるのか、いつも迷うのよね。ん~、やっぱりわからない~」

京子が言った。

「お母さん、ここに案内板があるけど…」

「こんなにたくさんあるんじゃ、この中から探すのもたいへんよねぇ」

「そうだよね。おじいちゃんとおばあちゃんは、すぐにわかるの?」

大地が尋ねた。

「もちろんわかるよ」

ともが答えた。

「ここで迷っていたら、ご先祖さまに申し訳ないからなあ」

「そりゃあ、そうだね。それにしても、ここはお墓なのに、とてもさわやかな感じがするのが不思議だなあ」

大地が笑顔で言った。

「そうなのよね。〝明るいお墓〟って感じね」

京子も同感した。

「こっちだよ」

京子と大地は、松太郎とともについて立ち並ぶ墓石の間を進んだ。

「ここだ」

松太郎が梅木家の墓の前で立ち止まった。

〝梅木家代々祖等之奥城〟と、大地が声に出して読んだ。

「さっきおじいちゃんが教えてくれたようにほってあるね」

大地が確かめるように言った。

「大地、松立ての水を替えてくれるかい」

「はい」

京子が一対となっている御影石の松立てからステンレス製の筒を抜き取り、溜(た)まっていた水を足元に捨て、元に戻した。そこに大地が、手桶の水を柄杓ですくって、ゆっくりと注いだ。それから、ともが持っていた松の小枝を立てた。

「今日はお参りできると思ってなかったから、お供えがなくてすみません」

ともが墓石に向かって頭を下げながらそう言った。

「時間もないので、早速お参りしよう」

松太郎に促されて、三人は松太郎の左右に並んだ。

「じゃあ、いっしょに」

松太郎の先達で、四人はいっしょに天津祝詞(あまつのりと)で礼拝した。

63.jpg

「さて、そろそろ祭典が始まるだろうから、戻ろうかね」

「そうね、急がないとね」

京子が言った。

「おじいちゃん、僕、これを返してくるね」

大地はそう言うと、小走りで先に進んだ。

大地は手桶と柄杓を元の場所に戻すと、松太郎たち三人を待って合流し、奥都城(おくつき)へと向かった。


春の夕暮れの日差しが、松の木の間から穏やかに差し込んでいる。大地たちと同じように、祭典前にお墓に参った参拝者が何組かあり、同じ方向へ向かって歩いていた。

大地は松太郎と並んで歩きながら、松太郎に訊(き)いた。

「おじいちゃん、ご先祖さまのみたまは、みろく殿の祖霊社にお祀(まつ)りされているって聞いたけど、お墓にもお祀りされていることになるの?」

「お墓で霊魂の抜けた亡骸(なきがら)を拝んでも意味がないと思う人があるかもしれないけど、そうじゃないんだよ。現代のお墓というのは、そのほとんどが亡くなった人のお骨(こつ)を納めるところだよね」

「そうだね」

「大本のお墓では、お骨を骨壺(こつつぼ)から出して、直接土にかえすんだけど、お骨は亡くなった人の体の一部だよね。生前は肉体を持って、この世で家族といっしょに暮らしていたんだから、残された人にとっては、その肉体に対してどうしても親しみや未練というものがあるんだよ。だから、その肉体の一部であったお骨をお墓に納め、そこに石碑を建てて入魂することによって、そこが魂の依(よ)り代(しろ)になるんだ。だからお墓は亡くなった人との情的なつながり、絆(きずな)の場所と言えるんじゃないかなあ」

「なるほど」

「たとえば、今の梅木家のお墓には、わしの両親のお骨も納めてあるんだ。でも大地は生前の二人とは会ってないから、情的なつながりは薄いと思うんだ」

「それはそうだね」

「でも、おじいちゃんにとっては、大切な親だったわけで、情的に深いつながりがあるだろう。だから、お墓に来れば、両親のことを思い出すし、懐かしくなるんだ。で、お参りすることによって、両親のみたまもお墓に来てくれると思うんだよ」

「そうか! 亡くなった人の魂と出会える場所なんだね。そう思うと、とても神聖な感じがしてくるね」

大地は頷(うなず)きながら、さらに訊いた。


「それから、おじいちゃん、さっきお参りしたときには、おじいちゃんちの祖霊さまのお参りのときにあげる〝祖霊拝詞(それいはいし)〟じゃなくて、〝天津祝詞〟だったけど、どうして?」

「いい質問だ、大地。時々お墓の前で祖霊拝詞をあげている人があるんだけど、あれは適切じゃないんだ」

「そうなの?」

「普通、一つのお墓に納めているお骨は、その家の直系だけで、親族縁者のお骨が入っているわけじゃないんだよ。ということは、祖霊拝詞の文言には合わないわけだね。だから、お墓では、天津祝詞や神言のように祓(はら)いの祝詞で、ご先祖の魂に神さまの言霊(ことたま)をとなえて、ご先祖さまのみたまが霊界で向上されるよう祈らせてもらうんだよ」

「なるほど、そういうことなんだね。あっ、それからもう一つ」

「何だい?」

「大本のお墓は、一般のものと比べてとてもシンプルで、サイズもほとんど同じみたいだけど、何か理由があるの?」

「大本のお墓の石碑や台石の寸法は、聖師さまが基本的な大きさを示されていて、それをもとにした寸法で作ってあるからなんだよ」

「だから、墓地全体が整然とした感じがしたんだなぁ」

「それからほかにも大切なことがあって、お墓を重視するあまり、神社のように石の玉垣や燈籠(とうろう)を造ることはよくないんだよ」

「世間では、びっくりするような豪華なお墓もあるよね」

「あるなあ。それから、墓石の御影石をツルツルに磨くことや、墓地の表面の土をコンクリートで塗り固めるのもよくないそうだ」

「いろいろあるんだね」

「それから、共同墓地の先にあった大本信徒共同墳は、平成四年に完成して、大勢のお骨を共同で納めることができるようになったんだ。春と秋には、そこの前で、共同墳と天王平にあるすべての墓地の合同祭典が行われているんだ。お墓のことだから、普段参拝されないような遺族や親族も参拝されるんで、とてもありがたいことなんだよ」

「お墓ってやっぱり、情的なつながりが強いんだね。おじいちゃん、いろいろ勉強になりました」
大地はそう言って軽く頭を下げた。松太郎は笑顔で大地のしぐさを見た。


奥都城の前には、すでに大勢の参拝者が祭典の執行を待っていた。

「大地、できるだけ前の方へ行こう」

松太郎が促した。

「せっかくだから、前へ行きましょう」

京子が大地の背中を押した。

「わかってるよ」

四人が祭場の前方まで進んだとき、司会の発声が響いた。

〝ただ今より、奥都城祭典を執行いたします。教主さま、祭員入場〟

(続く)

next.pngnext.png

nextnext.pngnextnext.png

この連載は、大本の教えをドラマ風に書き下ろしたもので、
登場人物は実在の人物ではありません。













































































▼次回更新予定

脚本担当:成尾 陽のプロフィールはこちら

成尾 陽(大本メディア愛善宣教課長)

なるお あきら:昭和34年熊本県生まれ成尾総務2.jpg
昭和55年、大本梅松塾を経て大本本部に奉職
特派宣伝使、大本青年部長などを歴任
ITVA-日本(国際企業映像協会)関西支部長
亀岡市立つつじヶ丘小学校PTA会長など(平成16年度)もつとめる。
現在、大本愛善宣教部メディア愛善宣教課長